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コラム

フィジカル万能マシン

2015.12.24

パラメトリック・ボイス           アンズスタジオ 竹中司/岡部文

岡部  万能マシンという仮想機械がある。1936年にアラン・チューリングによって発表さ
    れたチューリングマシンの進化形であり、今私たちが使っているコンピュータの原型
    となる理論モデルだ。
 
竹中  計算可能な問題はすべて形式化できるとする理論のもと、0,1の世界が生み出す無限
    大の可能性を切り開いた、とても革新的な考え方だった。
 
岡部  「機械は思考できるか?」こう唱えたのも、チューリングだね。人工知能という分野
    が生まれるずっと前の1950年に発表された論文「計算する機械と知性」の書き出しだ。
 
竹中  マシンの知能化を示唆する彼の考え方は、人工知能の分野において、今もなお絶大な
    る影響力を持っている。
 
岡部  例えば、2014年にグーグル社が発表したニューラルチューリングマシンは、人間の短
    期記憶を模した能力を持ち、自らが「新しい」アルゴリズムを作り出すことが出来る
    技術を持っているという。
 
竹中  コンピュータ自身が自ら考え、思考する可能性を示唆した、万能マシンだね。こうし
    た進化系AIマシンを支えているのも、あくまでも二進数字を活用した0と1だけの非常
    にシンプルな仕組みだ。これが人間の脳という最も高度な道具を目指し、論理的な思
    考能力をもった万能なマシンへと進化しつつあるから驚きだ。
 
岡部  一方で、さらに着目したいのが、「万能コンストラクタ」の存在だ。1950年代、
    フォン・ノイマンは、チューリングの考案した万能マシンのヘッドに、文字を記録す
    るだけでなく、物質(モノ)を動かす機能を加えた。
 
竹中  ロボットのルーツとなる考え方だね。バーチャルな計算世界とフィジカルな物質世界
    をつなぐ可能性、まさに、人類が新たな手足が創造した大きな革命だったと言えるだ
    ろう。
 
岡部  意外にも、コンピュータとロボットの発祥は、とても深い関係があるんだね。
    それから半世紀以上経った今、コンピュータは人間の脳を模倣し、ロボットはその手
    足を担うことを夢見て飛躍的な進化を遂げている。
 
竹中  そして今やロボットは、感覚神経を備え、百分台以上の反復精度を実現している。
    言うなれば、コンピュータと親和性の高い「フィジカルな万能マシン」なのだ。
 
岡部  では、「万能さ」とは何を生み出すだろうか。
 
竹中  「万能さ」とは、まさに、使い手に委ねられた自由である。単に道具の持つ利便性に
    溺れるのではなく、自らのイマジネーションをかき立てて、創造的な世界を描くこと。
    その独創性に秘められた進化こそが、万能さの証なのである。

 アルゴリズムを再現するニューラルチューリングマシン 
 ※クリックすると画像の出典元のMIT Technology ReviewのWebサイトへリンクします。

 アルゴリズムを再現するニューラルチューリングマシン 
 ※クリックすると画像の出典元のMIT Technology ReviewのWebサイトへリンクします。


 アンズスタジオが開発中の産業用ロボット

 アンズスタジオが開発中の産業用ロボット

竹中 司 氏/岡部 文 氏

アンズスタジオ /アットロボティクス 代表取締役 / 取締役