“BIM”はバズワードか
2018.03.06
ArchiFuture's Eye 大成建設 猪里孝司
2月の後半に二つのイベントがあり、あらためて“BIM”について考えさせられた。ひとつ目は、
2月20日に開催された日本建築学会主催の「BIMの日シンポジウム」のパネルディスカッショ
ンでのこと。パネリストの日建設計の安井さんから「BIMはバズワードです」との発言があり、
あまりの鋭い指摘に言葉を失った。“BIM”がプロセスを指すのか、データを指すのか、ソフト
ウェアを指すのかが人や文脈によって異なり誤解を生んでいる。また、誤解に気づかずにお互
い納得してしまうと、議論が意味をなさないだけでなく誤解を助長するとの指摘だと理解した。
まさにその通りである。ちなみに、Wikipediaによるとバズワードとは「日本語での意味は、
もっともらしいけれど実際には定義や意味があいまいな用語のことで、英語では、特定の期間
や分野の中でとても人気となった言葉のことである」とのこと。私自身、話したり書いたりす
る時にはプロセスや考え方のことを指す時は“BIM”といい、データのことを指す時は“BIMモデ
ル”と区別するようにしているつもりであるが、いつもという訳ではなく誤解を生んでいると
反省している。
もう一つは2月21日~23日に開催された日本ファシリティマネジメント協会主催の「JFMA
ファシリティマネジメント フォーラム 2018」のセミナーでBIM・FM研究部会の活動報告を
した時のこと。私が予想していたよりはるかに多くの方にご参加いただき、BIMへの関心の高
さを実感した。「BIMはバズワード」のひとつの表れかもしれない。そうだとすれば、いち早
くFMとBIMとの橋渡しをしなければならない。“BIM”というプロセスの根底には、工程や職種
などの垣根を超え情報を流通さえ活用しようという考えがある。FMの関係者にプロセスとして
の“BIM”を理解してもらい、“BIMモデル”を活用してもらいたいと思う。BIM・FM研究部会の
責任の重さを痛感している。
バズワードつながりで、“BIM”がAIやIoTとともに語られることが多くなったような気がする。
“BIM”で効率化できることもあることから、ICT活用の延長で働き方改革の中で語られることも
ある。そこまで来るとまさにバズワード化の悪影響である。“BIM”もAIもIoTもデジタル情報が
通底するが、実際に活用するには技術的な裏付けはもちろんのこと、きちんとした議論と戦略が
必要である。“BIM”をバズワードに終わらせないためには、“BIM”関係者の一層の奮起が必要で
ある。
写真は、先年ロンドンを訪れた時に撮ったもので、5月の水曜日、午後6時過ぎのハイドパーク
の様子である。仕事帰りであろうか、多くの人たちがこのひと時を楽しんでいるのがよくわかる。
働き方改革が喧しいが、たとえバズワードであっても、“BIM”が日本でこのような光景を実現す
る一助になることを夢想している。