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コラム

環境とデジタルデザイン

2021.03.30

パラメトリック・ボイス            安井建築設計事務所 村松弘治

自然との共生
2050年のカーボンニュートラル、2℃目標に向けての動きが活性化している。
今、建築界においても経済活動と環境活動の強いつながりとバランスが求められようとしてい
る。ただ、この達成には従来の環境建築に加え、より自然との共生に向けた新たなチャレンジ
ングな対応が必要になると思われる。
下の写真は緑を纏った仙台市庁舎プロポーザルの提案(安井建築設計事務所・平田晃久建築設
計事務所・ARUP・E-DESIGN)である。緑の気化冷却効果などを用いて外気温を低下させ、
加えて雨水を積極的に利用する、いわば機械に頼らないチャレンジングな21世紀型環境建築の
提案である。
冒頭の目標を達成する環境建築を創り出すためには、フィジカルな環境負荷低減技術に頼るだ
けでなく、このように、これまでの概念を超えるアプローチが必要になると思われる。樹木な
どの生態系とバランスを組み合わせて、あるいは地域全体・まちレベルで気温を下げるグリー
ン化計画など、ポジティブにCO2排出を抑える環境デザインが必須になってくると思う。
一方で、豊かな環境デザインが人の生活や活動にも大きな影響を与えることがわかってきてい
る。豊かな緑と接することで、人の健康や創造力を高めるウェルビーイング効果も期待されて
いる。つまり、この分野と歩調を合わせた研究を活性化することが、人にやさしい環境建築づ
くりにつなげることができると思う。

デジタルで環境価値をコントロール時代へ
一方で、環境性能に投資するコストバランスも明確にしていく必要がある。
建築環境設計の総合的指標はCASBEE(含LCCO2・ZEB)、総合的コスト評価はLCCを用いて
いる。この相互バランスを把握しながらプロジェクトを進めるためには、2つを統合するライ
フサイクルアセスメントの評価が必要になってくると思う。ここで、BIMインフォメーション
を有効に活用し、各評価項目とつなぎあわせることでスピーディかつ正確な統合評価を可能に
し、効果的環境プロセスをつくることができる。例えば、一の建築において、どのような
構造(RC造やS造)で、どの程度の木材量を利用するか?前述の評価は、CO2の削減やリサイ
クル材の利用率のバランスをみながら、設計初期段階で環境指数を具体的数値で知ることがで
きるようになる。
更に「2℃目標」達成のためにはCO2排出量をマイナスにする新技術(吸収・回収・水素利活
用など)にも取り組む必要性がある。ただし、これにはコストがかかるが、こういった環境価
値を共有することで、建築空間づくりにおけるグリーン成長戦略への理解も深まると考える。

デジタルストックマネジメントへのアプローチ
環境プロセスを考えると既存の建築を活かすためのReduce(リデース)Reuse(リユー
ス)、Recycle(リサイクル)への注目度が必然的に高まってくるだろうと思われる。現存す
る建築をBIMモデル化し、ライフサイクルアセスメントで評価し、CO2排出量削減を明確にし
た建築・設備計画を立案していくプロセス。時には既成概念を超えるチャレンジングな環境計
画で、大胆な環境建築を狙うプロセス。近い将来、多くの既存ストックでこのようなことを実
践しなければならなくなるのだろうと思う。
今後の建築活動は環境活動の中にあると言っても過言ではない。また、その結びつきはさらに
深まり注目度が増すと思われる。その結果、建築界のグリーン成長にもつながると考える。
そのために、今、建築環境で何ができるか、何をすべきかを考えなければならない時なのだと
思う。


        Ⓒ安井建築設計事務所・平田晃久建築設計事務所・ARUP・E-DESIGN
         

        Ⓒ安井建築設計事務所・平田晃久建築設計事務所・ARUP・E-DESIGN
         


        Ⓒ安井建築設計事務所・平田晃久建築設計事務所・ARUP・E-DESIGN
         

        Ⓒ安井建築設計事務所・平田晃久建築設計事務所・ARUP・E-DESIGN
         

村松 弘治 氏

安井建築設計事務所 取締役 副社長執行役員