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コラム

進化するICTデザイン(4)
~スピンアウトするデジタルデザイン

2020.02.10

パラメトリック・ボイス            安井建築設計事務所 村松弘治

SDGsと絡むSociety5.0など、あらゆるデジタルデザイン化への動きは大きく加速している。
多くの人々がそれぞれの分野の可能性について気づき、議論を深め、実現化に向けて大きく前
進しているのだが、“Society 5.0 for SDGs”(日本経済団体連合会)の概念は特に重要である
ことに気づく。働く環境と目的とコンテンツと経営をデジタル技術とその連携(つなぎ)に
よって飛躍的に向上させることは、まさに近い将来、スマートシティ化など新しい社会基盤づ
くりにもつながるだろう。
今回は、少しグローバルな視点から建築やまちづくりにおけるデジタルデザインの方向性や、
それを形づくるためのプラットフォームについて、クライアントの視点から触れてみたい。

デジタルデザインのプロセス革命
設計分野でもデジタルデザインの進捗は目覚ましいものがあるが、一方そのプラットフォーム
であるプロセスではあまり大きな変化は見られない。
BIMが登場した時は、そのデータ力の可能性について論じられることが多かった。つまり背景
にあったのは建築計画プロセスや建築生産システムの変革への期待感だったように思う。
現在注目度が高い建築本来の魅力的な造形や構成、そして計画の魅力をクライアントに伝える
ための手法への活用はとても大切ではあるが、データ力や活用手法の深度化こそが、本来デジ
タルデザインやBIMがめざすべきプラットフォームに近づくのではないだろうか。
それでは、めざすべきデータプラットフォームとはどのようなものか?
一言でいえばクライントが価値を見出せるデータを積み重ね、維持し、そしてそれらをつな
ぎ合わせるシステムを構築することだろう。そのためには、足元のBIMやICTの概念をしっか
りと理解しモノコトの判断に使えるデータ化とともにそれらをIoTを含めたネトワーク
のなかで共有し、社会基盤の構築をめざすといった概念を確立することが重要だろう。ただ
し現況を踏まえると、まずは、そのためのプラットフォームの整理や開発が急務と言える。

クライアントが求めるデジタルツイン
クライアントが魅力を感じ、価値を見出せるデジタルデザインプラットフォームで必須とされ
るものはコストパフォーマンスだろう。
特に、事業計画、維持管理計画、資産管理計画におけるコストパフォーマンスは収益性が高く、
注目度も高い。
またこのプラトフォームのフジカル空間と仮想空間の間で起こるスピンアウトは一つの
建築にとどまることなく社会全体に影響を及ぼしブロクチーンのように建築と建築
築とインフラ、他産業をつなげることで、まちや社会のビッグデータ活用が現実のものとなる。
そのためには、まずは建築の最適化を図るためのデジタルツインの発展形が必要であろう(→BuildCAN)。
現実空間でのセンシングを仮想空間におけるビッグデータの蓄積と解析(AI)、それらを現実
世界での最適空間の実装、そして、進化するセンシングというふうに、結果とシミュレーショ
ンを重ね合わせながら、人にとって最も優しい快適性と社会への貢献/エネルギー削減を達成
することができる。
つまり、このスピンアウトこそがデジタルツイン技術を進化させ、現実世界が抱えている問題
を解決し、未来創造的超スマート社会へとつなげることができる。

デジタルツインの具現化“BuildCAN”
BuildCANはBIMデータを活用したビル経営・ビル運用のためのクラウド型維持管理システム
(=プラットフォーム)である。
詳細は下図を参照いただきたいが、BIMで積み重ねてきたデータを活用し、ネットワーク運用
が可能であるところが大きな特徴であり、従来の維持管理機能性能に加え、センシング技術と
の組み合わせで、エネルギーマネジメントや中長期修繕計画などにも踏み込むことができる。
ネットワーク型であるために、複数のビルマネジメントも可能であり、ブロックチェーンの概
念を加えることで、創造的ビックデータ活用も現実のものになる。
とは言いつつも、まずはクライアントの生活にBIMを浸透させることが重要であり、そのデー
タの必要性度・重要度を認識されることが必要であろう。そして、情報管理を確立することで、
維持管理の先にある資産管理や事業計画(事業展開や経営判断)へダイナミックに展開するこ
とも必要である(詳しくは「BIMのかたち」“建築が通信機能を持つ”参照)。
まずは、BIMデータを活用した維持管理から…をきっかけとして展開を促進したいというのが
実感である。

Society5.0へのスピンアウト~SDGsへの展開
このように、デジタルツインのデータ(=BIM属性データ)の活用は、スマート建築をつくり
上げる。また、建築完成後のスマート化はZEBなどと同様の価値をもたらす。
データを利用しながらデータの質を高め、システムをスパイラルアップすること、そして多方
面とのネットワーク化をつくりだすことで、複数建築のスマート化はもちろんのこと、その集
合体であるスマートシティづくりにもつながる。
これらがめざすものは、すなわち快適な空間であり、活力の創出、そして高品質な生活の場づ
くりである。
人の生活を豊かにするIT革命こそが、新しい価値を社会にももたらす。いわば、SDGsがめざ
すところと同じである。
建築においては、データに基づくデジタルデザインプラットフォームの構築と、そこからのス
ピンアウトのチャレンジこそが“Society 5.0 for SDGs”への近道ではないだろうか?
新たなデジタルデザイン/BIMビジネスもそんなところにあると思う。

村松 弘治 氏

安井建築設計事務所   取締役専務執行役員   東京事務所長