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コラム

デジタルエンジニアの育成

2019.06.20

パラメトリック・ボイス           アンズスタジオ 竹中司/岡部文

岡部  Archi Future 2015のシンポジウムで、「デジタルエンジニア」の仕事を紹介してか
    ら、ここ2、3年で、多くの人にこの職種に興味を持っていただけるようになった。

竹中  そうだね。それと同時に、次世代のデジタルエンジニアの育成にも注目が集まってい
    るね。行く先々で、「どうやって学んだらデジタルエンジニアになれますか」といっ
    た質問をよく受けるよ。

岡部  私達もエンジニア教育の必要性を強く感じて動き始めているわけだけど世界でもそ
    んな動きが見られるんだ。中でも、「ダイソン インスティチュート オブ エンジニア
    リング アンド テクノロジー(The Dyson Institute of Engineering and
    Technology)」が興味深い。

竹中  あの掃除機で有名なダイソンが、27億円を投資して設立・運営している大学だね。
    ロンドンから車で2時間ほどのコッツワーズ地方の町マームズベリーに2年前に設立
    された。昨年の合格率は20倍以上だったというのだからエンジニア業への注目度が
    伺えるだろう。

岡部  他の大学と大きく違うのは、机上の教育だけではなく、実践的にエンジニアリングの
    経験を積むことが出来る点だという。さらにユニークなのは、授業料がすべてダイソ
    ン負担で無料であること。逆に学生は給与をもらえる斬新なシステムだ。

竹中  ただ彼らが目指しているのは自社の社員育成といった小さな目標ではないようだ。
    世界のエンジニア不足の解消と、未来のエンジニア育成を大きく掲げている。次世代
    の教育に対する彼らの鋭い視点と素早い行動は、わたしたちアットロボティクスが進
    めているデジタルエンジニア育成のための教育活動と重なる部分が多い。

岡部  デジタル技術を活かした道具を開発しても、この道具の可能性を最大限に引き出すこ
    とのできる「技能」を生み出す必要がある。

竹中  そしてその技能を生み出すためには巧みな技を生み出してきたかつての職人たちに
    代わり、次世代のエンジニアたちの道具を“使いこなす”力が求められる。私はそうし
    た力を「デジタルセンス」と呼んでいる。我々が目指すエンジニア教育の中枢には、
    このデジタルセンスが存在しているんだ。

岡部  ただ単にコンピュータやロボットの操作手法を学ぶのではない。コンピュータの世界
    から抜け出し、モノに触れ、道具と対話し、繊細な感覚からデジタルな技能を生み出
    すこと。それは、ある種、最先端の世界に現れた究極のアナログ世界だ。

竹中  わたしたちが今年スタートした、企業向けの実践的エンジニア育成学校は、計算世界
    と物質世界をつなぐことの出来る、デジタルセンスを持ったエンジニアを育成するこ
    とを目指している。そうした全く新しい感覚を持った若者たちによって、職人技を超
    越した「デジタル技能」が誕生するのだ。

   ※上記の画像をクリックすると画像の出典元のThe Dyson Institute of   
   Engineering and TechnologyのWebサイトへリンクします。

  ※上記の画像をクリックすると画像の出典元のThe Dyson Institute of   
   Engineering and TechnologyのWebサイトへリンクします。

竹中 司 氏/岡部 文 氏

アンズスタジオ /アットロボティクス 代表取締役 / 取締役