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コラム

BIMの起源

2016.03.03

パラメトリック・ボイス           アンズスタジオ 竹中司/岡部文

岡部  近年、BIM(ビルディングインフォメーションモデル)という言葉をよく耳にするけ
    ど、2Dや3DCAD、さらにはパラメトリックな最新CADとは、根本的に何が違うのだ
    ろうか。
    BIMの起源をさかのぼってみると、Robert Aish氏によって書かれた論文にたどり着
    くことができた。
 
竹中  BIMの概念は、実にパーソナルPCが誕生して間もない頃、
    論文「The use of computers for environmental engineering related to
    buildings」(1986年)で定義されているんだ。建築設計に関わる様々な専門家たち
    が、単一の3Dモデルを介して情報をやり取りするという、まさに現在のBIMにあたる
    技法が考案されている。
 
岡部  この論文の中には、形をパラメトリカルに扱うintelligent componentsや、データ
    ベース理論と形を結び付けたrelated database managementなど、興味深いキー
    ワードを見つけることができる。
 
竹中  30年前に考案された手法とは思えない、先進的な理論を見ることができるね。
    ここで注目したいのは、BIMがもたらす利便性だけではなく、モデルに情報を付加す
    るという行為によって広がる建築形態の柔軟さだ。
 
岡部  そうだね。BIMとは「モデルに情報を付加したもの」に他ならないのだが、この単純
    さの中に大きな可能性がある。
 
竹中  例えば、2つの立方体を想像してみよう。形は互いに同じであっても、付加された情
    報によって、椅子になったり、机になったりする。図としてのふるまい方や扱い方を
    伝えることで、形は初めてモデルとしての意味を持ち得るのである。
 
岡部  形に付加する情報は、形のあり方を定義する形態指示書としての重要な役割を担って
    いるんだね。
                  
竹中  ただ、現状のBIMは、共通フォーマット(IFC)としてデータ階層に縛られ、属性の
    扱い方がいささか複雑である。これは、PC上のファイルシステムが持つ特有の分類
    問題といっても良い。
 
岡部  属性に縛られることなく、相互の関係性で情報を位置付けることはできないだろうか。
 
竹中  そうだね。次の時代のBIMは、階層に依存しないクラウドやノン・リレーショナルな
    技術で、柔軟なデータモデルへと進化を遂げる可能性を秘めている。
 
岡部  形としてのふるまい方や時間軸に対する変化、さらには設計者の思想や感覚などの情
    報を付加したらどうだろうか。BIMは、設計から生産までをシームレスにつなぐ新し
    い媒体となりえるかもしれない。
 
竹中  アートの世界で、マルセル・デュシャンが発表した作品「泉」(既製品の便器にサイ
    ンを施したもの)がモノの見方に新しい意味と疑問を投げかけたように、形に情報を
    付加するBIMの力は、建築形態論の根源に大きな変化をもたらすにちがいない。

          Fountain(1917)
          ※上記の画像、キャプションをクリックすると画像の出典元
           のPHAIDONのWebサイトへリンクします。

          Fountain(1917)
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