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コラム

BIMの次世代プラットフォームとは

2020.12.15

パラメトリック・ボイス      ジオメトリエンジニアリングラボ 石津優子

HyparというAECテックのスタートアップをご存じでしょうか。Hyparは、AutodeskでRevit
の主な開発に従事した経験やGoogleで働いた経験を持つ方、建設界隈でのソフトウェア開発
のバックグラウンドを持ち20年以上ジネラテブデザインの経験を持つエンジニアたちが
始めた建設のための次世代プラットを提供するサービスです。私がHyparを詳しく知りはじめ
たきっかけは前職でWeWorkという不動産テックでデザインテクノロジストとして働いてた
頃の、同僚のAnderw Heumann氏、Serena Li氏の2人が参加したことです。彼らは、
WeWork時代にも社内用のBIMをビジネスに活かすためのコアとなるシステムを開発しており
そのリサーチや技術は他のメンバーの中でも群を抜いていました。彼らが働く場所に選んだ
サービスとはどんなものなのかと興味を持ち、この半年間は開発の動向をリアルタイムで
TwitterやSNSで情報を得ています。その凄まじい開発スピードにいつも驚きながら、今後の
AEC界隈の明るい未来を期待しており、今回はそのサービスのビジョンを共有したいと思い
ます。

12月5日、私が主催しているTokyoAECIndustryDevGroupというAEC界隈のソフトウェア開
発のためのミートアップにAnderw Heumann氏を招いてプレゼンテーションとハンズオンを
お願いしました。コンピュテーショナルデザインの主要なツールであるGrasshopperという
グラフィカルコーディングを使っている方でGrasshopperコミュニティに属している人だと
Anderw Heumann氏を知らない人がいないスーパースターです。Human UIやMetaHopper
などの人気プラグインを開発した方です。WeWorkではリサーチーとしてオフスの自動レ
イアウトツールなどを作り論文を発表しておりAECテックのエンジニアとして世界的に有名
な方です。その人が私たちのミートアップに来たということでそれだけでとても感慨深い会
でした。

そのプレゼンテーションで、非常に強く共感した内容として「ソフトウェア開発の発展の仕方
をAECテックでどのように応用するのか」という話です。コンピュテーショナルデザイナーと
してコーディングやスクリプトを書いたことがある人達は経験していることですが一回書い
たコードをプロジェクト内のみで自分が使うだけで終わらせるのではなくて汎用的な他の人
にも使える形で提供したいという思考です。同じようなプログラムを何回も違うプロジェクト
で求められることは多くあります。それをどのように組織や業界全体として使える形にするの
かという課題です。RhinoやRevitといったソフトウェア上で動くスクリプトを書いた場合は、
そのソフトウェアのプラグイン開発でそれを実現する方法があります。ただそれもそれぞれの
PCの環境依存やバージョンなど管理する上で様なハードルがあります。またモデル自体も
ソフトウェアによってフォーマットが違い、IFCというフォーマットもありますが重たいデー
タ形式なのでクラウドで扱うデータとしては最適とは言い難く、独自にデータベース構築を
する必要がありそのため誰でも気軽にアルゴリズムやロジックを共有するというのが難しく
なっています。一方ソフトウェア開発では誰かが作った信用度の高いフレームワークやライ
ブラリを使って自分のサービスをつくるのは一般的で一から自分で書いているコード自体は
非常に少ないです。

それらを考慮して、HyparはRevitやRhino、Grasshopper、Excelなど建設界隈での主要ツー
ルをひとつのプラットフォームに入れる仕組みを作っています。独自のAPIをつくり、開発者
がそのプラットフォーム上でロジックを組んで共有することも可能です。サービス自体は
まだ始まったばかりなので、プラットフォームとしてどこまで発展するかはわかりませんが、
思想として、コンピュテーショナルデザイナがよりロジックを組む方に集中でき、世界中にそ
のロジックを共有できるというところは夢があると思いました。建設界隈で長年従事する開発
者が主体で作ったサービスなので、コンピュテーショナルを携わる人たちが楽しめる仕組みが
多くありました。

ぜひ皆さんも使ってみてはいかがでしょうか。


石津 優子 氏

GEL 代表取締役