AR/MR技術を活用した設計・施工・維持管理業務の効率化、高品質化<大和ハウス工業>
2022.02.07
大和ハウス工業では、設計・施工・維持管理業務の効率化、高品質化に向けて、mixpace、
mixpace Remote RenderingオプションおよびBIM 360連携機能を活用している。その活用
の目的や効果について、同社東京本社技術統括本部建設デジタル推進部 デジタル推進建築設
計・施工グループの木戸広太氏、高比良大輔氏にお話を伺った。
大和ハウス工業では、デジタルコンストラクションの一環として、AR / MRをはじめとする
XR技術を活用した設計・施工・維持管理業務の効率化、高品質化に取り組んでおり、数年前
からAR / MRソリューション「mixpace」を活用したさまざまな検証を進めている。
2021年11月2日、同社が設計施工を担当する宮城県内の物流施設において「mixpace」の各
種機能を使った設計提案手法について、検証が実施された。今回の検証では、宮城県内の
物流施設の施工現場(以下、施工現場側)と大和ハウス工業の東京本社のオフィス(以下、
オフィス側)とをMicrosoft Teamsのリモート会議で繋ぎ、画像や音声で相互にコミュニケー
ションを取りながら、リアルタイムでの共同作業を行った。
HoloLens 2を使った作業内容の事前確認
まずは、施工現場側にて「mixpace」でコンバートした物流施設の3DモデルをMicrosoft
HoloLens 2で表示。HoloLens 2の映像をミラキャストでPCに投影し、参加メンバー間で、
当日の検証内容や確認区域について3Dモデルを通じて事前確認した。現地参加者には、設計・
施工担当者以外のメンバーもいたため、図面上だけでは共有できない内容を想定して、より直
観的にわかる3Dモデルを使ってコミュニケーションを図った。
Autodesk BIM 360からシームレスに連携
「当社で採用している共通データ基盤クラウドAutodesk BIM 360と「mixpace」は連携対応
しているため、BIMモデルをシームレスにAR / MR向けにコンバートできるようになっていま
す。「mixpace」のWebアプリ上からBIM 360にログインして対象のBIMデータを選択するだ
けで、AR / MR向けに数分でコンバートできます。今回は、オフィス側から当日に設計変更を
行った複数のBIMモデルをBIM 360経由で「mixpace」にコンバートしてもらい、施工現場側
では変更前と変更後のものをARでそれぞれ確認しました」と同社建設デジタル推進部の木戸
広太氏は語る。
施工現場側とオフィス側が遠隔で協同し位置合わせ作業
「検証実施日前に施工現場側からもらっていた情報を元にARマーカーの配置位置を決めてい
ましたが、実際行ってみると想定と異なる地点であったため、施工現場側から映像と状況をオ
フィス側に伝えてもらいました。オフィス側で「mixpace」の「位置指定ARマーカー機能」
で座標位置を再設定して、新たなマーカー配置場所でモデルの初期配置を行いました。
「mixpace」には「クラウドシンク」という同期機能があり、他のメンバーが変更した内容を
自分のアプリ内ですぐに更新することが可能です」と同社建設デジタル推進部の高比良大輔氏
は語った。
「見えないもの」をARで見せる
同社は設計段階のBIMモデルの活用として、排煙有効高さの空間をモデル化することで、有効
開口面積を算出し建築基準法における排煙検討を行うツールを開発している。「実際には存在
しない排煙有効高さのモデルをBIMデータ内で色分けしておいて、HoloLens 2やiPadで現実空
間に表示することで、設計通りに施工されているかの確認を行いました。図面だけでは伝わり
づらい空間的情報をARで表現することは、設計監理業務に役立つとともに、設計施工者側から
立場の異なる人への説明やプレゼンテーションに有効であることが確認できました」(木戸氏)。
大容量3DモデルをHoloLens 2で投影
検証当日にオフィス側から送った設計変更後のBIMモデルは、物流施設全体のモデルでファイ
ルサイズが300MB以上ある大規模なものだった。この規模のファイルになると、HoloLens 2
のローカルレンダリングで描画処理できず、従来はHoloLens 2のアプリ内で3D表示すること
が不可能だ。そこで、大容量3Dデータの表示が可能になる「mixpace Remote Rendering」
を活用し、クラウドで高精細な3Dモデルの描画処理をしてHoloLens 2へストリーミングする
ことで、可視化を実現した。
AR/MR技術活用の有効性
検証の結果、物流施設のような大規模な建築物であっても、AR/MRで3Dモデルを表示でき、
完成イメージを共有できることが確認できた。例えば、施工前の地縄立ち合いの際に3Dモデル
で竣工時の完成イメージを施主に見てもらえれば、施主に喜んでもらえる姿が想像できたとい
う。CGパースだけでは確認できない、スケール感や、実際にどのような形状で見えるのかを
確認できるようになり、わかりやすい空間情報でのプレゼンテーションが可能なAR/MR技術の
有用性が実感でき、大きな手応えを感じた検証となった。
「mixpace」のさらに詳しい情報は、こちらのWebサイトで。