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コラム

進化する設計組織のためのICTデジタルデザイン技術

2020.04.09

パラメトリック・ボイス            安井建築設計事務所 村松弘治

4月は各組織にとって、新たな目標設定やそれを実践するための組織改編の時期でもあるが、
今年度は新型コロナウイルスへの対応もありまだ本格的スタートを切ることができていない
のではないだろうか。
前回の‐スピンアウトするデジタルデザイン‐でも少し触れたが、この非常事態への対応をして
いると、今まさにICTデジタルデザイン技術が「働く環境」と「業務の目的・コンテンツ」、
そしてBCPを含む「経営」を結び付けることにかなり役立っていることを実感する。
これまでの日常においては、ICTデジタルデザイン技術は様々なベクトルをもちながら、デザ
インや計画における創造力を掻き立ててきたが今回のような非常事態においては、人の安全
を確保しながら業務を継続させる基盤にもなっている。まさに日常からの“ICTデジタル”への
理解と、取り組み・投資への重要性を再認識する。
一方で、まだICTデジタルへの取り組みやシステム整備に苦労している組織も多いと思う。た
だ、このような状況をポジティブにICTデジタル技術への整備に取り組むチャンスと捉えるほ
うが良いだろう。
現在は大変な時勢ではあるが今回はこの窮地を凌ぐ手法の一つとともに将来に向けて求め
られる「進化する設計組織のためのICTデジタルデザイン技術」のあり方について触れてみた
い。

なぜICTデジタルデザインをめざすのか?
最近はCSRやESGを経営理念の基盤に据え置いている設計組織が多くなってきている。コン
プライアンス働く環境省エネ・環境負荷低減、社会貢献、防災、教育への取り組みなどへ
のアクションプランを組織の社会的責任として設定しているが、勿論これらはSDGsへの取り
組みとも一致するところが多い。
世界共通の価値観であるSDGsの目標は「地球上の誰一人取り残さない世界」であるが、これ
は言い換えれば段階的スマートシティ化の実現と解釈することができる。そして、そのための
建築やまちのデータベース化や構築手法はICTデジタルデザインに依るところが大きい。
つまり、組織がめざすべきCSR/社会的責任の飛躍的行動達成へつなげるためには、スマート
社会のプラットフォームづくりには欠かせないICTデジタルデザインへ真剣に向き合わなけれ
ばならないことになる。

ICTデジタル分野が組織を束ねる
ICTデジタルデザインが進むと、コンカレント(同時思考)プロセスにたどり着く。これはこ
れまでの設計組織の在り方の大きな転換を意味する。専門分野ごとの領域を脱して、あらゆる
要素を縦横無尽に絡ませることで、組織の進化が生まれる。ここで重要なのが、柔軟かつス
ピーディなリレーション、そして確実なマネジメントである。その中心にあるのが組織の部門
や領域の情報を統合し、経営に必要なあらゆるデータベースをつなぎ合わせ、選択し、デリバ
リーするためのICTデジタル分野(部門)の存在である。
今般の事態においても、経営-組織-システム‐デタベスが日常からしっかりと成立していれ
ば、縦横無尽にリモートワークやテレカンファレンスなどを活用し、クライアントとの関係継
続やプロジェクト進捗に多彩なアクションプランを取ることができると証明された。このよう
に組織におけるICTデジタル分野(部門)は、クライアントリレーションとプロジェクトソ
リューションの領域を束ね、もはや経営を支える中心的機能になりつつある。

ICTデジタルデザイン技術統合のめざすところ
ICTの進捗において組織が実践しなければならないことは関連するスキルの醸成ICTスタン
ダードやプロセスの整備とレベルアップであろう。これらは地道に整備する以外に道はないと
思うがもう一つ大事なのは様々なソリューションとその過程で醸成されたICTデジタルデザ
イン技術を統合し、次のステップに着実に展開し、向上させることであろう。
ここで一つの例を示そうこれはとちぎ建築プロジェクト2019-マロニエBIMコンペテ
ン‐における取り組み<未来のにぎわいをつくるBIM>である。
今まで培ってきた様々なBIM技術の統合とコンカレントプロセスにより、時間的ロスを解消し
つつ成果品質を高めることに成功しているこれは3Dから4Dへのチレンジでもあった。
また、BIM情報を整理したビッグデータ化から、仮想空間の中で将来の計画上の変化予測も可
能にしている(下図)。
現況の成果のみならず、将来への展開を予測する。これこそが組織にとってのSociety 5.0 for
SDGsへつながるICTデジタルデザイン技術統合のめざすところだろう。

進化するICTデジタルデザイン―ソリューションとしての点をつなぐ―
社会の変化のスピードはとても速い。これからは、この速い潮流の中で、当たり前のように、
その時々の最適最高のソリューションが求められるだろう。これに応えるためには、前出の
マロニエBIMコンペティションの取り組みのように、さまざまな過去のICTソリューション結
果(点)を線で結び付け、それらを未来につなげるプロセスや技術へ更新し続け、進化する
ICTデジタルデザインの世界に踏み込まなければならない。この作業は日常においてもICTデ
ジタルデザインの新しいベクトルの発見とともにベクトルを多彩化し、大きな進化に導く原
動力にもなる。とても興味深いプロセスでもある。
一方で、今般のような非常事態には、その時々の社会状況下での最適なアクションプランで、
早期の社会回復にも寄与することもできる。窮地にある今こそ、進化する設計組織の経営に
とって大きな支えになりつつあるICTデジタルデザイン技術をもう一度見直し、再構築する良
い機会にすべきではないだろうか。

村松 弘治 氏

安井建築設計事務所   取締役専務執行役員   東京事務所長