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クローズアップ

世界に大きな衝撃を与えた国際コンペ最優秀案の意義と影響を考察するシンポジウム

2015.05.14


1995年に実施された、「横浜港大さん橋国際客船ターミナル国際コンペ」は、世界の建築界に
大きな衝撃を与えた。
この国際コンペには、世界41ヵ国から660作品の応募があり、日本で行われた国際コンペとし
て過去最高の規模となった。応募数や世界41ヵ国からの応募があったということ以上に、世界
中に大きな衝撃を与えたのは、その最優秀案のデザインであった。

最優秀案に選ばれたのは、Foreign Office Architects(以下、FOA)のイギリス在住の建築家、
アレハンドロ・ザエラ・ポロ氏とファッシド・ムサヴィ氏。FOAは、二人がコンペの実施され
た年と同じ1995年に設立したばかりの設計事務所で、ポロ氏が31歳、ムサヴィ氏が28歳とい
う若さで、当時全く無名の建築家だった。
ただし、ポロ氏とムサヴィ氏はハーバード大学GSD出身で、イギリスの名門AAスクールで当時
教鞭をとっていた建築界のエリートであった。

そして、最優秀案に選ばれた設計案は、従来の建物のように地面から一段ずつ水平に階層を重ね、
フロア・壁・天井といった概念で建物が分けられるのではなく、波のような曲線面を用いること
によって、フロア・壁・天井をすべて連続した同一部分として捉え、ひと続きとして繋げた設計
だったのだ。


各階を階段ではなく緩やかなスロープで繋ぎ、各フロア間の連続性を生む、これまで例のない
ようなこのデザインは、フルCGでデザインされたもので、コンピュータ利用なくしては成し得
ないデザインであった。しかも、現在のコンピュータのスペックではなく、20年前のコンピュ
ータのスペックで設計されたのだ。

このあまりにも斬新で、近未来的なデザインは、世界の建築界に大きな衝撃を与えたのだった。
これまで見たこともないようなそのデザインには、コンペのあとに数多くの称賛が寄せられた
一方で、「実際に実現するのは不可能ではないか」という声も挙がっていた。
実際に、このデザインを実現するため、ポロ氏・ムサヴィ氏と構造設計事務所、設備設計事務所
などで構成した設計チームが基本設計を何度も練り直し、実施設計が完成したのは、コンペから
5年後の2000年3月であった。その後着工し、同ターミナルは2002年の11月に完成した。

コンペ獲得から完成まで、日本の構造事務所が部分模型を作る以外の模型製作を禁じるなど、
ほとんどの思考をコンピュータの画面を前に設計した、この設計案の基本コンセプトは、
「Continuous Architecture」だ。
Continuous Architectureとは、連続する一枚の面(サーフェス)などによって構成される連続
的建築をいう。同ターミナルは、Continuous Architecture が大規模な建築として実現された
世界初の事例と言えるだろう。

世界の建築界に大きな衝撃を与えた「横浜港大さん橋国際客船ターミナル国際コンペ」から
20周年となる今年、東京大学建築学専攻 Advanced Design Studies (以下、T_ADS)などの
主催による記念シンポジウムが6月に開催されることとなった。
Continuous Architecture はその後の20 年間に世界でどのように展開したのか、これからの
連続的建築の可能性についてなどをテーマに、講演やパネルディスカッションを実施する。
出演者は、設計者のアレハンドロ・ザエラ・ポロ氏、同国際コンペの審査員の中心的メンバー
だった建築家の磯崎新氏のほか、隈研吾氏、妹島和世氏、渡辺邦夫氏、佐々木睦朗氏、
小渕祐介氏、エリック・オーウェン・モス氏、ジェシー・ライザー氏などの超豪華メンバーだ。
 
6月6日は、東京大学工学部の講義室を会場に、磯崎新氏の基調講演と、隈研吾氏やモス氏
などによる講演会を実施する。定員は100名。
6月7日は、横浜港大さん橋国際客船ターミナル 大さん橋ホールを会場に、ポロ氏、磯崎新氏、
隈研吾氏、妹島和世氏、ライザー氏などによるシンポジウムを開催する。定員は800名。
参加費は無料で、参加は当日先着順となっている(事前申し込みは受け付けてない)。
上記記念シンポジウムの詳しい情報は、T_ADSのWebサイトを参照してほしい。
この超豪華メンバーによる講演とディスカッションが、本当に楽しみだ。