Magazine(マガジン)

コラム

電気の気軽なBIMの始め方

2021.02.18

パラメトリック・ボイス                 日本設計 吉原和正

設備BIMというテーマで色々なチャンネルで発信してきましたが、その時に「設備の話は分か
るけど、電気はどうなんですか?」という質問を良く受けることがあります。なので、今回は
電気BIMに特化してコメントしたいと思います。

とは言え、私は空気調和設備と給排水衛生設備を専門とする設計者で電気の専門家ではない
ので、多少ピントがずれているかもしれませんが、BIMをどう捉えると良いのか、そのきっか
けに読んで頂けると幸いです。

電気でどうBIMに取り組むべきなのかを考える時に、まず疑問として出てくるのが、電気は必
ずしも3Dである必要はないからBIMをやるメリトが見いだせないという点があると思います
これは前々回の2020年9月29日のコラムでも触れていることですが電気のことだけを考え
ればBIMは必ずしも3Dである必要はなくBIMソフト上で2Dで活用して属性情報だけ利用す
るのが最も効率的で意匠や構造との調整を考えなければ電気にとってBIMは2Dによるデー
タベース活用で十分である、と思っています。

電気の立場に立った時に、更に言えることは、機械設備や意匠の担当がBIMソフト上に、機器
や照明器具等の配置とこれに必要な電源情報を入力してくれることで、BIMに一元化された電
源情報を電気の方はただ利用すればそれで充分BIMのメリットを享受できるはず、ということ
です。
ここまで言ってしまうと、電気は必ずしもBIMユーザーである必要はなく、ノンBIMユーザー
としてBIMソフトから表計算ソフトに書き出されたスプレッドシートを使えば良いのではない
かという意見もあるかもしれません。
これはコスト担当者がBIMを利用する必要があるのか?という話と似た構図だと思うのですが
必ずしも意匠や機械設備の担当者が、電気のためにだけ必要となる属性情報までをわざわざ入
力してくれる訳ではないので、電気目線での幹線系統や盤ゾーニングなどの追加情報は、最低
限、電気の担当者が付け加える必要はあるのではないかと思います。
ただ、そのちょっとした追加情報をBIMソフト上で付け加えさえすれば、電気が必要とする理
想的な情報が整えられる可能性があるので、それだけでも電気がBIMを活用するメリットはあ
るはずだと思っています。
 
また電気の宿命と言うか、置かれている状況として意匠、構造、機械設備が決定したあと
一番最後にならないと作業に着手できない状況にあると思うのですが、BIMソフト上で一元化
されたデータに多少早めから加わりコンカレントに関与することができれば、電源情報確定を
待たずに、ほぼほぼ情報が揃いつつある段階で電気計画に着手しはじめることもできるのでは
ないかと思いますし、電源種別や電圧など、電気が考えるあるべき計画に沿わせることもでき
るのではないかと感じています。
 
この電源情報の取得のような、電気が受け取るデータをBIMを介して行えるようになれば、
次のステップとしては、逆に受け渡すデータもBIMを介して行うことも可能になるはずです。
例えば、構造への荷重登録や、ラックや盤など平面プランや断面調整に必要なものを電気も
BIMで登録し情報共有できるようになれば、本格的なBIM活用に着手したと言え、電気図面も
BIMで作成する道も開けてくるはずです。
 
BIMは3Dである必要はなく2Dでも活用できると割り切れば照明器具やコンセントスイ
チなどの器具類に2Dのシンボルを仕込んでおいてBIMソフト上に配置して集計表で数量を
管理するような使い方に限定すれば、平面図とリストの整合確認や、積算数量の把握、電源容
量の集計など、電気にとってもメリットがある使い方ができます。あとは、BIMソフト上で単
線(詳細線分や配線)で2D加筆すれば幹線動力平面図や電灯設備図などの電気図面の作成
を行うこともできます。
 
このようにBIMソフト上で2D的に利用することで今までのCADと表計算ソフトのスキル程
度で、電気もBIM活用が可能になるはずです。
 
電気がBIMに尻込みするもうひとつの壁として、そもそも電気がBIMを活用しようにも、メー
カーからBIMオブジェクトを提供してもらえず必要な部材が揃っていないため、BIMに着手す
らできないという問題も聞こえてきます。
電気用のメーカーオブジェクトとなると、何万種類の部材が必要になり、それが揃うのはいつ
になることかわかりませんしそもそも何万種類もあると、そこからどう選んだら良いものか
迷子になってしまうのではないかとも思われます。
詳細な3D形状を要求せず、2Dシンボルと主要な属性情報で、器具種を判別できさえすれば
十分活用可能なはずですし汎用的な電気用のジェネリクオブジェクトも揃いつつあるので
電気がBIMに着手する環境は整いつつあります。
 
また、照明器具メーカーを中心に、メーカーのオブジェクト配信も始まっていますし、光環境
シミュレーションの活用や、照度計算なども可能になって来ています。
 
具体的な電気でのBIM活用については、2021年2月25日に開催の「設備BIM最前線vol.3」で
主要テーマとして取り上げられる予定です。ビジュアルプログラミングのDynamoに関する
テーマも同時開催され、電気の方向けのイベントにもなっていますので、是非参加してみて
下さい(下記より登録可能)。
設備BIM最前線 建築設備向けウェビナー Vol.3 進化が止まらないRevit MEP
 
今回で3回目となる「設備BIM最前線」ですが、これまでの内容は下記から視聴することも
可能ですので合わせてご覧頂ければと思います。
オンデマンド配信ページ | 設備BIM最前線

まだ、電気が求める理想的な機能がBIMで実現できている訳ではありませんが、少なくとも電
気がBIMに取り組み始める環境は整いつつあります。そろそろ、最初の一歩を歩み始めてみて
は如何でしょうか。

吉原 和正 氏

日本設計 プロジェクト管理部 BIM室長