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コラム

ライフサイクルマネジメントを促進させるDX

2021.11.02

パラメトリック・ボイス            安井建築設計事務所 村松弘治

BIMを活用して本格的にライフサイクルマネジメント(LCM)に取り組んでから約8年が経過す
る。実際のプロジェクト/建築で取り組めたことはとても幸運であり、運営に関する生の声を聞
くことができたことはとても有意義であった。また誰が使うのか・・・などのオーナーの悩み
実際の課題を可視化することは次のステプアプにはとても重要であったということで、
今回はLCMとDXについての話をしようと思う。

さて、簡単にこれまでの取り組みを振り返ると、私たちにとって初期のLCM-BIMのフェーズは
BIMモデルの建築設備属性データとビル管理者の視点を結びつけた状態管理(設備清掃、警備・・・)から始まった。次のフェーズで温湿度CO2センサーを導入し空間性能を管理し、現
フェーズでは時間軸を組み込んだ機器管理までステップアップしている。
いずれも、ビル管理者、スペースユーザー、そしてオーナーの視点が加味されているので設計
行為の延長というスタンスで取り組めてきている点が特徴だ。
とりわけ現フェーズについて触れると、BIMモデルの構成や抽出方法やデータの活用が格段に進
歩しているのみならず、それらに時間軸が加わり将来の維持管理すなわちLCMにおけるデジ
タルツインが大きく進展している。例えば、機器や配管の稼働から時間軸で耐性を評価し中長
期修繕計画を予測することができるし最も効果的な施設修繕(勿論コスト削減も含む)を行う
ことが可能になる。ライフサイクル-デジタルツインと維持管理データの蓄積が、LCMやライフ
サイクルコスト(LCC)の最適化や、施設を長寿命化に導く。LCMは建設を除き、運用、保全、
修繕、更新、一般管理から構成されるがこれらはLCCの75%以上を占めており同時に「中長
期修繕計画」は全てに関係することになる。つまりこれらが適切に行われることで施設を長
持ちさせ、ゼロエミッション/環境負荷低減にも貢献することになる。

話を戻すと、この基盤になっているのがBIMデータである。ただし、それだけではステークホル
の満足を引き出すことはできないこれと環境/WELLデバイスやユーザビリティの高いデバ
イスを組み合わせることDXでや利用者にとってより利便性の高い仕組みが出来上が
ることになる。その中心になるのが着実に成長しているBIM-OSであるそのつBuildCANの進
展については、国土交通省のHPに掲載されている「BIMモデル事業の中間発表の資料」を参
照されたい。
さらに重要なのが冒頭のオーナーの悩みを解決に導くライフサイクルコンサルタントの役割で
あろう環境、ESG投資、SDGs経営・・・社会の大きな変化に沿ってLCMとDXの展開がみえて
きたところである。次のフェーズの大きな進展が楽しみであるとともに、大いに期待したい。

ライフサイクルマネジメントをつかさどるBIM-OS(BuildCAN)

ライフサイクルマネジメントをつかさどるBIM-OS(BuildCAN)

村松 弘治 氏

安井建築設計事務所 取締役 副社長執行役員