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ユーザー事例紹介

若手から推進する全社的なペーパーレス化と
データ中心の業務スタイル<日揮グローバル>

2021.03.30

オイル&ガス分野のプラント施設を中心に、インフラ分野など幅広いプロジェクトを手掛ける
世界的なエンジニアリング企業の1社である日揮グローバル。同社の持つ高い技術力は国内外
問わず定評があるがそれに加えて近年はデジタル技術の活用にも積極的に取り組んでいる。
さまざまなICT技術を取り入れている中で、同社が業務の改善活動の一環で、若手社員からの
意見を採用し導入したものの1つに、図面PDFソリューション「Bluebeam Revu」がある。
膨大な量の図面における確認作業など、手間のかかる時間を圧縮するだけでなく、コロナ禍で
のコラボレーションの有効な手段となる同ソリューションは、同社の数部門に波及し、利活用
が進んでいるという。
今回、Bluebeam Revuを導入し、運用の推進や取りまとめの先頭に立つ星川崇晃氏をはじめ、
同社の将来を担う若手社員の太田勇真氏、青木和也氏、上村修平氏の計4名に具体的な部署別
の取り組みや活用方法などを伺った。

若手社員の提案から導入に至ったPDF図面に関する業務改善
石油やガスなどのプラントの建設を中心に手がける日揮グローバル(以下、JGC)は、新しい技
術の採用にも柔軟であり、DX推進にも全社的に取り組んでいる。2018年に策定し公表され
た、日揮グループとしてのデジタル戦略「ITグランドプラン2030」では、プラントの設計か
ら機材の調達、建設工事などの業務について、AIやロボット、IoTなどのデジタル技術を用い
て工期短縮や品質向上させる先進的なビジョンを示して業界の内外から注目を集めた。
これに先駆け、同社でいち早く導入したソフトというのが、パナソニック ソリューション
テクノロジーが提供するBluebeam Revu(以下Bluebeam)である。高度な技術を要しさま
ざまな関係者が関わるプラントの設計には、多大な時間と業務量を要するが、プロジェクトの
PDF図面のレビューや管理業務でBluebeamを活用することで、大幅な合理化を図れてミスの
防止効果も実感しているという。

           日揮グローバル株式会社 EPC DX部 部長代行 星川 崇晃 氏

          日揮グローバル株式会社 EPC DX部 部長代行 星川 崇晃 氏


さて、Bluebeamを導入するきっかけは、2016年にJGCが今後の企業活動を見据えて、業務
の改善活動のためのアイデアを社内で広く募ったことにある当時その取りまとめをしていた
のが星川氏だ。「改善の種を広く集める中で、Bluebeamを使いたいという声が若手の社員か
ら出てきました。当社では大規模プロジクトをJVで行うことがあり北米の案件でアメリカ
の企業と協業する機会がありました。そこで社員が協業企業の使用するBluebeamの効果を目
の当たりにし、同社でも導入し業務改善に繋げたいという要望を上げてきたのです」と振り返
る。そして星川氏は若手の意見を採用し、以前所属していたプラントプロセス設計部門で
Bluebeamを導入したのだ。この決断が図面へのマークアップや変更管理を合理的に進め、
図書中心の業務からデータ中心(データセントリック)の業務遂行スタイルに移行する、大きな
契機となったのである。

作業時間と手間を圧縮しミスを回避する
それでは、具体的に各部署でどのように活用されているのだろうか。
主にプロジェクトの基本設計を行うプロセスエンジニアリング部に所属する上村氏は、プラン
トの装置構成や計器を描く「P&ID」と呼ばれる図面の作成を担当。そのP&IDを完成させる過
程で、Bluebeamを活用している。

        日揮グローバル株式会社 プロセスエンジニアリング部 上村 修平 氏

        日揮グローバル株式会社 プロセスエンジニアリング部 上村 修平 氏


「シニアエンジニアやレビュー会でのコメントをフォローしてP&IDに反映させる作業では、
コメント内容とその進捗をまとめたExcel作成作業も必要でした。また、これまでの出力した
紙の図面では転記時の単純なミスや、異なる意図で反映される場合がありました。エンジニア
によってP&IDへの記述の違いや、文字の癖があるからです。そのため、あとから内容を確認
するのも手間でした」と課題を語ってくれた。そして「導入後にこれらを解決すべく、私たち
の部ではBluebeamのシーケンス機能を用い、コメントを一括管理するようになりました。図
面番号やページ数、コメント内容、ディスカッション結果、どの部署への連絡が必要かといっ
た情報をシーケンスに入れ込むことができるのです。この機能により、従来はPDFとExcelの
二つで行われたコメント管理が、Bluebeamひとつで完結できるようになったのです」と解説
する。
「そして、シーケンス番号に入力された情報はExcelに一括出力することで成果物が完成する
ため、作業時間は感覚的に3割弱ほど減ったと思っています」と説明し、大幅な効率化が図ら
れていることを強調する。

 Bluebeam利用シーン(コメント入力)

 Bluebeam利用シーン(コメント入力)


また、青木氏は、プラント内のポンプなどの回転機械、製品貯蔵のためのタンクなどの塔槽類
を取り扱うメカニカルエンジニアリング部に所属。「上村が担当するようなプロセスの情報や
塔槽類を製作するための図面をレビューするときに便利なツールがないかと探し導入に至りま
した」という。「例えば、塔槽類の製作図が改訂される場合、改訂箇所は雲形マークを人力で
入力していましたが、残念なことに付け忘れや訂正箇所からずれて表示されることもあり、こ
ういった間違いを見逃さないように気を使ってレビューをしていました。 Bluebeamでは図面
の重ね合わせ表示ができるので、どのような点が変更されたのかが一目でわかり、見逃すこと
はありません」と視覚的にわかりやすくなる点を挙げる。
また「ポンプなどのシンボルを簡単に登録でき、1回ずつ記述を繰り返すことが省けるので、
便利で生産性が上がっていることも実感できます。さらに、3DPDFにレビュー可能な点も良い
ですね」。

         日揮グローバル株式会社 メカニカルエンジニアリング部 
         青木 和也 氏

         日揮グローバル株式会社 メカニカルエンジニアリング部
         青木 和也 氏


ペーパーレスの実現と新たなコラボレーションの手段に
2019年に新設された空間設計部に所属する太田氏はBluebeamの部内への導入準備を担当し
ている。「私の部署は、もとはシビル系の土木領域の設計の部署と、配管系の設計をする部署
が一緒になた部署です」。同社が空間設計をより最適化するために設置した部署で3DCAD
の使用頻度も高いという。
「3Dモデルを作成すると構造と配管が密接に絡み合うのでどうすれば効率よく設計を進めら
れるかと試行錯誤で取り組んでいます。Bluebeamは、情報の共有や、大量に発行する図面の
朱書き、コメント記入などで使おうと思います」と3Dがメインの空間設計で使用することの
メリットと目的を語る。

         日揮グローバル株式会社 空間設計第1部 太田 勇真 氏

         日揮グローバル株式会社 空間設計第1部 太田 勇真 氏


また、本格導入の大きな理由の1つに、コロナ禍で在宅勤務での図面運用に課題が出たことも
挙げる。「ICTツールに距離を置いていた人も、在宅勤務のため、デジタルを使う環境になっ
たため、部内で印刷して行うような業務の多くは電子化しようと、ペーパーレス化に向けた
ワークショップを立ち上げました。私たちの部署では施工図や縮尺が厳密な図面が多いため、
周りとの関係を実寸で描いたり、互いの関係を絵で描いてコメントすることが多くあります。
それで電子上でも手書きの機能を残したかったため、Bluebeamとタブレットを導入し、2つ
を合わせて業務の効率を落とさないように工夫しようと考えてます」。
そして、今後のプロジェクトでスタディしてきたBluebeamなどを適用して、コロナ禍の状況
でも企業として柔軟に対応できるよう働く場所を問わない設計業務を遂行できるよう準備を
進めている。
またその先にはペーパーレスでのコラボレーションの実現を見据える。空間設計の部署でも、
最初はすべて紙に印刷してレビューの依頼を出し、そこにコメントをもらい図面を修正し、
承認を得ていた。さらに書類は、一定期間保管する必要があった。「保管には場所を要し、管
理にはコストがかかります。1つのプラントを設計するにも、ストラクチャーの図面だけで
数千枚、配管で何万枚を数えるからです。それもすべてBluebeamを導入して電子化すること
で、ハンドリングが楽になり、コストが圧縮される見込みです」と期待する。

 舗装面積の算出・集計

 舗装面積の算出・集計


 配管ISO図面朱書き

 配管ISO図面朱書き


若手の社員からの要望で導入されたBluebeamは、JGCの複数の部署に広がり、全社的なペー
パーレス実現にもつながっている。星川氏は「建設業界は、ほかの業界と比べてデジタル化が
いまだ遅れている部分があります。私たちは便利なツールを運用しながら、使い方をもっと工
夫し高度化する必要があると考えています。情報共有やコミュニケーションをよりスムーズに
する環境を整えながら、Bluebeamを使ってさらなる社内の業務の効率化を図っていきたい」
と、今後に向けた意気込みを語る。

「Bluebeam Revu」の詳しい情報は、こちらのWebサイトで。