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ユーザー事例紹介

全自動施工図作成システムの開発
<U’sFactory>

2017.10.18

ゼネコンや大手組織設計事務所などと協働し、ICT活用で問題解決にあたる
U’sFactory(ユーズファクトリ)。同社が主軸として展開する、3DCADを活用した
BIM積算&全自動施工図作成システムの「BI For ArchiCAD」、並びに、全周囲動画映像から
座標値を持ち合わせる3次元化映像と3Dモデルを作成する「高精度3D計測サービス」は、
同社代表取締役社長の上嶋泰史氏が自らの切実な想いから構想し、幾多のハードルを超えて
結実させたソリューションである。
事例紹介では、両ソリューションを前編と後編に分けて紹介する。
前編ではBIM積算&全自動施工図作成システムの「BI For ArchiCAD」について、同社代表
取締役社長の上嶋氏に伺った。


確かな根拠に基づいた見積り作成システム
ITソリューションで建設会社や設計事務所が持つ問題の解決を図るU'sFactory(神奈川県横浜
市)は、2013年に設立された。代表取締役の上嶋泰史氏はBIM元年(2009年)と言われるより
ずっと以前から、3Dデータを建築の幅広い分野で一貫して活用することを構想していたとい
う。
同社が展開するBIM積算&全自動施工図作成システムの「BI For ArchiCAD」は、
GRAPHISOFT社のBIMソリューションであるARCHICADで作成した3Dデータをそのまま利用
することで、見積書を誰でも簡単に、短時間で作成できる画期的なアドオンツールである。

  BIM積算&全自動施工図作成システム「BI For ArchiCAD」

  BIM積算&全自動施工図作成システム「BI For ArchiCAD」


このシステムでは積算の従来業務である数量確認表を、全自動で出力することが鍵となる。明
確な積算根拠をもとに、仕上表からの集計結果、3D表示を連動させることで、積算確認作業
の効率化と信頼性の向上を実現しているのである。
「BIMの積算では建物の内部と外部、躯体を1つの3DCADで拾う必要がありますが、これまでの
積算ソフトでは内部積算に対応しているが、外部積算が不得手であるという問題がありました。
一般的な積算ソフトでは『大きく拾って小さく引く』という決まりがあります。しかし、少
し形状が複雑であったり斜めや曲面形状には対応できず、3Dモデルのデータではほとんどが手
拾いになってしまいます。3DCADで描かれていても、従来の積算ソフトは2.5次元で管理す
ることになりますし、紙の設計図に修正がかかると3Dモデルとかけ離れていきます。設計モデ
ルと積算モデルが大きく乖離していく現状は本当にいいのだろうか、という疑問がありました」。

        株式会社U’sFactory
        代表取締役社長 上嶋 泰史 氏

        株式会社U’sFactory
        代表取締役社長 上嶋 泰史 氏


一方で、3DCADでの弊害もあると上嶋氏は指摘する。「例えば壁の図面を描くとき、これま
では線を引いて仕様を番号で指定しておけばよかったものが、3DCADではLGSやボードなど
の組み合わせを考慮しデータをすべて整えておかなければいけません。更に、部屋の内装制限
における不燃や準不燃材料に対応したボードの組み合わせを考慮すると、膨大なバリエーショ
ンが出てきてしまいます。積算では必要な情報ですが、設計者が選んで3DCADを入力する
のは大変です。そこでBI For ArchiCADでは、システムが自動判断し、集計結果に内装制限を
反映するようにしました」と説明する。あくまでも、設計者の作図業務に寄り添い、詳細な情
報入力の効率化が図られているのである。
積算結果は「部屋別 数量確認表」「部屋・部位別 数量確認表」として出力され、初心者から
スペシャリストまで経験にかかわらず、誰もが明快に確認することができる。「この裏付けと
して、数量計算の根拠があることが大切です。積算では拾い落としや、計算ミスを簡単に見つ
けることが重要です。細かいレベルで積み重なった積算結果を省略していくことはできても、
最初から大雑把なものを細かく仕分けることはできないからです」と、上嶋氏は積算の実務か
ら導き出した思想を述べる。


手間を減らすことに注力した全自動施工図作図機能および修正時の連動機能
前述のようにBI For ArchiCADでは根拠に基づいた数量計算が行われ、同じArchiCAD内で施
工図を自動生成させることができる。ここで「施工図として必要とされる見上げ図、見下げ
図、断面図で何を表示するか、レイヤのオンとオフを部材ごとに自動で紐付けられ、正確なラ
ベルが自動生成されることが重要」と上嶋氏は語る。3DCADで見上げなどの断面を切り出し
た図面を表示する際に、見えがかりの線として必要な情報のみが描かれたレイヤが自動的に表
示されるのである。

  全自動施工図作図機能および修正時の連動機能

  全自動施工図作図機能および修正時の連動機能


「これまでは手作業で部材の種類ごとにレイヤを一つ一つ指定していたものを、数量と整合性
がとれたパラメータで管理し、ルールを決めてコンピューティングで全自動作図を行います。
モデル入力時のヒューマンエラーを防ぐことで精度を高め、手戻りを少なくすることができる
のです」。
また、設計変更を伴う施工図作成においては、意匠と構造の調整が欠かせません。全自動施工
図で作図した内容を基に、フカシおよび位置修正の作業が頻繁に行われます。見上げ図で間仕
切りとの位置合わせ修正を行い、変更内容がそのまま見下げ図や、断面図に自動で反映されま
す。関係オブジェクトに対し、寸法やラベルが変更になり、すべてが連動することで、手間が
減るだけでなく、図面の不整合を防止します。
3DCADでは元図のデータ容量が膨大になり扱いづらくなる傾向にあるが、ファイルを共有化
して連携させることで、操作性のほかトレーサビリティ(追跡可能性)も確保しているという。
FM(ファシリティマネジメント)についても、FMのためにではなく、作成してあるものを選
んで使えば、そのままFMでのデータ活用も可能だ。同システムは、企画から施工、FMまでを
実務で経験したことのある業界でも希少価値の高い、上嶋氏だからこそできたシステムとも言
えるだろう。
BI For ArchiCADの全自動施工図作成での大きな特徴に、型枠自動作成機能がある。これは、
いままでにない画期的な機能で、これも面積と数量が算出されていることで、正確に描くこと
が可能となる内容である。また、間仕切りのLGS壁と天井の割付を自動で発生させられること
も大きな特徴だ。

  壁・天井LGS/ボード割付け自動作成機能

  壁・天井LGS/ボード割付け自動作成機能


壁であれば最適なLGS壁のランナー受けおよび振れ止めや建具まわりの開口補強が自動生成さ
れる。天井であれば、天井の大きさを判断し、半端ができるだけ少なくなるように天井材を自
動的に割り付ける。「それでも半端材が多く出るようであれば、人が基点を動かしていきます。
モデルを考えつつ、いかに手での入力を減らすことができるかと考えていきました」と上嶋氏
は語る。


現場で抱いた違和感と危機感からシステムを生み出す
上嶋氏が既成概念を破るシステムを開発した原動力は、「何とかして建築業界のやり方を変え
ないといけない」という危機感を抱いたことにある。上嶋氏は、スーパーゼネコンの1社であ
る竹中工務店に、1993年に入社。作業所を10年経験して、現場での品質・安全・工程管理を
行い、一級建築士と一級施工管理技士を27才で取得し、統括責任者も経験した。クライアン
トと接する機会も増え、見積りを手計算してやりとりする日々が続いた。同時に、協力会社が
施工した数量と照合し精算する作業も必要である。そして、品質管理では設計図と照合し、早
期の施工図作成や、現場での目視と写真で検査しファイリングするなど、業務は多岐にわた
る。経験を積み、幾つもの現場を同時に見なければいけない状況になると、アナログな手法で
は限界を感じるようになったという。そこで上嶋氏は、生産性向上を図るシステムの開発を目
指して、技術研究所への研修生制度を活用し、技術研究所勤務となり、開発の基盤とアイデ
アを構築していった。
見積りプログラムの開発時に重要視したのが、建設にまつわる数量である。「何をするにして
も、数量が出ていないと工程表を作成できませんし、金額の算出も出来ません。CADで描く
データを利用し、なるべく早い段階で数量が簡単に出せないか、と1997年頃には思っていま
した。積算ソフトでは面積を出すために縦×横の数字を入れ、項目ごとに計算することが主流
で、現在に至るまで何十年も変わっていません。3DCADから見積りを出すというアイデアは
誰も着手していませんでしたし、『やるべきことが多すぎるので、やめたほうがいい』と言わ
れることも多々ありました。でも『自分が苦労してきたことを次世代にも受け継ぐのはあり得
ない、自分がつくらないと建築業界が変わらない』という強い思いで、プロトタイプを落とし
込んでいきました。また、当時の上司や先輩にも恵まれて、後押しをしてもらいました」と上
嶋氏は振り返る。幾度も改善を繰り返しながら、3DCADで得られる3次元のボリュームとデー
タベースを紐付け、特許である「見積装置および見積プログラム」の発明者にもなった。そし
て、本年の夏に完成したのが、「全自動施工図作成システム」なのだ。いろいろな方々の協力
を得て実証実験的に適用した内容をフィードバックしながら、上嶋氏はU’sFactoryで改善と開
発を続けている。

「BI For ArchiCAD」の詳しい情報は、こちらのWebサイトで。

※後編の「短期間で3Dモデルを作成する“高精度3D計測サービス”」へ続きます。

☆本ソリューションは、「Archi Future 2017」(10月27日開催)に出展しています。