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コラム

世界は今、そして日本の私は・・・。

2015.06.30

ArchiFuture's Eye               ARX建築研究所 松家 克

中近東、アジア、ポリネシア、オセアニア、アフリカ、東欧、北欧、欧米、中南米などの世界
中で今、それぞれの状況は異なるとしてもお互いの地域に関連しながら地球規模で同時的に価
値観を変革し変貌している。特に日本では、成長・拡大社会から成熟・縮小社会への変化の中、
期せずして大震災と大津波、放射能汚染を経験し、経済政策やエネルギー政策、環境とサスティ
ナブル、安全、防災、防衛をはじめ、様々な水準での国の将来像が議論され、変革が進みつつ
ある。

このように、先の見えない時代の今の日本での建築ビジョン提示には、トップダウン型の意思
決定からプロセスをオープンにしたボトムアップ型へと移行し、多くの議論を拡散させずに合
意形成や結論へと導く高度なコミュニケーションのスキルが求められている。ICTやBIM、ス
マホやタブレットもコミュニケーションソフトやツールの一つであり、合意形成に結びつける
強力なスキルへと結びつく可能性が高いと言える。この状況での建築家に求められる役割は、
確実に変化しつつある。最初から全てをリードするリーダー的役割ではなく、ゼロから条件
を引き出し、議論を立ち上げ、徐々に議論を結実させ、これを踏まえてデザインを導く“キュ
レータ型”での“もの創りの具体化”が出来る新たな役割が重要となる。

このことを視野に見据え、私たちは、『最大のインプットと最適なアウトプット=柔軟で開か
れたチーム』。この新たな役割に応えるためには、幅広い情報に対する高質な判断力や提示力
を有するゼネラリストと、伝統技術・ICT・CAD・3D・CG・BIMや解析的な技術の蓄積や専門
的知恵と見識を有する各スペシャリスト、これらを統合出来るチームの確立が急務であると考
え、2011年に「ARX+」を仲間とともに結成した。「ARX+」の私たちは、若いエネルギー
をもつ30代・40代から、豊富な設計経験をもつ50代・60代で、互いに認め合う各世代のクリ
エーターの頭脳を集結させ、小さくて柔軟なプロ集団を目指している。
実際に活動してみると、情報収集一つをとっても、シナジー効果は予想以上だ。誤解を恐れず
にいうならば、次世代の建築は、卓越した構想力による “ネットワーク&チームワーク”と
“合意形成のプロセス”だと言える。まだまだチームのスキルは未熟であり、各種のスキルを
持つ人とのコラボを目指したい。新領域のプロフェションとのチーム構成も視野に入れ、キュ
レータ型の小さくて柔軟な組織作りにチャレンジしたいと考えている。

このような活動は、次世代を生きる建築家のロールモデルを導き、また美しくサスティナブル
な社会資産=ストックを提示出来ると確信している。



松家 克 氏

ARX建築研究所 代表