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コラム

BIM的センサーが建築を変える

2018.03.15

ArchiFuture's Eye               ARX建築研究所 松家 克

オオミズナギドリは、500kmにも及ぶ洋上飛行を胴体や翼などの調整でほぼ真っすぐに飛び、
目的地に到達することが東大と名古屋大の研究で最近解明されてきたという。厳しい自然への
永い対応と順応による進化の過程で、3次元的に環境を捉え、風向や高度などを分析する優れ
たBIM的センサーとGPS的能力とを備えたらしい。我々人類は、対応プログラムとセンサー技
術などで、障害物を避け弱風などにうまくバランスさせて安定飛行が可能な鳥類と同サイズの
ドローンをやっと手に入れたところだ。ドローンは中国のDJIが世界一の生産量を誇るが、ア
ラブ首長国連邦のドバイやEUのドイツでは、ドローンタイプの白バイやタクシーの実証実験
も始まった。一方、日本では、ヤマハが本格的に精密農業などに欠かせないドローンの開発に
乗り出し、筑波大発ベンチャーの空間知能化研究所は、海中型のドローン開発を始めていると
いう。これらのドローンは、センサーと密接に関わっていると考えられる。身近では、住宅や
オフィス、学校などの廊下やトイレでの自動点灯、掃除ロボ、顔認証、パスモなどのカード類、
水田の水位、肌センサー、光学系マウスなどでのセンサー利用があり一般化が進んでいる。最
新車では、複数の多機能センサーで事象を検知し、コンピュータ制御により快適で安全な走り
やエコドライブに導いてくれ、次世代の電気自動車やAI運転では、さらに精緻で高度なセン
サーが急増すると考えられる。車載カメラも近赤外感度のCMOSセンサーで、昼夜を問わずに
カラー映像での表示を実現した。形状が複雑な大型トラックなどを検知し、精度高く短時間で
自動洗浄が可能な機器も開発されたという。自動溶接でも活躍。スマホやリストバンド、時計
にもセンサーが組み込まれ、歩数、歩行バランス、心拍数、血圧、疲労度、睡眠の質などの情
報を知ることが出来る。昨年12月のロボット国際展では、進化したセンサーとAIとで瞬時に
行動する多くのロボットが登場などと、センサー関連事案の枚挙に暇がない。しかしながら、
日本のセンサー・AI関連の研究・開発は、欧米や中国などの後塵を拝しているという。
 
前項で一部に触れたが、建築・自動車・鉄道・船舶・航空宇宙・機械・化学・農業・土木・エ
ネルギー・ビジネス・医療・防災・防犯・ロボット・コンピュータ・住宅などの産業や生活の
全領域でセンサーが活躍している。先般、日経産業の記事に、振動などの異常を検知するセン
サー内蔵の“ボルト”が日本でも生産を始めたとあった。建築・土木でもこのボルトが応用でき
ないかなどと夢想しているが、センサーの姿を目にすることは少ない。そこで、学習を試みた。
 
人には、寒い、暑い、痛い、痒い、快適、辛い、甘い、安心、危険、満腹、空腹、渇く、ざら
ざら、滑らか、柔ら、固い、強い、弱い、丸い、四角い、大きい、小さい、高い、低い、立体、
球体、平面、速い、遅い、赤い、黒い、明るい、ヤバイ、美しい、汚い、臭い、可愛い、好き、
嫌い、煩い、静か、楽しい、寂しい、苦しいなどを感じる目に見えない無数のセンサーが体中
に張り巡らされている。動植物にもセンサーがあり、桜はそのセンサーで毎年春に満開の花を
楽しませてくれる。
ウィキペディア(抜粋・加筆)によれば、人間五感や動植物に似たセンサーは、魑魅魍魎で千
差万別な現象や状態の変化などを捉え、信号やデータに変換する優れた装置や機器だという。
音を電気信号に変換するマイクや一定面積での受光を画像データに変換するイメージセンサー、
タッチパネルの指先の動きを検知する接触センサー、コントローラーで動きを捉える加速度セ
ンサーなどがある。最近では、高性能イメージセンサー内蔵カメラ映像をコンピュータで解析
し、目的物を見分ける技術が急速に進化しているという。このカメラもセンサーのシステムの
一つともいえる。多くのセンサーは電気的・電子的な機能構造になっており、測定器、電子・
電気機器、制御機器等に組み込まれ、MEMS技術の進歩で従来よりもはるかに高い感度に達し
ているという。CCD・CMOSなどの画像や漏液、硬度、湿度、流量、傾斜、角度、圧力、生体、
地震、磁気、光、音、温度、圧力、電気、磁気、距離、速度、加速度、角速度、力触覚セン
サーなど、様々な手段と方法があり、対象を複数のセンサーで測定を行い、一度に複数のデー
タを取得し、処理し、それを蓄積する先進的センサーのSmart sensor、や解析や情報処理の
能力が付加されたintelligent sensorは他の種類のセンサーと通信機能で組み合わせて統合さ
れたデータの測定も可能だという。センサー融合とは、視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚などの
多くの種類の感覚情報から融合した知覚を用いてセンシングすることだ、とある。
 
それでは、日本のセンサー開発の動きはどうか?磁性技術で世界をリードするTDKは、モー
ションセンサーをアップルに供給している米国のインベンセンスを昨年に買収し、センサーで
世界トップシェアを目指すと発表。併せ、ルネサスエレクトロニクスは、周囲を検知するセン
サー開発で、フランスのソフトベンチャーノディボティクスとの協業を開始した。海洋では、
商船三井が、今年中に英国のロールスロイスと共同で船舶用の新型センサーでの実証実験を始
めるなど、海運業での自動航行化のセンサー開発に取り組んでいる。農水産関連ではクボタが、5~20mごとに各種データも収集でき、うまみセンサーなどを備えた自動運転コンバインを開
発。魚などの生物にセンサーを取り付け、個体ごとに識別し、時系列で回遊を把握する実験も
五島沖で始まっているという。東京大学発のベンチャーXenomaはTシャツに大量のセンサー
を搭載し、ユーザーの動きを認識して情報を送信する技術を開発。ジャパンディスプレイから
移行した1社であるDSCが進めているのが、ガラス式指紋センサーと電子ペーパー棚札の進化
型の開発だという。
 
最後に、今年1月にラスベガスで開催された世界最大級の家電や情報技術の見本市「CES」で
家電品バイク、自動車、農業系収穫ロボ、SONYの“aibo”など進化したセンサーとAIが
組込まれた多くの新商品が発表された。高質高度で小型のセンサーは、IoTにも欠かせなく、
AIとの組み合わせた質と精度は、日々進化している。JR東海の新幹線には、台車温度の上昇を
検知するセンサーが既に導入されているというが、事例からの教訓では、車軸や建築用鉄骨の
折損検知にも対応できる小型センサー組込のボルトが欲しい。日本のセンサーメーカーが飛躍
的に進化することとテロや安全対応も含めた開発に期待を込め、自分自身のBIM的五感セン
サーも磨きたい。
このコラムを書き終えた今日、日経産業新聞に興味深い情報が載っていた。記事によると20年
後にセンサーは45兆個を超えるとエネルギーハーベスティングコンソーシアムの竹内氏は、想
定されている。これらのセンサーを微弱電流で機能させるとエコと交換手間の省力化などで大
きなメリットがあるという。この先兵として“富士通”の太陽光の熱で電気に変える熱電変換素
子利用のゲリラ豪雨や台風時などの水位センサーを備えたマンホール。“フジクラ”の色素増感
太陽電池を利用したセンサーなど微弱エネルギーを活用した数々の省エネセンサーが登場しつ
つあるという。先に先へと考えている日本人がいると思うと心強い。