BIMに分類体系を入れてみた
2021.06.24
パラメトリック・ボイス 芝浦工業大学 志手一哉
BIMで建設分類体系が重要だという議論が改めてグローバルに巻き起こっている。国際的によ
く知られている分類体系に米国のOmniClassと英国のUniclass2015があるのはご存知かと思
う。このたび、筆者の研究室の学生とBIMデータに双方の分類体系を入れてみる機会があった。
実際に入力してみると、なるほどと思うところや課題もなんとなく見えてくる。今回は筆者の
研究室での研究用のデータを作成するために、日本建築積算協会の積算講習会で使われている
実施設計レベルの図面をお借りして意匠と構造のBIMデータをRevitでモデリングした。モデ
リング後、全ての建築要素オブジェクトにOmniclass Table21(Element)、Table22(Work Results)、Table23(Products)、Uniclass2015のEF(Elements/ functions)、
Ss(Systems)、Pr(Products)、全ての部屋オブジェクトにOmniClass Table13(Spaces
by Function)、Uniclass2015のAc(Activities)、SL(Spaces/Locations)のパラメータを
追加した上でREX Jを用いて出力したEXCELで各々のオブジェクトに各分類体系の番号をあて
がってみた。
建築要素オブジェクトに対し、OmniClassについては、部分別分類とされるTable21は概ね
すんなりと番号をあてがうことができるのだが、工種別分類とされるTable22はどの詳細度で
番号を入力すべきかを悩むTable22の項目が少なからずあった。Uniclass2015については、日
本建築積算協会による日本語訳のおかげもあり、EF、Ss、Prのどのテーブルもあまり迷うこ
となく分類番号をあてがうことができるのだが、EFとSsの両方を入力しなければ、例えばスラ
ブが地下ピットの床か、土間か、一般階の床か、屋上かのように正しく分類できないことを理
解した。
OmniClass Table22は作業と資材の混合的なもの、Table23とUniclass2015のPrは資材の分
類である。これらは建築要素オブジェクトを構成する資材の分類と言えるので、ひとつのオブ
ジェクトに複数のTable22やPrの番号をあてがいたくなる。今回は、建築要素オブジェクトの
構成資材を代表する資材の分類番号をひとつだけ入力した。その番号を選択するときは、どの
資材にしようかとワクワクしたし、選択した資材の分類番号の横のセルにその性能や規格サイ
ズなどの仕様を思わず記述したくなった。また、オブジェクトを構成する資材やその仕様は、
オブジェクトとそれが配置されている場所をBIMデータで閲覧しながら考えると検討しやすい
ことも体感した。将来的には、オブジェクトのパラメータに入力するTable22やSsの分類番号
ごとに、建築要素を構成する資材の標準的な組み合わせを資材の分類番号で用意しておくと便
利そうである。仕様を追記した資材パッケージのデータを、何らかの記述でオブジェクトのパ
ラメータにするにしろ、オブジェクトとリンクさせてクラウドで管理するにしろ、仕様の違い
でオブジェクトのタイプを分けるのか、インスタンスで仕様の違いを分別するのかが考えどこ
ろだと感じた。
オブジェクトのパラメータに入力する分類番号に仕様の違いを表す記号を組み合わせたコード
を図面ビューのタグに表記し、それをクラウドで管理する資材パッケージとリンクできれば面
白い。オブジェクトに対して資材やその仕様を仮決めすれば、刊行物の単価をあてがうことが
できそうである。その詳細度の情報であれば工種別や部分別の内訳書の体系で集計できる。仮
設定した標準的な資材や仕様は設計が進む中で確定したモノからフラグを立てたり書き換えら
れていく。もしかすると、デジタルデータをベースとしたコストマネジメントでは、概算と明
細で数量の拾い方を変えなくても良いのかもしれない。さらに、数量を含む資材と仕様の情報
を中長期修繕計画や新築家屋の評価額算出に利用できると興味深いなど、夢はどこまでも広
がっていく。
そのような可能性を探求する準備の手はじめとして、空き時間を見つけてはEXCELに出力した
オブジェクトに分類番号をコツコツとあてがってみたわけである。改めて感じたことは、分類
体系はオブジェクトの仕様を検討して設定するためのガイドであり、資材の組み合わせに創造
の余地が多くある。今回は資材の組み合わせを想像しながらOmniClass Table22と
Uniclass2015のPrに対して建築要素を構成する代表的な資材をひとつだけ選んで入力したの
だが、それだけでも20数年前の若かりし頃に、今日でいう生産設計で詳細図や施工図を書いて
いた頃の記憶が蘇えってきた。分類番号の入力を終えたEXCELデータをBIMデータのパラメー
タに戻した時に、ある種の達成感を感じた。分類体系を使いながら仕様を定義する作業は正直
言って面白そうである。
もし、分類体系やBIMを利用するメリットがわからないという方がいれば、この作業を体験す
ることをお勧めする。デジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォー
メーションに向けて、自らの手を動かしてみる「experience」が無ければ、良いも悪いも、
メリットもデメリットも想像すらできない。
話は変わりますが、筆者が常任理事を務めている建築情報学会で査読付き論文の募集を開始し
ました。英文のみの募集ですが、応募を検討いただけると幸いです。はつらつとした論文をお
待ちしております。