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コラム

時代を導く変革

2021.03.16

パラメトリック・ボイス 

             アンズスタジオ / アトロボテクス 竹中司/岡部文

岡部  つい先日の3月3日、火星への有人飛行を目指しているスペースXは、開発中の巨大宇
    宙船スターシップSN10のテスト飛行を行った。「宇宙船、またも着陸後に爆発か」
    と書かれたニュースのヘッドラインとは対象的に、彼らの見解はあくまでも
    「successful failure」だ。次々とイノベーシンを生み出す彼らにとての成功とは
    目的ある実証実験から、何をどれだけ学べるかで測られている。

竹中  実際、スターシップは失敗を重ねるごとに着実に進化しているね。先日の実験では、
    高度10kmまで上昇した後に機体を地面と平行に倒して下降その後ベリーフロ
    を行て再び直立姿勢に変えてからなんとか着陸を成功させている。2016年に構想
    を発表してから、わずか5年も経たないうちにここまで実現しているのだから、その
    開発スピードは驚異的だ。

岡部  こうしたイノベーティブな技術進化の過程は、繰り返される概念実証と失敗を許容す
    る開発プロセスによって支えられている。概念実証とは、Proof of Concept(PoC)
    のことを言い、新しい概念やアイデアが実現可能であることを検証することを目的と
    した実験的な実証のことを指す。

竹中  このスターシップの開発においても、従来の規範を変えることに大きな苦労をしてい
    るようだ。実験の成功を確実に保証したテスト飛行しか承認をしない、という航空局
    のルールに疑問を呈し、失敗を容認する環境を作ることで開発期間を短縮する。その
    結果、成功へと早く導くPoC型ビジネスモデルが、国を上げて実践されているように
    感じる。

岡部  そうだね。最先端の技術開発では、どれだけ概念実証を繰り返すことができるかが、
    勝敗を大きく左右する。実践で大切なのは、成功する技術を試そうとする受け身の姿
    勢ではなく、目的に対して不完全なものを検証しようとする進歩的な姿勢だ。

竹中  そう、我々が取り組んでいるロボット開発においても、そうした視点を強くもって遂
    行している。ロボットと聞くと、「何でもできる夢の道具」と捉われがちだが、実際
    は成長過程の子供のような存在で、幾度も失敗を重ねながら成長を促す「successful
    failure」によって支えられている。失敗を修正する経験の積み上げこそが、成功を導
    く開発なのである。
 
岡部  建築界において、ゴールでの失敗は許され難い。しかし設計思考や施工プロセスの過
    程において、失敗を容認しながら進化する建築論が、新たなるイノベーションをもた
    らすかもしれない。今日のデジタル社会では、「アップデート」を繰り返すことが常
    だ。今や完成形に対する安心感は払拭され、むしろ不完全さにこそ、進化を許容する
    安定感をもらしてくれると言えるだろう。
 
竹中  ロケットやロボット、未来を築く新しい技術は、決して魔法のようなものではない。
    人類が誕生してから繰り返されてきた実験と失敗によって、絶え間なく進化する知恵
    の結晶なのだ。時代を導く変革は失敗を容認し、同じ失敗を繰り返さない英知によっ
    てのみ、イノベーションの成功を測ることができるにちがいない。

 ※上記の画像をクリックすると画像の出典元のSpaceXのWebサイトへリンクします。

 ※上記の画像をクリックすると画像の出典元のSpaceXのWebサイトへリンクします。

竹中 司 氏/岡部 文 氏

アンズスタジオ /アットロボティクス 代表取締役 / 取締役