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コラム

「BIM的世界」における「人・組織の周辺」その3
(建物のデータは、無限の資源になる
 ~BIM-FM PLATFORM ⑦)

2019.07.11

パラメトリック・ボイス         スターツコーポレーション 関戸博高

このコラムでは、継続的に経営的視点から「BIM的世界」について書いている。

1.今回で7号目になる。物書きとしては未だ不慣れであり、自分の考えを掘り起こしながら
書くので時間もエネルギーも必要だ。
さてこの経営的視点とはヒト・モノ・カネ・情報を、事業目的に対して最適なバランスに
なるよう総合的に判断する立ち位置のことだ。前号でその視点に立つことは、現場でBIMを
使っている人たちにとては、未経験の方が多いゆえ難しいと書いた。しかしその視点を自
分のものにすることは、これからBIM情報の利活用が求められる時代になると色々な局面で
経営的判断が求められるためとても大切になる。この時代が求めているものがBIM情報の
インフラ構築(BIIP=BIM Integrated Information Platform、5号目コラム参照)でもある。
この情報インフラづくりには、まず準備期間として5年ほど必要と思われる。その間は個人間
及び企業間ネトワークを含めた環境作りと、有効性確認の為の実証実験の連続となり、さら
に日常的に利便性の高いBIM情報空間が見えてくるのに5年ぐらいかかると思っている。その
中でいくつかの自立した仕組みのサビス提供が始まてくるはずだ。遅くともこのぐらいの
スピドで進まなければ、世界はもちろん日本の産業界全体の変化について行けない。
そしてその実現のためにはオープン・イノベーションを企業間個人間にかかわらず徹底
して行ていくことだ。特にこれからは個人間ネトワークが今まで以上に求められるだろ
う。
企業よりも早く深い知識を持った個人が育ちやすい時代になってきているからだ。

2.ここで何故立ち位置の話をしたかと言うと、次の写真を見てもらいたい。

 <写真:チェコ プラハ郊外>

 <写真:チェコ プラハ郊外>


 <写真:ルクセンブルグ郊外>

 <写真:ルクセンブルグ郊外>


先月欧州を車で移動して気づいたことがある。写真の様な田園風景によく出会うが、日本の農
地に散在する大量の休耕田が、ここでは見かけないのだ。欧州各国も国土はそんなに広くはな
い。従ってこのような広大な農地が数年で育つわけではないので、この違いは長期戦略の有無
が原因と言うことになる。私は農業政策に詳しいわけではないが、選挙ごとに短期的な政策変
更が注目される日本とでは、この差が生じるのも無理はないと思える。BIIP構築は、この様に
迷走をしないための長期的な視点・戦略を持ったものにしたい。この田園風景を他山の石とし
たい。

3.ここからはスターツ・グループで、AIやBIMに関係する仕事をしている部門の現状を書く
ことにする。皆さんの組織づくりの参考になれば幸いだ。ただし、組織は流動的で最適解を求
めて、これからも変化していくのでその点はご了解いただきたい。

まず関係する部門は大きく3つに分かれる。
①ひとつは(株)スターツ総合研究所の「テック・デザイン・ラボ」。先月まで私の直轄チ
 
ムだったが、今月から総研に移した。AIやBIMの新規事業開発のコンセプト構築システム
 開発から提案までを行っている。昨年リリースしたARCHSIM(アーキシム)という賃貸住宅
 の「AI建築事業計画サービス」を開発したのはこのチームである。更に社内向け利用促進
 や社外向けサービス提供も自分たちで行っている。
 また、情報の利活用について、他社(建設関連に留まらず金融、インフラ企業などを含む)
 へのコンサル業務もここで行っている。皆さんがスターツとAIやBIMの関係で何か連携しよ
 うとする時には、ここが窓口になる。

②次はスターツCAM(株)の「設計部」。この会社は建設会社で、その設計部でBIMを使って
 意匠構造設備に関する企画設計から基本設計及び構造計画などを行う。またビルのフ
 サード・デザインのシミュレーション、ジェネレーティブ・デザイン、ゲーム・エンジンを
 使っての仮想現実アニメーション(xR)など施主との合意形成に役立つ仕組みも作ってい
 る。約100名。

③もうひとつ、スターツCAM(株)の中の「BIM生産設計部」。ここの役割としては、設計部
 と工事部の間で、BIMによる意匠、構造、設備に関する基本設計支援、実施設計、積算、仮
 設計画、生産設計、ビル管理用データなどの実装レベルでの作成を行っている。幅の広い領
 域のため、この部署にいる人材のキャリアは、設計はもちろんだが工事経験者も多い。経験
 が重要なのだ。
 更にスタツのBIM-FM PLATFORMの稼働に必要なソフト開発例えば自動積算ソフト開発
 や市販ソフトとのデタ 連携も行い、多面的なBIMの業務展開ができるようになっている。
 人員は東京に約40人沖縄プノンペンに合わせて約20人合わせて約60人がBIM業務のコ
 アな部分を担っている。

 <組織概略図>

 <組織概略図>


4.以上がスターツのBIMに関係する組織である。ここで連載の4号目コラムで述べた、「蜘
蛛の巣」型組織=開発型組織を思い出していただいた読者の方もいるのではないだろうか。
そこでは以下の様に書いた。
『視界不良の中を進まざるを得ない新規開発は、既に述べたように上手くいかないことが多々
ある。組織づくりはそのようなことに対応できる弾力的な構造にしておく必要がある。つまり、
全体の開発作業は戦略の実現の為に機能し、個々の異変に対して個別に対応でき、また同時並
行して複数の開発業務を進められる組織だ。』
基本は変わっていない。

5.オープン・イノベーションについての参考に、ひとつの事例を挙げておきたい。
ARCHSIMの開発でアドバイザーをしていただいた、東京大学空間情報科学研究センターの清
水千弘特任教授との共同研究会を6月に発足させた。研究会の名称は「不動産・BIM情報活用
研究会」。テーマはAIBIM等のIT技術を不動産、建築、建物管理、建物評価などへ活用して
いく方法の研究である。既に建物評価へのBIM情報利用の研究を他企業と組んで始めている。
テーマ通りの広い領域に渡って研究から実装へ取り組んでいくには当然多くの方々との連携
を必要とする。まさに6号目コラムで述べた「仮想プロジェクト・ラボ」で想定したCommunity−Laboratory−Projectという具現化プロセスを進めていくひとつの事例になる
と思っている。今後は多様な方々の協力をお願いすることになるだろう。