Magazine(マガジン)

コラム

コンカレントエンジニアリングとBIM

2017.08.10

パラメトリック・ボイス               芝浦工業大学 志手一哉

近年の日本の建築プロジェクトは伝統的に行われてきた設計施工分離方式と設計施工一貫方
式のほか、アットリスクCM方式、設計・施工一括発注方式(デザインビルド方式)、詳細設
計付工事発注方式、設計段階から施工者が関与する(施工予定者が設計業務に対して技術協力
をする)方式など、早期(Early)に施工者(Contractor)が関与(Involvement)する指向
性で契約方式の多様化が進みつつある。早期=設計段階に施工者が関与することすなわちコ
ンカレントエンジニアリングの利点として、プロジェクトのコストマネジメントがやりやすく
なる可能性を挙げられると思う。その可能性とは、設計が完了してから積算して値入れするの
ではなく、プロジェクトの目標予算を建築価格が下回るべく、随時、施工方法を考慮したコス
ト試算を行いながら設計の成果物をマネジメントするやり方を想定する。このような設計と施
工を関連付けたプロセスの中核にBIMの存在意義があるという仮説である。

航空機や自動車など、製造業の設計開発では、3D-CADのモデルとBOM(Bill of materials)
の関係が長きに亘り検討されている。BOMとはデジタル化された部品構成表であり設計開発
部門が構築したBOMの情報を、製造部門が組立てラインの設計に利用したり調達部門が外注
パッケージごとに分類したりする。BOMは設計(Engineering)BOM:E-BOMと
製造(Manufacturing)BOM:M-BOMの2種類に大別される。E-BOMは製品がどのような部
品で構成されるかを示したものでありM-BOMはその部品がどのような材料で構成されるかを
定義したものである。製造業では、3D-CADモデルのパーツやアセンブリとE-BOMの項目を対
の関係とし、設計の3D-CADモデルを組み立てラインの処理ステーション単位に分割して過去
の工程データと照らし合わせE-BOMをM-BOMに展開する。さらにE-BOMとM-BOMの品目
コード体系を統一しておけば、過去の購買データ、部品の在庫データ、製造機械の稼働データ
などを勘案したコスト関連情報を、3D-CADモデルを媒介として、部門を超えた共有が可能に
なると思われる。

設計・製造・調達で扱う情報をシームレスに繋ぐツールとしてBOMが重視されている製造業で
は、3D-CADのパーツをBOMに登録しておく/する、つまり、3Dパーツのデータ管理が肝要
である。建築産業において、ICTを導入した今日的なコンカレントエンジニアリング化を進め
るにあたり、BIMモデルの活用に加え、BOMのような情報基盤を併せて検討する必要があるだ
ろう。しかし、部位の集合であるBIMモデルと部品構成表であるBOMとの相性はさほど良いと
思えない。早期に施工者が関与することが導く生産性向上を社会に実装するには、部位という
概念による空間構成を、部品という実態による空間構成に組み替えたBIMモデル、言わば構工
法BIMモデルという考え方が必要になるのではないかと考えている。