Magazine(マガジン)

コラム

インターンシップと13歳のハローワーク

2020.09.09

パラメトリック・ボイス               前田建設工業 綱川隆司

9月になりました。今年はコロナ禍のため、いつもより物足りない夏だったと感じています。
Withコロナという言葉が相応しく、当社でもテレワークを推奨しており出勤してもオフスは
閑散としています。そんな状況下ですが今年もBIMマネージメントセンターでは2名の大学生
のインターンシップの申し入れを受け、ちょうど現在実施中です。例年8月下旬から9月上旬に
かけて行っていますが、この時期は学業への影響も少ないらしく実施する例が多いと聞いてい
ます。
インターンシップは、ご承知の通り、学生が一定期間就業体験をする制度です。経団連がもと
もと「5日以上」としていたインターンシップの最低日数要件を、2017年の夏から無くし、
「1dayインターンシップ」を取り入れる企業も急速に増えました。ただし2020年春に、大学
と経団連の協議会は一転、1日だけの就業体験「1dayインターンシップ」を認めないことを決
めました。インターンシップと言いながら会社説明会に過ぎないケースが多く、企業の採用活
動に利用され学業の妨げになっている、との批判に応えたとされています。コロナ禍に突入し
た現在、企業の採用活動も大きく変わっており、対面イベントの中止、説明会のオンライン化
など、例年と勝手が異なり学生の就職活動へのストレスもはかり知れません。大人の都合では
なく是非とも学生本位の方針であって欲しいと思います。

当部門では例年この時期の月曜日から始めて翌週の金曜までの延べ10日間で実施します。内容
を紹介しますと、オリエンテーションの後にBIMに関する座学と操作に関する講習を実施し、
そのあとは業務体験と課題実習を並行で行います。ICI(技術研究所)と施工中の現場見学まで
は昨年も実施しましたが、今年の特徴は一部テレワークを織り交ぜたことです。実物件は情報
セキュリティの観点から避け、その時間は課題実習を割り当てましたが、Microsoft Teamsを
使って実務と同様の会議・プレゼンを実施しています。テレワークについてはコロナ禍による
一過性のものではなく今後も生産性向上を目的とし常態化すると考えておりインターンシ
プが企業や業務を理解することが目的であるならば、BIMだけでなくリモートでの業務を経験
することもこれからは必要でしょう。

自分自身が学生であた1990年頃を振り返ります。私は幼少から絵を描いたり模型を作たり
するのが得意でしたので、漠然とではありますがデザインの世界への憧れはありました。祖父
が建築、父が自動車の業界だったので大学進学は案外いい加減で建築学科と機械学科の両方を
受験しています。結果祖父と同じ大学の建築学科に進学し、当時インターンシップという制度
は利用した記憶はありませんが、アルバイトでアトリエ系の設計事務所やゼネコンの設計部に
通っていました。そこでの経験は今の自分を構成する上で重要な要素になっていると思います。

ふと気になり、今の高校生がどんな職業に就きたいのか調べてみました。ネットで検索できる
「なりたい職業ランキング」にはいろんなものがあるのですが、私はコロナが与える影響を知
りたくて最新のものを探しました。対象の年齢層を小学生や中学生に下げると結果はカオス状
態で、「YouTuber」や「プロeスポーツゲームプレイヤー」が上位です(もし自分が転生して
小学生ならばそれも悪くないか…)。逆に年齢層を上げて大学生の調査になると、職種や業界
というより具体的な企業名のランキングになります。就職というより就社ですね(大きい企業
になればなるほど、入ってから何をやらされるのか分かったものじゃないよ…)。
高校生を対象にしたスマートフォンのWeb調査、ちょうどいいのがありました。

将来、何になりたい?高校生のなりたい職業ランキング
第1位:公務員(男子)/看護師(女子)
第2位:SE・プログラマー(男子)/教師(女子)
第3位:教師(男子)/公務員(女子)
(出典元 LINEリサーチ 調査期間 2020年8月17日~8月19日) 

公務員や教職が上位にあるのを、社会が混乱している状況下において安定を求めていると読む
のは打算的なオトナの邪知であり、看護師や地方自治体における災禍への対応を見聞きし、現
在の混乱した教育現場の実体験から、高校生は純粋に「これからどこに人的リソースが必要で
あるか」を察知しているのではないかと私は推測します。

現在中学生2年生の娘の夏休みの宿題で、「親の職業調査」というインタビューを受けました。
少ない設問の中から私は「会社員」というステイタスと「建築士」というスキルのキャラク
ターに分類されるのですが、その際に私が残した「社会に出てからも勉強は終わらないよ」と
いう発言がフックになったのか、授業再開後にその真意について追加質疑が来ました。再回答
としては「設計する建物用途が変われば再勉強が必要となるし、建築基準法も大きな災害があ
れば改正があるので都度学習しなければならない」としたのですが、実感覚としても、歳を重
ねて成熟したなあと思うことより、仕事をすればするほど自分が無知であることを自覚するこ
とになる印象の方が強いです。建築というプロジェクトベースの業務の宿命で、毎回条件の異
なる状況下に放り込まれ、様々な人とパーティを組んでこれにあたるのですが、一つのミッ
ションをクリアするとさらに難易度の高いミッションを充てがわれます。自分のレベルアップ
を実感できる余裕も無かた気がします。刺激的で飽きることはないですがこれもHP(体力)
が続く限り、でしょうか。

インターンシップの話に戻ると、参加日程が長い場合は満足度や就職志望度が低下する傾向が
あるそうです。企業の実情を知ってもらうことはその企業自身には必ずしも良い結果が得られ
るとは限らないということですがこの10日間を通じて業界の実情を適切に理解してもらえる
のであれば、学生本位の考え方ではポジティブな結果だと考えています。

 写真はインターンシップ中のリモート会議の様子。テレワーク中に行う課題実習のエスキース
 風景です。

 写真はインターンシップ中のリモート会議の様子。テレワーク中に行う課題実習のエスキース
 風景です。

綱川 隆司 氏

前田建設工業 建築事業本部 ソリューション推進設計部 BIMマネージメントセンター センター長