Magazine(マガジン)

コラム

あなたのBIMデータは生かされていますか?

2021.02.26

パラメトリック・ボイス
              スターツコーポレーション /
Unique Works 関戸博高

あなたのBIMのデータは組織的に活用できているだろうか。上手くいているところもあるが
上手くいっていないという声も相変わらず多い。それは何故そうなのだろうか。そんな事を考
えていた折、建築学会主催BIMの日シンポジウム「BIMの再定義〜BIMって何でしたっけ?」
に参加し、触発されたことが多くあった。それを参考にしながら、今回はBIMの活用の不具合
が生じる原因がどこにあるのかを追いかけてみたい。私の問題意識は、その不具合はBIMの問
題ではないのではないかというところにある。
いずれにしてもここでは、二つの視点からこの行き詰まりを見ることにしたい。①社会的と
②組織(企業)的の二つの視点である。実際はそれらが複合して、様々なことが現象している
のではないか。
 
1.社会的存在としてのBIM


この船(BIM丸)の絵は、私が持っているBIM的世界についてのイメージである。<BIMの
データ>は海に浮かぶ船の貨物のようなもので、その船は建設業界、経済、社会・文化、国境
を越えた地球環境の大海原に浮かんでいる。BIMはデータであることに価値がある。大きなス
ケールで社会的に生かされ役立ってこそ意味がある。逆に言えば、一つの企業内において、
BIMを使って図面を作るという範囲の活用では生産効率からいって行き詰まらざるを得ない
BIMを扱うということは、必然的に社会という大海原に乗り出すしかなく、その為には
経営(ヒト・モノ・カネ)をデータ活用優先型に再構築することが必要になる。このことは長
らく言われ続けているが、建設業界においては、未だ真剣に受け止められていないように思え
る。コロナ禍で露出した日本政府のデジタル上の不完全な対応は、他人事ではない。それはそ
のまま鏡に映った自分たちだ。
組織的な視点で見ると、BIMの活用例として、最近マスコミが成功していると持ち上げている
ものがある。しかし私には日本の建設業界が多額の資金を使い、従来から演じてきた閉鎖的な
企業間競争の自己主張に過ぎないものが多いように感じる。そこでは各企業において無駄な
二重投資がなされているのではないだろうか。
ここでちょっと待てよと、私は思う。組織的に見るとそもそも日本の建設業界には、この大海
原を無事に運行するための経営・組織・人材育成論が蓄積されて来ていないのではないか。な
らば、次に述べる3つのエンジンのコントロールは困難にならざるを得ない。
 
2.BIM丸に必要な3つのエンジン
大海原を渡る船には性能の良いエンジンが必要である。BIM丸の推進力は、3つのエンジンか
ら生み出される。


3つのエンジンの役割は、以下のようなことだ。
① 経営のエンジン:経営戦略戦術ヒト・モノ・カネの投入量とスピード人の育成・組織運
  営・生産性をどう高めるかなどを受け持つ。
② ビジネスのエンジン:営業戦略戦術。未だ存在しないマーケットを生み出し、課題解決のた
  めにBIMのデータを使った新サービスを提供する仕組みを考え、実行を受け持つ。
③ ICTのエンジン:BIMの心臓部。どのようなテクノロジーを使い、データを加工し効率良く
  サービスを提供するかを受け持つ。
 
大事なことは3つのエンジンのバランスである。だが、これはそう簡単にチューニングすれば
良くなるというものでもなさそうである。何故なら日本の建設業は、一千年を超える歴史があ
り、何が求められ何をすれば良いか、暗黙の中で分かる風土の中にある。特に戦後は75年の
長きに渡って、紆余曲折があったにしろ、建設会社が建物を作ることは自明のことであり、長
い成功体験であった。従って、自らマーケットを作りだす必要もなく、建築物を優れた品質で
安く作ることに専念すれば良かた。経営者もこの環境で育った建築技術者がほとんどであり
大学教育を含め目に見える建物造りに囚われやすい育ち方をしてきた。この歴史を背負って今
の建設業があり、そこで働いてきた人々がいる。このことが残念ながら3つのエンジンのバラ
ンスをとることを難しくしている。成功体験が変革のための目を塞いでいる。BIM周辺の不具
合からの脱皮は、日本の建設業が、この歴史的環境と自らを自覚するところから始まるといっ
ても良いのではないか。
 
3つのエンジンの視点から、今までとこれからの対比をしておきたい。
・経営的には、従来のままではBIMの本質がデータと認識されず、設計や建物を造るための作
図の道具としてしか扱かわれない。その為に人・組織の採用・育成・形態が、従来の延長線で
しか発想されない。従って、副業・出向のような働き方を含め、いかに外部の優秀な人と連携
を取れる組織にするかということにはなりにくい。データ活用は先ず個人の能力にくっついて
繋がり出し、それをひとつの方向へ束ねることで推進されていく。そのことを理解することが
最初の一歩だと思う。そういう環境を作り出すことが、経営の役割になる。
・営業的には行政も含め建築物を建てる顧客が常に存在することが前提の営業環境だった。
マーケットを自ら創り出すという必要はなかった。これからは、例えば建物をどのように使っ
てもらうかというサービスを、BIMのデータを使って作り出し、それを良しとして受け入れる
マーケットを作り出すことが必要となる。
・ICTの利用面では、企業間競争の武器として採用されることが目立って来ていると述べた。
例えば最近の大手建設会社の大型投資物件に使われる「統合的ビル管理システム」がそれだ。
よく調べた訳ではないが、多分同じようなことを同じようなサプライヤーを組み合わせて構
築しているのではないだろうか。業界が協力してプラトフームのためのOSを造るという
考え方は出来ないのだろうか。それも狭い日本だけでなく、既に発展途上にある東南アジアの
巨大なビル群にも通用するシステムを目指せないだろうか。お互い消耗してしまう前に。
 

関戸 博高 氏

スターツコーポレーション エグゼクティブアドバイザー / Unique Works  代表取締役社長