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コラム

クラフツマン

2017.06.27

パラメトリック・ボイス           アンズスタジオ 竹中司/岡部文

岡部  社会学者であるリチャード・セネットの新著「クラフツマン」、とても興味深く読む
    ことができた。クラフツマンシップとは何か、その神髄に迫る内容なんだ。

竹中  彼はクラフツマンシップという言葉の理解が不十分であることを指摘したうえで、
    これを「職人気質」と捉え、物事に打ち込んでいる特別な人間の状況を表している
    と語っている。

岡部  単に手作業を行う者を示す言葉と誤解されがちだけど、モノを生み出そうとする姿勢
    に着目し、もっと大きな視点で捉えているんだね。
 
竹中  クラフツマンシップとは、事象を深く観察し、その背後にある物の本質を見極めよう
    とする行為だ。
 
岡部  さらにセネット氏は、クラフツマンは「手と頭の親密な関係を築く」ため、「具体的
    な実践と思考の間で対話を行う」ことが大切であると指摘している。
 
竹中  これは我々が日々設計をする上で、常に心がけている点だね。
 
岡部  頭の中で描いた豊かなイマジネーションを、いかに現実世界に送り出すか。
    手(ロボット)と頭(コンピュータ)の対話をいかにスムーズに行うかが、大きな要
    になる。
 
竹中  考えることと作ることが近ければ近いほど、想像を超えたモノを創り出すことができ
    る。そんなモノづくりこそが、我々の理想としている姿だ。
 
岡部  そう、1951年、モニター端末に接続された世界初のコンピュータ(Whirlwind)が開
    発された。そして、その翌年には、これがNCフライス盤と接続されている。
    まさに手と頭の親密な関係を築くため、計算世界と物質世界とつなげようとした試み
    だった。
 
竹中  そんな先人たちのように、我々は常に物質世界に眼差しを向けることを忘れてはいけ
    ない。
    自由自在に膨らむイマジネーションに語りかけ、物質(マテリアル)との密接な対話
    を行う。道具がアナログからデジタルに進化した今こそ、クラフツマンシップが重要
    になってくるに違いないのだ。

           Richard Sennett, The Craftsman, 
           Yale University Press, 2009

           Richard Sennett, The Craftsman,
           Yale University Press, 2009