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コラム

プログラマブル・マテリアル

2015.07.30

ArchiFuture's Eye                慶應義塾大学 池田靖史

この1年ほどで低価格な3Dプリンターの普及がだいぶ進んだ感があるが、その使われ方はステ
レオタイプ化しているようにも見受けられる。もちろん現在の低価格3Dプリンターには出力可
能なサイズや速度などに制限があって、実用的な応用には今後の技術開発にも期待すべきとこ
ろも大きいだろう。

そんな中でイノベーションは発想次第と思わせる事例のひとつとして、ファッションを先攻す
るイスラエルの女子学生デニット・ペレグが卒業設計でつくった3Dプリンターによる服が
YouTubeで共有されて話題になっている。
<下記の画像をクリックすると動画ページ(YouTube)へリンクします>


ビジュアル的にも大変美しいが、ここには3Dプリンターによる建築的な製造物にもいくつか
の示唆があるような気がする。
まずユニットとジョイントによる編み物のような構成を製造可能な範囲でつくってからはぎ
合わせるという、部品単位でも全体を一度につくるのでもない方法を取っていること。その
ユニットが完全に同一形状の繰り返しではなく服の3次元曲面にあわせた 個別の形状をして
いるデータの作成がされていること、そしてもともと衣類としての柔らかさはある程度の与
条件であったにしろ、弾むように動くという他の布素材にない新たな特性を獲得しているこ
となどである。
これらはすなわちデザインの価値がコンピューテーショナルな方法にしか産み出せないデータ
の構造として存在していることを示している。

結局3Dプリンターだって出力するデータ次第で本当の可能性が開花すると言いたいのだが、
このようにデータがものづくり自体を決定するプログラマブル・マテリアルの分野で偶然にも
同じイスラエル出身の別の女子学生の作品をもうひとつ、MITの 建築にはSelf-Assemblyラボ
という自己組立機能を研究しているグループがあって、そこの学生ダナ・ツェリグがつくった
Tracesは熱を加えると縮むポリスチレンの白い素材に黒い線を印刷しただけだが、リンク先の
動画で見ていただくとわかるように、
<下記の画像をクリックすると動画ページ(vimeo.com)へリンクします>


熱吸収の時間差によって折れ曲がり方が決まることを逆算したパターンにする事で、熱を加えると平らな状態から勝手に目的の形状に変化する。変形の予測と制御は高度だがハード的には必要なのはただのモノクロプリンターだけである。こんな新しい発想が若い世代からどんどん出てくれば建築の世界はもっと変わるだろう。