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コラム

BIMオブジェクトとデザイン

2019.09.19

パラメトリック・ボイス               芝浦工業大学 志手一哉

BIMオブジェクトのLOD(Level of development)について、改めて考えてみると様々なこ
とを気づかされる。LDOは米国のBIMForumが定期的に公表している「LOD Specification
Released for Public Comment」
に、その仕様が詳しく書かれている。その中では、CSIの
UniFormatTMのLevel4(一部はLevel5)の分類にしたがってBIMオブジェクトが展開され、LOD100、200、300、350、400の5段階で、BIMオブジェクトの表現についての仕様がテ
キストや画像で示されている。例えば、Precast Structural Inverted T Beam (Concrete)、
Exterior Wall Construction (Cold-Form Metal Framing)、Exterior Operating WindowsのLOD300の画像を見ると、ビルディング・エレメントの一般的な形状が表現されている。それ
らは、LOD350で、鉄筋、下地材、カスケットなど他のビルディング・エレメントとの取り合
いにかかわる構成資材が含まれ、LOD400で実際の製品に近い資材や資材で構成された表現と
なる。

この資料の第4章には「Model Element Table(MET)」に関する記述がある。METは、垂直
軸がビルディング・システム、水平軸がプロジェクトのマイルストーンで構成され、縦軸の内
容を横軸の時期に誰が(MEA)どの詳細度(LOD)でモデリングを担当するかを明確にする
Roles and responsibility matrixの体裁となっている。縦列に列記されているビルディング・
システムは、UniFormatのLevel1から4で分類された項目である。ただし、UniFormatの
Level4は、特定のビルディング・エレメントではなく、B1010.10/Floor Structural Frame、B2010.20 /Exterior Wall Construction、Exterior Window Wall /Exterior Window Wall
のように、建物の部分に対する分類で、Level4に対する構法の解を選択・追記する仕組みである*1。建物のフォルムや空間に要求される性能はレギュレーション発注者のリクワイヤメ
ント、デザインコンセプトなどにより多様なため基本計画や基本設計の段階でビルディング・
エレメントに対する構法の解が一義的に決まっているとは限らない。一方で、木質系の構造やPPVC(Prefabricated Prefinished Volumetric Construction)などのように、最初から構法
を想定してデザインする場合もある。つまり、オブジェクトベースで設計初期のデザインをで
きる場合とできない場合がある。こうしたことを考えると、LOD(Level of development)
とは、300までがフォルムや空間に対する性能を検討するための形状で、350以上が性能に対
するエンジニアリング的な解を検討するための形状と解釈することができる。

同じことをUniclass2015に当てはめて考えてみると、LOD300はSs:Systemsのテーブルで
分類するBIMオブジェクト、そのオブジェクトにPr:Productsのテーブルに分類された資材を
追加した状態がLOD350や400に該当すると解釈できる。鉄骨造で例えると、設計者が検討し
た材質や形の鉄骨がLOD300ファブリケが接合部のデルを加えた状態がLOD350
となる。設計者がディテールにこだわりたい場合は、ビルディング・エレメント相互の納まり
も含め、構成資材や接続部分を設計者の責任でモデリングすることになる。その部分の設計を
エンジニアや製造者の責任とするならば、LOD300と350でモデリング、すなわち設計を分業
することになる。また、標準的なディテールを採用するのであれば、LOD300のBIMオブジェ
クトに官庁営繕や企業内の標準仕様や標準詳細図の記述や2Dデータのリンクを張るだけで施
工に情報を伝えられる。その際には、BIMオブジェクトとリンク先の情報を一体的に扱えるよ
うな分類体系データ共有環境図面の表記方法などを整備することが重要な鍵となる。また、LOD350以上のBIMオブジェクトが、形状を伴っていなくても成立するとことを理解できる。
このように、LOD(Level of development)を、モデリングの詳細度ではなくビルディング・
エレメントに対する検討内容として見ることで、設計者とエンジニアの役割、責任、契約を
BIMオブジェクト毎に分類することができる。それらを分類することができれば、BIMにおけ
るマネジメントやコラボレンの役割がよりいっそう明確になるのではないかと妄想した
次第である。

*1 CSI, CSC, “UniFormatTM A Uniform Classification of Construction Systems and
   Assemblies”

志手 一哉 氏

芝浦工業大学 建築学部  建築学科 教授