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ユーザー事例紹介

現場監督が使い易い現場支援サービスが生産性向上と働き方改革を推進<矢作建設工業>

2019.10.30

愛知県名古屋市に本社を置き、東海地方を代表する総合建設会社の1社である矢作建設工業は、
早い段階からICT活用を企業戦略の1つとして推進することを掲げ、生産性向上による働き方
改革など、さまざまな成果を実現している。
ICTを推進する同社が導入し、積極的に活用しているのが建築・土木の生産支援クラウドサー
ビス「Photoruction(フォトラクション)」だ。今回同サービスについて建設現場で活用
し効率を上げている実際の様子や、導入にあたって工夫した点などを矢作建設工業の
太江慎吾氏に伺った。

情報を最大限に活用するというコンセプトに共感しPhotoructionを導入
建築や土木工事の企画・設計から施工、コンサルティングまで幅広く手掛ける矢作建設工業。
同社は、業務の効率化と生産性向上のため、ICT推進にいち早く全社的に取り組み、BIMの活
用と推進にも3年ほど前から本格的に着手しているほか2018年9月には、エンジニアリングセ
ンターに研究棟を新設。各種構造分野の技術開発だけでなく、ICT技術の現場導入を進め、業
界の垣根を超えた研究開発も行っている。その同社の建築事業本部でICT推進の中心的な役割
を果たしているのが太江慎吾氏だ。
「私の所属する建築事業本部 施工本部 工務部は、主に施工計画の立案を担当しています。当
社のBIMへの取り組みは、当初は設計を意識せず施工独自にスタートしました。現場の足場や
鉄骨建方などの仮設計画をBIMで計画するとともに、BIMのコンポーネント(部品)も自社で
作成するなど、すべて内製で行っているのが特長です。現在は設計施工一貫BIMを実物件で運
用開始しており、連携強化することでさらなる生産性向上に取り組んでいます。BIM活用の目
的は生産性向上でありBIMはICTの一部として、あくまでも働き方改革の一端を担うという考
えです」と語る。

       矢作建設工業株式会社
       建築事業本部 施工本部 工務部 係長
       太江 慎吾 氏

       矢作建設工業株式会社
       建築事業本部 施工本部 工務部 係長
       太江 慎吾 氏


BIMを中心にICT推進に取り組んでいる矢作建設工業だが、より幅広く業務の効率化を進める
ために導入したのが、建築・土木の生産支援クラウドサービス「Photoruction(フォトラク
ション)」である。
Photoructionは、建設現場の工事写真や図面などを通じて、現場で発生する情報の一元管理を
行う生産支援クラウドサビスだ。2年半ほど前に太江氏が参加した日本建設業連合会のセミ
ナーで紹介されたことをきっかけに興味を持ち、試験的に使用。現在では規模の大小を問わず、
新規に着工するすべての現場でPhotoructionを導入しているという。
「Photoructionで最も気に入っているのはBIMと性格が似ている点です。BIMは“I”すなわち
“情報”の部分を上手に活用することがポイントで、BIMモデルにさまざまな情報を付加し、そ
れらの情報をうまく活用することで実際の現場でも効果が得られます。Photoructionも、写真
にどんどん情報を付加するイメージで、情報が蓄積されるのが良いところです」と、情報とい
うものを意識することがICT推進の鍵になると太江氏。
「これまでは別の写真管理ソフトを使い、帳票の整理は文字を手打ちで入力していました。
Photoructionではあらかじめ電子小黒板を設定しておけば、工事写真台帳で写真を整理する時
に情報が入っていきます。別の帳票を出すときにも新たな情報が付加され、情報を一度入れて
いればずっと引き継がれるのです。情報が大事にされていて、BIMの考え方と親和性が高いと
感じます」と太江氏はPhotoructionの魅力を語る。

   Photoructionの概要イメージ

   Photoructionの概要イメージ


 Photoructionの電子小黒板の機能について説明する太江氏の様子

 Photoructionの電子小黒板の機能について説明する太江氏の様子


写真撮影で検査と整理が同時に自動で行われるメリット
太江氏はICT活用の基本的な方針について、次のように説明する。「ICTを通じた変革期の中
で、人とコンピュータの棲み分けは常に意識し目的なく流されることがないように気を付け
ています。ICTを使用する際、最終的なデシジョンの部分は人間が行わないといけませんが、
すべてを判断する必要はありません。コンピュータは繰り返し作業が速く正確で、基本的に
ヒューマンエラーが起こることはありません。単純な情報を入れ込むような作業は、コン
ピュータに任せるのが大事だと考えています」とバランスに注意しながら、ICTの活用を進め
ているという。
現場で撮影した写真はPhotoruction内で自動的に整理される。そういた機能も太江氏の考え
方にフィットしている部分のようだ。「これまで、写真に位置情報を付加するソフトと検査す
るソフトは別々のものでした。Photoructionは検査をしながら写真を撮影できさらに図面
も見ることができるオールインワンに近い形のため、効率的でヒューマンエラーも防ぐことが
できます。そして大分類、中分類、小分類といった写真の分類分けや、工種を使用者が設定で
きるようになっています。自社で管理したいようにカスタマイズでき自由度が高いので、各社
にマッチするのではないでしょうか。写真の分類とカテゴリーについては最初に設定する必要
がありますが、プラットフォームが整えば位置情報をつけて撮影するのみとなり、現場監督な
どを含めて誰でも対応しやすいです」と太江氏は評価する。

 Photoructionの画面1

 Photoructionの画面1


太江氏は社内で普及させるにあたってPhotoructionの意図を汲むことができるキーパーソン
を選び、少しずつ導入したという。現在では会社全体として、現場に出る若手社員を中心に、
BIMに加えてPhotoructionの研修を行っている。「写真の撮り方から情報の付け方書類や
ファイルの整理の仕方までを教えています。これらは現場ごとに違いが出がちなのですが、
データを活かし効率を高めるには統一して整理することが欠かせません。情報が大事、という
感覚を共有するのです」と太江氏はいう。「その甲斐あって着実に現場での導入は進みました。Photoructionは誰でも簡単に扱えるように設計されているので若手からベテランまでが使えて
います」。
導入後については、例えば矢作建設工業で施工する一般の規模のマンションの工事現場で、
RC造の躯体工事が1フロア2週間ほどのサイクル工程で進捗する中1フロアごとに品質検査を
受ける必要がある。現場監督は写真の撮影・整理・出力などのルーティンワークに追われ、こ
なせないと日ごとに業務が積み重なていく。Photoruction導入後は効率的に写真管理業務を
行うことができ、飛躍的に改善されたという。「現場の労務の歴史をたどってきた側から見る
と、効率化を感じます」と太江氏は成果を実感しているという。

クオリティを落とさずに業務の効率化を推進し働き方改革を実現
また、「当社の働き方改革は、クオリティを落とさずに業務の効率化を進めることがポイント
です。最近、工事の管理項目を見直す機会がありました。品質管理の“品質”を保つことは欠か
せませんから、管理項目は3%程度しか減らせませんでした。働き方改革において、単純に業
務を減らすことは間違いで、品質管理を“効率的”に行うための方法を見直さなくてはなりませ
ん」。
そのためには、以前の価値観にとらわれないことも大事、と太江氏。「入社から6年間程は現
場を担当していました。そのため、これまでやってきたことを変えずにこうあるべきという声
も大切だと思っています。けれど、それは本当に必要なのかと検証し、本質を見直すことが大
切で、そうしなければ次には進めません」。さらに、「もちろん新しいツールの導入時には最
初は反発を受けることもありますが、私の世代が中心になってICTを推進していくことで、上
と下の世代を繋ぎ、より良い職場環境を作れるようにしていきたいと思っています」と太江氏
はICT推進を担う立場としての強い想いも語る。

 Photoructionの画面2

 Photoructionの画面2


太江氏がさらに描いているのは、現場の品質管理をPhotoructionで確実に行う運用である。
「本社にいても現場の様子や進捗が把握できるのはメリットです。Photoructionは、社内に
いる人間と現場をつなぐツールになっています」と太江氏。
そして現場でPhotoructionで全数検査が行われることが、さらなる品質管理につながるはず、
と太江氏は今後の展開も考えている。「人の手では、全数検査は難しいです。タスク機能に管
理するチェック項目を入れ、検査し、写真もタスクの中に入り、すべての情報が入るようなイ
メージを持っています。クラウドサービスで随時アップデートされるPhotoructionはサービ
スを提供する側として柔軟な姿勢も良いですし、今後の現場管理のプラットフォームになって
くれることを期待しています」と太江氏はPhotoructionのさらなる進化に期待を寄せる。

「Photoruction」の詳しい情報は、こちらのWebサイトで。