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コラム

建築BIMの時代11 BIMとFMの連携

2021.02.24

ArchiFuture's Eye                 大成建設 猪里孝司

最近、BIMに関する二つのイベントに参加した。2月12日、18日に開催された建築BIM推進会
議の環境整備部会と2月17日に開催された建築学会の「BIMの日シンポジウム」である。環境
整備部会では2日間にわたって「BIM を活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事
業」に採択された2事業の中間報告があった。8事業のうち7事業がライフサイクルでの活用や
維持管理や運用での活用の効果検証を掲げている。建築を利用している段階でのBIMの活用に
期待が高まっていることも表れだといいたい。それぞれの事業が計画に沿って実施され成果を
上げているようにみえた。この事業の成果は、筆者が考える「BIM本来のすがた」に近づくた
めの貴重な資料となるとはずである。最終報告が楽しみである。

一方維持管理段階での効果の中で中期や長期の修繕に関わる部分の効果検証の困難さが指摘
さていた。維持管理段階でBIMを活用するためには、発注者または維持管理業務の関係者が、
BIMモデルを入手もしくは利用できるようにしておく必要がある。そのための費用は誰が負担
するのかという点が常に問題になる現状の建築生産システムの中ではその費用は標準外の費
用とされ、その都度費用の負担者と費用対効果が問題になる。効果がすぐに表れ検証可能な場
合は問題が少ないが、効果の出現が数年先、下手をすると15年先、20年先と言われると費用
を負担する方は二の足を踏む。JFMAのBIM・FM研究部会でも常に話題に上がる。事例が少な
く、なかなか一歩を踏み出せない状況が続いている。国交省のモデル事業がその突破口になる
ことを期待している。

JFMAのBIM・FM研究部会ではBIMはFMに有効なのかという議論している。テーマは都度異
なるが、海外はどうだろうかという話になることもある。出羽守にはなりたくないが、海外の
事例は参考になる。
米国は、日本に比べ早くからBIMとFMが連携することの効果を認め、それを推進していた。
彼我の違いの一つにCMMS(computerized maintenance management system:設備保全
管理システム)の建築分野での利用の差があるのではないかという話になった。米国では、建
築の維持管理でCMMSが利用されており、BIMモデルがCMMSの建物情報の初期値として利用
することで効果があるようだった。この背景には、米国では実際に保全作業を行う作業員と管
理者の職域が明確に分離されており、作業員は管理者の指示にある作業しか行わないので、管
理者が作業指示を行う必要がある。特に、事後保全の場合は即応性が求められるので、管理者
から作業員への的確な指示が必須でありCMMSの必要性が高かった。一方、日本では作業員の
レベルが高く、細かな作業指示がなくても作業員のノウハウと経験で適切に対応できるので、
CMMSの必要性が低く日本ではあまり使われていないという結論になった。日本の建築分野で
CMMSの利用が活発になったという話は聞かないが、予防保全ニーズの高まりやDXやビッグ
データ活用との関連から保全情報の価値が高まると思われる。それがBIMへのニーズにつなが
ることを期待している。

英国の事例を調べた時、BIFM(英国ファシリティマネジメント協会)が2013年に発行した報告
書に出会った。BIMとFMの間の溝を埋めようというもので、2012年10月にBIFMの討論会の
結果をまとめたものである。ちうど英国政府がBIM活用を宣言したことを受けてのものであ
ファシリテマネジャーの戸惑いがあることが分かるがそれ以上にBIMをFMで活用する
ためにファシリテマネジャーが何をすべきかという議論が非常に参考になったことを思い出
した。今の日本の状況と似ている点が多ある再読してみようと思う今でもこちらのWeb
サイト
からダウンロードできるので、興味のある方はご一読いただきたい。

「BIMの日シンポジウム BIM の再定義~ BIM って何でしたっけ?」でも刺激に満ちたお話
をお聞きした。少し遅くなってしまうが、次回にその感想を書かせていただこうと思う。

     英国ファシリティマネジメント協会が2013年に発行した報告書の表紙

     英国ファシリティマネジメント協会が2013年に発行した報告書の表紙

猪里 孝司 氏

大成建設 設計本部 設計企画部 企画推進室 室長