Magazine(マガジン)

コラム

変革の山は動くか

2020.07.07

ArchiFuture's Eye               ARX建築研究所 松家 克

日本でもコロナは未だ終息には至っていないが、6月19日に移動自粛が産業と経済とのバラ
ンスを図りながら大幅に緩和され、パンダにも会えるようになった。これからは自衛・防御に
踏み足を変えるが、東京の状況は流動的であり、第2波の感染拡大となるのか、今後を一喜
一憂している。今は、不確実性を孕みながらの対応であり予断は許さなれない。自分も含めた
全ての人がウィルスの運び屋であり、マスクをしないとゴジラのように口から火炎のような
ウィルスを吐き出しているかもしれないことを肝に銘じたい。
皮肉なことに経済が止まった武漢では、一時的に大気汚染が半減しているという。一方、世界
の感染者累計は6月28日に1,000万人を超えた。依然として拡大が目立つのは、アメリカや中
南米、南アジアなどであり、まだまだ感染者が日々増え続けている。片や新型コロナウィルス
の厄介で悩ます特性が徐々に研究者の努力で解明しつつあり、ワクチンの開発も急ピッチで進
められている。大いに期待したい。

未だにコロナ渦中ではあるが既に行動の新スタイルが生まれつつあり、魅力的な試みもある。
ホンダの八郷社長は、Zoomで600人の新人社員と大規模対談を実施。大学を始め教育機関
でもオンライン授業が定着しつつあるという。ビジネスではリモート会議や在宅ワークが
き方改革と歩調を合わせるように進捗が著しくなっている。小生が関係するムサビの卒業生の
会や大学の役員会のリモート懇親・会議が常態化している。JIAでもリモート会議などの変
革が急ピッチで進められ、巷間では無人ホテルもロボット対応で新形態の営業を始めた。防御
服で身を固めた一団が、コロナ後初めてベトナムに向った。成田、関空、羽田の3空港では、
PCR検査用施設と体制の構築を急ピッチで進めているという。一方、テレビで見るマスク姿で
将棋を指す藤井聡太七段に何か癒される。ベランダ野菜や地方志向が強まり、オンラインによ
る“二足のわらじ”の副業も活発化。多種多様なピンクなどの色と形態のマスクも登場。ロンド
ンでは300年の歴史を持つパブも再オープン。
ドイツやスペインのサッカーリーグも復活。日本でもJリーグやプロ野球のペナントレース、
女子ゴルフなど各種のスポツ行事が無観客やライブのスタイルを変化させて始まりつつある。
歌手の加藤登紀子さんは6月28日に渋谷のBunkamuraオーチャードホールで、客席を定員の
半分以下となる約1,000人に制限し、コロナ感染対策を徹底した上でコンサートを開催した。
スパリゾートハワイアンズや花屋敷、日光の江戸村などが開園し、7月1日にはファンにとっ
て待ちに待ったディズニーランドが、スタイルを変えて四カ月ぶりに開園している。今後は、
慎重なモニタリングで経済活動とバランスさせることが、非常に困難だろうが不可分と考えて
いる。
拡大する在宅ワーク状況の確認をマウスの動きで行っている企業があるという。そこで、飲み
仲間達が猫やフェレットの“ランちゃん”にマウスを括り付けて様子を見たりしたという。結果
は猫やフェレットが眠ったり動かなかったりで、結局NGだったようだが、猫にマウス=ネズ
ミ?少し洒落っぽく、何だかホッとし癒された。

歴史を振り返ると14世紀のペスト流行後には、文化、芸術で新潮流のルネッサンスが起こり、
絵画、音楽、文学、科学、経済、商業、政治、思想などあらゆる分野に影響を与えている。併
せ、政争、戦乱など波乱の時代でもあった。彫刻や絵画の分野では、ミケランジェロ、レオナ
ルド・ダ・ビンチ、ラファエロなどが活躍している。封建社会と宗教中心の世界観の束縛から
人間性の自由と解放を掲げ、近代社会に繋がっているが、ペスト後の大きな変動である。
1800年代には疫病のコレラがパリ中に拡がった。この後にパリの大改造がナポレオン3世
の構想のもとに、都市景観にこだわりのあったセーヌ県知事のオスマンよって実行されている。
このパリ大改造は、近代の都市計画や建築計画に大きな影響を与えることになる。
第一次世界大戦中の1918年に端を発したスペイン風邪は、人類史上最悪の死者数と言われ、
軍事行動中の兵隊の多数が感染し、結果、第一次世界大戦を終わらせる大きな原因になったと
もいわれている。
このように歴史上では、感染症のパンデミックスの後には大きな変革が起こっている。
歴史から学ぶとすると、この新型コロナウィルス後は、大きな変革の節目かもしれない。注意
深く情報をキャッチしたい。電話の開発時には、人と会わずに済むとの考えもあったようだが、
返って人に会う機会が増えたという。今後、一層のリモート化が進むと人と会い集まる重要度
がさらに増し、リアルな集まり方も変化すると考えられ、新しい動きがあるのではないかと考
えている。

テレワークによる地方移住者の増加。これに呼応するように、ARXが本社を設計したカル
ビーは、全業務を原則としてテレワークとした。南は九州から北は北海道まで、広い範囲で農
家や工場、冷温倉庫などを持つ企業として、今回の決断は納得できる。トヨタもリモートワー
クの本格的な拡充に踏み切るという。今回のリモート経験を踏まえ、今後、東京一極集中から、
爆発的な地方分散があり得ると考えられる。片やサイバーリスク対応の課題もある。
自粛期間の在宅ストレス解消にアートワークが果たす効果が大きいことを確認出来、このコロ
ナを機会に絵を描くことを始めた人も多いと聞く。世界のストレスの爆発をアートが解決する
可能性も高いかもしれない。バーチャルギャラリーも開設されている。
今後のレジリエントの重要な一つとして、ポストコロナで積極的な人の集まり方をどうするの
かの英知が必要であり新スタイルの創出があるのではないか、とも想像している。ただ、創造
的発想には、人とリアルに集まり検討協議することの重要性が改めて認識できた。そこで、
バーチャルとリアルのコラボはどうすれば魅力的で有意義なのか、人が集まることとは、の意
義や新しい方法を模索してみたい。まさに今が過去の慣習や柵をぶち破る機会でもあり、この
コロナで変革の大きな山が動くかも知れない。
この秋のArchi Future 2020に人が集まることの意義も含め、バーチャルとリアルの新しい狭
間を探りつつ、独創的で魅力的なイベントは何か、問いかけながら委員会がスタートしている。

コロナ禍中で次世代に向けたニュースが流れた。理化学研究所と富士通による「富岳」が完成。
世界一の計算速度を達成したという。次世代の活躍が期待出来、コロナ対策の有効活用も期待
している。併せ、中国版GPSの北斗55基の衛星が開発着手から数年を費やし、この6月に最
終打上げが完了しシステムが完成。120カ国での利用が進んでいるという。キナ臭ささも感じ
るが、これらの国の人々の生活支援に役立つことを願っている。

最後に、在宅ワークの環境が整っていない小生は、みかん箱ではなく段ボール箱の上でキー
ボードを叩いている。ポストコロナの在宅環境が如何に貧弱であるかを思い知らされている。
今後は日常生活で在宅ワークが占める割合は大きくなり、住宅設計では重要なファクターとな
るのは必須と考えられる。
夢のまた夢の話だが、噴霧するとウィルスが光り、特殊カメラで見える化できるスプレイ式検
査薬が欲しい。誰か開発して~~~。

           フェレットのランちゃんとマウス

           フェレットのランちゃんとマウス


松家 克 氏

ARX建築研究所 代表 /  武蔵野美術大学 評議員