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コラム

ヒト・コネクト―ム

2017.12.05

パラメトリック・ボイス           アンズスタジオ 竹中司/岡部文

岡部  複雑にネットワーク化されたこの地図、どこの地図だろうか。
    実は、ヒト・コネクト―ムと名付けられた人間の神経回路の地図なのだ。
             
竹中  大脳全体を部位に分け、各部位間の接続の強さを線の太さに置き換えたものだね。
    1000億ほどあるとされているヒト神経細胞のコネクト―ムの解明は、未だ始まった
    ばかりだ。
 
岡部  一方、ヒトより少ない神経細胞を持つ虫のコネクト―ムは、先行して図式化が進ん
    でいる。
 
竹中  既に解明したとされるセンチュウ(体長1ミリほど)のコネクト―ムでさえ、とても
    複雑なのだから、記憶や学習で常に変化するダイナミックなヒト・コネクト―ムは
    想像を絶する複雑さにちがいない。
 
岡部  そうだね。すべての解明を待たなくとも、部分的に脳の通信や回路をモデル化でき
    れば、機械学習、深層学習、そしてその先にある人工知能の技術も大きく進化して
    ゆくだろう。ではいったい、こうした研究成果は私たちの世界にはどのように浸透
    してゆくのだろうか。
 
竹中  人工知能による大きな革命は、ある時突然起こるのではなく、じわりじわりと浸透
    してゆく形を取ると考えられる。事実、IBMの人工知能(AI)型コンピュータ
    Watsonを使ったサービスやソフトウェアの売上高が、すでに年1兆円にも達してい
    るというのだから驚きだ。
 
岡部  確かに。マイクロソフト社が昨年設立した人工知能専門研究ラボも、創業からたっ
    た1年で8000人規模の組織へと急成長している。では、デザインの世界にはどのよ
    うに影響してゆくのか。
 
竹中  例えば、ジェネレーティブ・デザインの手法が挙げられる。
    成長と学習を繰り返す中で形を最適化してゆくユニークなデザインの手法だ。
 
岡部  なるほど、ものの扱い方も有機的になってくるのだね。設計の段階で時間軸を取り
    込みやすくなり、ものを動的に、かつダイナミックに扱うことが当たり前になる。
    デザインは、育ててゆく感覚が強くなる。
 
竹中  インターネットが整備され多種多様な情報が集結した今、私たちはそこからコネク
    ト―ムを描き出そうとしている。そして、情報生命体とも言えるクラウド化された
    莫大なる情報網を生かし、人工知能を更に進化させ、行動力、判断力を備えた人工
    頭脳を創出しようとしているのだ。我々はこの頼もしいパートナーと密に対話しな
    がら、真摯に育ててゆく使命を預かっている。

  ヒト・コネクト―ム
  ※上記の画像、キャプションをクリックすると画像の出典元のWikimedia Commonsへ
   リンクします。

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