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ユーザー事例紹介

厨房の排気フードシステムにおける湿度排出の
効率性評価にCFDを活用
<キャプティブエアー・システムズ>

2017.04.12

キャプティブエアーは、業務用厨房の換気設備分野で北米最大手を誇る企業だ。1976年の設
立以来、排気フード、ファン、グリースフィルター、消化システム、設備配管システムなどの
製品・サービスを提供し続けている。顧客は飲食店のナショナルチェーン、個人経営店、行政・
民間の機関や団体など幅広い。
キャプティブエアーでは、排気フードと給気口の気流や室温、湿度を評価する際に、
CFD(Computational Fluid Dynamics:数値流体力学)を活用している。研究開発チームで
は、厨房作業での効率アップと快適性向上を目指し、革新的なサービス開発に取り組んでいる。
排気フードシステムと給気口関連の開発に携わる技術者は、主な開発業務に加え、製造プラン
トでのサポートや厨房設備の構成、新しいフードシステムや給気口の開発、既存システムの改
良にも携わっているという。開発内容について話を聞かせていただいた。


湿気移動の解析にCFDを活用
厨房の排気フードシステムの開発では、調理中に排出される熱や水の処理方法を検討している。
グリルやオーブンから発せられる蒸気を抑えること、フード表面の結露を減らすこと、調理ス
ペースを清潔に保つことなど、複数の条件を考慮する。また、調理する側の快適性も考慮し、
新鮮な空気が保たれるよう厨房内の室温と湿度が制御できる設計にする必要がある。
キャプティブエアーがCFDに関心を持ったのは、気流のシミュレーションや空気移動の定性的
データ取得に利用できると知ってからだ。過去に開発した排気フードや給気口の設計で流体解
析用いたこともある。今回再度CFDを用いることで新しい設計の湿度排出効果を評価してみた
かったそうだ。計算が正確であることはもちろん、結果を明確でわかりやすいビジュアルに落
とし込める信頼性の高いソフトウェアを探していたところ、ソフトウェアクレイドルの
STREAM®がそれらの条件を満たしていたのだという。

          キャプティブエアー・システムズ 
          副社長 兼 技術部長 ビル・グリフィン 氏

          キャプティブエアー・システムズ
          副社長 兼 技術部長 ビル・グリフィン 氏


排気フードシステム内は、排出される空気、予熱された補給空気(MUA: Make-Up Air)、空
調風(AC:Air-Conditioned Air)の3種類の気流が流れる構造になっている。調理スペース内
の熱せられた空気と廃気、油の粒子が排気フードによって取り除かれ、室内の空気を清浄にす
ることができる。フード前に取り付けられたMUAプレナムを介して、わずかに予熱された外気
が厨房スペースに流れ込む仕組みだ。また、調理スタフの快適性を確保する目的で、MUA気
流の前方向に位置する形でACが供給される。これによってエアカーテンが生成され廃気を処
理できるほか、厨房外への拡散を防ぐことができる。
今回キャプティブエアーが流体解析を行った目的は、異なる状況下においての厨房スペースへ
の影響を検証し、排気フードシステムの仕様を最適化することである。MUAとACの流量の変
化、温度、相対湿度を検証するため、12ケースの解析を行った。給排気を効率的に行いつつ、
解析対象以外の空間への影響が最小限になる設計パターンを求めて解析を進めたという。

     排気フードシステムの一例

     排気フードシステムの一例



STREAMで排気フードシステムの構造理解を促進
MUAを介してわずかに予熱された外気を流れ込ませるフードシステムは、湿気も厨房内に取り
込んでしまうため、十分な排気が必要となる。そのため今回の解析では、MUAとACからの湿
気のうち、排気口から流出する割合をCFDで計算した。STREAMの結果により、排気フードシ
ステムでMUA内の湿気の大半を換気できることが確認できた。流速の可視化結果を詳細に見る
と、エアカーテンが形成されている様子がわかる(図1)。

 図1 左図:排気口から拡散する水分の割合の計算結果
         右図:厨房内における空気移動解析結果(ケース6の流速コンターを表示)

 図1 左図:排気口から拡散する水分の割合の計算結果
     右図:厨房内における空気移動解析結果(ケース6の流速コンターを表示)


この結果から、調理廃気がシステムによって捕集されていることが推測できた。また、湿度の
解析結果から、システムに流入・発生した湿気の90%以上が排出できていることがわかった。
CFDの結果により、厨房内のACには快適性の向上以外の付随効果があることも確認できた。
ACあり・なしの条件で解析を行った結果、使われていないMUAが厨房内に流れ込むのを阻止
する役割を果たしていることがわかった。コンター図からACありの方が温度と湿度が効果的
に制御されていることが確認できた(図2)。
加えて、STREAMの解析によって、ACの流量(FPM:Feet PerMinute)が小さい方が最適で
あることがわかったという。流量が大きくなると空気が厨房内に拡散するのを助長してしまう。
解析結果によりACの流量設定値を小さく抑えることで、排気フードシステムのエネルギー
利用の低減と騒音カットを実現できることがわかった。

     図2 ACあり(左図)・なし(右図)での相対湿度コンターの比較

     図2 ACあり(左図)・なし(右図)での相対湿度コンターの比較


キャプティブエアーでは、STREAMを用いることによって排気フードシステムの理解を深める
ことができたという。「給気口からの湿気の移動や、それが我々特製のMUA給気口の性能に及
ぼす影響についてのデータはこれまでありませんでした」とキャプティブエアーの技術チーム
は語る。STREAMによって得ることができた結果は、排気フードシステムの設計と検証、そし
て更なる改善に向けた知見の獲得に生かされているという。


今後の展望とHVACにおけるCFDの効果について
排気フードシステム内の流れ、温度、湿度といった気流の挙動を手早く調べる際には、2Dに
よるシミュレーションが用いられている。今後は厨房の3Dシミュレーションを行い、MUAの
分布を最適化したいと、技術チームは語る。目指すのは、内部の静圧を最小に抑え、一様な層
流にさせる給気口の設計だ。また、人体モデルの活用や、実際に調理するなどさまざまな実験
を行うことで、フードによる換気効果を評価したいそうだ。
STREAMの性能については、キャプティブエアーが必要とする条件をすべて満たしていたとい
う。計算も正確で、解析結果を効果的に可視化する強力なポストプロセッサによって定量的な
データを見やすいビジュアルで確認することができ、システムの理解を更に深めることができ
たそうだ。今回の試みでは、空調設定の最適化と排気システムによって、MUA内の湿気が効果
的に捕集されていることが確認でき、キャプティブエアーの技術チームは満足だという。技術
サポートの面については、「クレイドルの技術スタッフにはこのプロジェクトをとおして十分
にサポートしていただきました。質問があった際や、設計条件の変更が必要な場面では、要望
に合わせてすぐ対応していただけて、ありがたかったです。今回のプロジェクトについても十
分な成果を得ることができました」と語る。
キャプティブ・エアーは、HVACの分野におけるCFDの大きな将来性を感じている。「何らか
の気体の流れを取り扱う事業において、CFDがもたらす効果は大きいと思います。気体の流れ
を確認する、気流中の粒子の移動を把握するといった場面ではもちろん、システムの最適化や
製品の検証でも、CFDを用いることで定性的な理解とその後ろ盾となる定量的なデータが得ら
れるはずです」と語る。

「STREAM®」の詳しい情報は、こちらのWebサイトで。