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コラム

女性起業ベンチャー「UPQ」

2017.06.13

ArchiFuture's Eye               ARX建築研究所 松家 克

もの創りに魅せられた若き女性起業家の話。このコラム欄で前にも触れたUSBチャージ機能
付で折りたためる電動自転車などを世に出しているベンチャー企業UPQ社。どうもアップ・
キューと読むらしい。2015年の7月に中澤優子さんが、たった一人で誕生させてからおよそ
2年、ほやほやの企業だ。今やだれもが知るアップル社も最初はジョブズとウォズニアック
の2人+αで1974年に起業し、30数年後に世界のAppleとなっている。ホンダやソニーも少人
数でスタートし、世界企業に繋げている。時代を創るデザインや新発想の基に鋭い展開を見
据えモチベーションを保つベンチャー企業は、常に魅力を感じさせる力がある。

ところで、今の日本は、東芝、SONYなど家電製品、特にテレビ類の生産打ち切りや世界に
占めるシェア崩壊は著しい。一時期、今や知る人もわずかなSONY発のウォークマンが機能と
デザインで今のiPhoneのように世界を席巻したこともあった。一方、一時期、廉価で秋葉原
で名の知れていたFUNAIのテレビが、アメリカで頑張り続け、ブランド力を上げ、この5月に
日本に凱旋し、日本に向けた展開を開始した。アップル社の最大のライバルともいわれるソ
ニーも10年ぶりに有機EL4Kの販売を開始し、少し、活発な動きが見え始めている。併せ、
「四季島」などの電車、新幹線、自動車やデジタルカメラ、オートバイなどでは、世界での
デザイン的優位さを含めて競争力を維持しているIDプロダクトも多くみられる。特に自動車
は、旭化成が科学素材の開発のために独自のEV車を京大発のベンチャー企業と試作したユ
ニークなデザインの車が、最近、発表されている。次世代の車を探る目的だ。東レの炭素繊
維など車の開発分野での日本の底辺は厚い。フェラーリやアウディの車などのデザインでは、
日本人デザイナーが大変活躍した。日本発の自動車のデザインは世界で競争力を保っている。

一方、次世代に向けた生活に密着したプロダクトデザインの活躍の姿が、今一つ見えてこな
かった。この中で、日本発のベンチャーによるプロダクトデザインや家庭情報電化製品が頑
張っている。小さく輝き始めたUPQだ。小さな光かもしれないが、魅力的な光彩を放ってい
る。立ち上げの初期には、表記の誤りや電波法の認証のクリアミス、スマートフォンのバッ
テリーが過熱し焼損した事故などのいろいろな困難などを乗り越え、現在、邁進中である。
ディスプレイ、スマートフォン、カメラ、イヤホン、スピーカー、キーボード、LEDライト、
モバイルバッテリー内蔵スーツケース、LED電球、椅子までラインアップされ、この先も新
しい発想に基づいた製品が、どんどんと登場するに違いない。夫々が、今の生活や若者の業
務に密着したプロダクト製品である。発想や視点がユニークであり、「オッ」と言わせるも
のばかりである。CASIOでの経験をベースに製造をCerevoとのコラボによる短期開発。
Appleのビジネスモデルと似ているかも。独特のデザインと色合いは、マニアック性を感じ
る。何はともあれ「もの」を創ることへの強い興味と飽くなき探求心と女性であることの強
さと弱さが、魅力を生み出しているのかもしれない。友人に高橋章子がいるが、彼女も
「ビックリハウス」の編集長などで、サブカルチャーの女性旗手として一世を風靡した。中
澤さんには、お会いしたことはないが、何か似ているところを感じる。少し早口で、お酒が
好きなのかも……間違っていたらご免なさい。後輩のインテンショナリーズ代表の鄭 秀和氏
は、2002年には東芝のatehaca家電シリーズのプロダクトデザインと総合家電メーカーのリ
アル・フリート設立者でamadanaのデザインを手がけている。最近こそ、あまり家電デザイ
ンの話は伝わってこないが、UPQの今後と重なり、久しぶりに思い出した。
もの創りには、これからまだまだ山あり川あり、海もある。ものづくりを目指す一員として、
頑張れのエールを送りたい。次は、CASIOでの実績を踏まえて、私も幾つかを試している
「あっ」と言わせるスマートウォッチやウェアラブルテレビの開発はどうでしょうか。

  UPQ BIKE me01 ⒸUPQ

  UPQ BIKE me01 ⒸUPQ

松家 克 氏

ARX建築研究所 代表