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コラム

コンピュテーショナル界隈で実務者として続けるための5つの心がけ

2020.03.26

パラメトリック・ボイス       ジオメトリデザインエンジニア 石津優子

パラメトリックモデル、コンピュテーショナルという言葉が浸透し、一念発起して始めた人も
多くなりました。業務に追われる中で、技術を切磋琢磨して磨き上げ、自分でできる範囲がほ
んの少し広がったと自信に繋がるころ、技術以外の課題にも対峙することが多くなります。最
初は純粋な興味で習うことに集中していたはずが、今はこれをどう続けるかどうかと悩む時間
が増えてしまったという人もいるのではないでしょうか。今回は、私が先輩や指導者からかけ
てもらって励まされた言葉を5つの心がけとして紹介します。

  1.自分が自分の理解者になる
    パラメトリックモデル、コンピュテーショナル、オートメーション。これらを実務レ
    ベルでこなせるようになるには個人差がありますが、時間がかかります。成果が出て
    いない、何がしたいかわからない、何をしているのかわからない等、分野の意義や成
    果を否定されたり、便利さは理解されたが使い捨て道具や飛び道具のように扱われる
    ことで個人として否定されたり、そういう経験をしていない人にはあまり会ったこと
    がありません。「周りに理解してもらう」ということに努力するのは良いことに見え
    ますが、結果を出すための努力と直結していないことの方が多いです。英語学習と同
    じようなものです。話せるようになるまでは、幼児以下の言葉でも自分で使っていく
    ことでしか成長できないのです。その間に嫌な思いをすることもありますが、そんな
    思いをさせないでくれとネイティブで言語を学習したことがない人に訴えても期待し
    てる言葉は返ってきません。そこに時間をかけるよりも周りに理解できない人が多い
    ほど、それだけ新しいことをやろうとしているのだと自分に言い聞かせましょう。話
    せるようになれば、嫌な経験も減ってきます。

  2.周りのできる人と比べない
    知識がついてきたり技術レベルが上がってきたころ、世界での自分の相対的なレベル
    を理解してきます。能力差というものが如実に出ます。ある課題を与えられたとき、
    3日でできる人もいれば3年かかってもそもそもできないということもありますそれ
    くらいに明確に個人差がわかりやすく同じ時期に同じ時間をかけているはずなのに、
    周りの人よりもできない、センスがないからやめよう、そう思うこともあるかもしれ
    ません。その前に少し考えてみてください。本当に同じ時間でしょうか。例えば私は
    大学院に入るまでパソコンというものにあまり触れる機会や必要性がそもそもあまり
    ありませんでした。その時期に同じ時間をかけて勉強しているといっても、まず土台
    が違うのでセンスが良いとは言い難い状態でした。そこは、好きだから続けるという
    シンプルな選択でいいと思います。世界の天才レベルの人と比べて社会に与えるイン
    パクトが少ないからといって落ち込んだりせず、昨日の自分と比べてください。

  3.持っている技術を自分の外へ晒してみる
    個人的にはワークショップや企業トレーニングを行う際に持てる知識を外に出すとい
    うことは躊躇しません。なぜなら私は実務者であり、その知識よりも実践でいかに活
    用するかというところの方が大切で知識そのものに価値はないからです。知識や技術
    の切り売りをするよりも、共有することや教えることを通してニーズを知るというと
    ころの方がはるかに価値が高いです。今もっている技術を全て外に晒すことで、新し
    いことを学ぶ機会になります。技術や知識をどう使うか、多くの人の目に触れること
    で自分の興味以外の範囲から意外な反応が得られることもあり、どのようなニーズが
    あるかを客観視できます。大したことがないから見せても意味がないと思い込まず、
    どんなレベルでも外へ出しましょう。それは無償か有償かといった教育に対する議論
    やビジネス論とは異なります。

  4.他人を説得する前に自分を説得する
    マイノリティとして生きる上では共感者は少ないです。周りを敵対視する必要は全く
    ありませんし、無理に同調する必要もありません。一人で仕事をしたくないのであれ
    ば、理解を求める前に相手にどうしてほしいのかを伝えるのが一番です。伝える相手
    と意見が違っていても、感情ではなく、どういう行動をしてほしいかを伝えましょう。
    自分に自信がないと伝え方が卑屈になって余計に孤立しがちです。

  5.貢献できる場をつくる
    今は多様性の時代です。ぬるま湯につかれというわけではないですが、貢献できない
    理由が環境に起因していないかというところも考えるべきだと思います。仕事を頼ん
    でくれる人がいて初めて仕事が始まります。コンピュテーショナルを実務でまだ使え
    ないけど、どうしても始めたいという場合は自分の課題ではなく、依頼相手がいる状
    態で何でもいいから始めることをお勧めします。

これらの心がけは、先輩方の言葉から学んだものです。くじけそうになったときに、表現の仕
方は違えど、これらの心がけをもって続けるべきだと言い聞かされました。実務者が増えてい
く中で、色々な問題が改善されてきています。数年前よりも確実に働きやすいです。誰よりも
技術的にできる人にならなくても、あなたが続けていることで恩恵を得ている人たちが存在し
ています。

 パラメトリックモデル例の図1

 パラメトリックモデル例の図1


 パラメトリックモデル例の図2

 パラメトリックモデル例の図2

石津 優子 氏

GEL 代表取締役