Magazine(マガジン)

コラム

建築の時間軸

2015.12.01

パラメトリック・ボイス           アンズスタジオ 竹中司/岡部文

岡部  Plant circumnutation(回旋転頭運動)と名付けられた、植物独自の運動がある。
    チャールズ・ダーウィンによって発見された、植物の能力だ。一見して動かないよう
    に見える草花が、実は「常に」動いているという。
 
竹中  ダーウィンが描き出した300種を越える植物の軌跡は、とても魅力的だ。それぞれの
    軌跡の特徴と大きさは、種類によって大きく異なっている。
 
岡部  数ミリしか動かない植物もあれば、10センチ以上もの大きな形を描く植物もある。
    さらに注目したいのは、各植物が持つ、時間軸が異なっている点だ。1回転するのに
    小麦は2時間、チューリップは4時間、シロイヌナズナは15分から24時間かかるの
    だという。
 
竹中  植物が動かないように見えるのは、人間の時間軸からの視点であり、この世界には
    生き物の数だけ異なる時間のスピード感があるのだろう。
 
岡部  では、建築界の時間軸とは、どのようなものなのだろうか。どのように扱うべきもの
    なのだろうか。
 
竹中  建築は植物と同じで、動いていないように見えるね。
    けれど、建築とは本来、長く、多様な時間軸を扱うという点が特徴である。設計され、
    建てられ、人が住み、あるいは集い、訪れ、時が経ち、表層においても内実において
    も、変化を容認し移り変わってゆくものである。
 
岡部  最近は、静的な世界から動きある世界へと導こうとする動的な建築が注目を集めて
    いる。
 
竹中  センサ情報技術やアクチュエータ技術をはじめとするインタラクティブなテクノロ
    ジーを取り込んだダイナミックな建築だ。
 
岡部  植物の回旋転頭運動の目的は、成長、あるいは進化の過程で必要とされる情報収集
    のためだと言われている。では、建築のダイナミズムに求められているものは何か。
    周囲の環境に順応し、時間の変化と密接な関係性を持つことなのだろう。
 
竹中  そして、建築の設計プロセスにおいて、「時間」という概念を扱い・デザインする
    ことを許容する。時間の扱い方が未熟であった設計プロセスが、ダイナミックに変
    容することで、建築の本来の豊かさが生まれてくるのではないだろうか。

  ダーウィンがトレースした植物の回旋転運動
  ©'The Power of Movement in Plants', Charles Darwin, 1880

  ダーウィンがトレースした植物の回旋転運動
  ©'The Power of Movement in Plants', Charles Darwin, 1880