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コラム

インプットとアウトプット

2018.07.03

パラメトリック・ボイス                清水建設 丹野貴一郎

サッカーワールドカップの真っ只中に本コラムを書いておりますが、前回のコラムに書いた怪
我の影響でまだ全力では走れずに、トッププレイヤーを見たイメージだけが膨らんでいます。
スポーツをする際に成功するイメージを持つことは大切ですが、私の様にイメージと身体能力
に差があると怪我をする羽目になりますので、皆様もご注意ください。
 
さて、建設の現場でも建てるイメージを持てるということは重要なスキルになります。
設計図書を見たときに建て方がイメージできるかどうかでその建物の難易度(逆にいうと現場
担当者の能力)が判断できると思います。
経験が豊富な担当者は計画のポイントがわかっており、最初に見たときにおおよその方針が出
てきます。そして、その方針をもとに詳細な検討をしながら実際の施工計画をすすめていくこ
とになります。
それでも大抵は何かしら経験にない部分というのはあるもので、そういう場合は技術部門や協
力業者と一緒に考えていくことになります。この様に登場人物が増えてくるとイメージの共有
ということが非常に大事になってきます。イメージを共有できていないと、それぞれが別の
ゴールを目指してしまうなどのトラブルが生まれやすくなります。
おそらく現在BIMの導入で最も効果が出ているのは、このイメージの共有の部分ではないで
しょうか。いわゆる「見える化」により関係者間での理解の齟齬が減っているのだと思います。
 
ただこれはBIMだけがもたらす効果ではありません。もともと図面は言葉だけでは説明し難い
ものを表現しているものです。それ以外にも日常的に表やスケッチなど様々な表現を駆使して
考えを伝えているはずです。これら全てが「見える化」でありBIMによる3D等は表現の一つに
過ぎません。重要なのは伝えるべきことをわかりやすく表現することであり、各情報に向いた
表現方法を選択すれば良いのではないでしょうか。
 
最近友人との会話の中で、学生時代に研究で悩んでいる時に助教から言われた言葉で今でも役
立っていることがあり、「何をインプットして何をアウトプットするかを整理して後はそれら
の繋ぎ方を考えれば良い」と聞きました(酒の席の会話なので、あいまいな記憶で書いていま
す)。
BIMの導入により本来必要ではない事にまで手を広げてしまい迷走している状況を見ることが
あります。
まずは扱うべき情報と伝えるべき情報を整理し3Dモデルで表現するもの図面で表現するも
の、数値を表で表現するもの、それぞれに適した表現方法を考えることが今求められている
データマネジメントの第一歩なのだと思います。何をすれば良いかわからなくなった時、原点
に戻って考えてみてはいかがでしょうか。

丹野 貴一郎 氏

SUDARE TECHNOLOGIES    代表取締役社長