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ユーザー事例紹介

業界をリードするBIMプラットフォーム構築を
目指した全社的取り組み<大和ハウス工業>

2022.04.04

戸建住宅をはじめ賃貸住宅や商業施設、事業施設など幅広い事業を展開する大和ハウス工
各事業領域でデジタル化に取り組んでいる。デジタル化の主軸となるのがBIMであり
同社では設計段階でのBIMの導入率が、飛躍的に向上しているという。
同社が、さらなるBIMの導入効果の向上に向けて導入したのが、応用技術からリリースされ、
SB C&Sが販売元となっているAutodesk Revitのアドインパッケージ「BooT.one(ブート.ワ
ン)」である。
以前は、自社開発したBIM支援ツール「D-REX」を使用していた大和ハウス工業が、
「BooT.one」を導入しツールを統合した背景はどのようなものか。そして導入・統合によ
て生まれた効果や追加された「BooT.one」の新機能、今後の展望などについて大和ハウス工
業 建設DX推進部の宮内尊彰氏に伺った。

建設業界全体への貢献を目指し「BooT.one」と統合
「大和ハウス工業では『儲かるからでなく、世の中の役に立つからやる』という創業者の
石橋信夫の精神を基本理念としており、デジタル化やBIMを推進する上でも、“建設業界の全体
に役立つ”ことを前提に取り組みを進めています」。こう語るのは、同社の建設DX推進部 次長
の宮内尊彰氏である。

         大和ハウス工業株式会社 建設DX推進部 次長 宮内 尊彰 氏

         大和ハウス工業株式会社 建設DX推進部 次長 宮内 尊彰 氏


同社では「Daiwa Smart Control基盤」を掲げ、BIMをデジタル改革のベースに据えて建設
DXに繋げることを目指しており、各部門をBIMで連携させることで、全社での建設DXの推進
に取り組んでいる。

 大和ハウス工業の全社デジタル戦略のメビウス・ループ

 大和ハウス工業の全社デジタル戦略のメビウス・ループ


建設業界でBIMに一早く取り組んだイメージのある同社だが、BIMの本格スタートは比較的に
最近のことだ2017年にBIM推進室を立ち上げ、5名でスタト。その後、2018年にBIM推進
部となり、2020年より建設デジタル推進部として発展し、全社で取り組みを進め現在190名
もの組織となっている(2022年3月現在)。社内でのBIM研修については、すでに4,000人に
実施している。
このように、わずか数年でBIMを急速に推進しているが、そのBIMの導入効果を一層引き上げ
ているのが同社が2021年4月に導入したAutodesk Revitのアドインパッケージ「BooT.one」
だ。
同社は、2018年から社内用のBIM便利ツールとして開発した「D-REX」というRevitのアプリ
ケーションを使用していた。これは、もとは大成建設が開発した「T-REX(TAISEI Revit
Extension)」を、大和ハウス工業の仕様にカスタマイズしたもの。宮内氏は「BIMを始めた
当初から、少しでもモデル作成が楽になるよう便利ツールを取り入れてきました。その中で
“T-REX”をベースに応用技術に手伝てもらいながらカスタマイズしたツールが“D-REX”です」
と振り返る。
その後、「T-REX」から発展した「BooT.one」が2019年7月に応用技術よりリリースされた。
「BIMは1社だけでやるものではなく、みんなで機能を作って、作った機能をみんなで使うべ
きだと考えていました。その意味で、BIM標準化に向けて建設業界の誰もが使えるプラット
フォームとしては“BooT.one”が最も適しているのではないか、“D-REX”と“BooT.one”を統合
することで業界をリードするプラットフォームを構築できるのではないかと考え、統合するこ
とにしたのです」と宮内氏。また、そこには前述の創業者精神の基本理念もあり、建設業界全
体の役に立つことを実践していくという企業としての方針も後押ししたという。

 大和ハウス工業の一気通貫型建築系BIMプラットフォームの歴史

 大和ハウス工業の一気通貫型建築系BIMプラットフォームの歴史


多彩な便利機能を実装し続け、常に進化する「BooT.one」
これ以降同社ではRevitを通じたBIMの推進また、ファミリの共通化や仕様を統一するため、
応用技術と協調し「BooT.one」を活用して大和ハウス工業のBIMプラットフォーム構築を加速
させている。宮内氏は「応用技術はBIMベンダーとして高い技術力を持ち、大和ハウス工業が
BIMに取り組み始めた時から親身になってさまざまな協力をしてくれました。現場のアイデア
から積み上げる点や、当社の目指す方向との親和性も高い、重要なパートナーです」と信頼を
寄せる。
「D-REX」と統合した「BooT.one」には、さまざまな新機能が追加されたが、便利機能の
一例として宮内氏が挙げるのは、カーテンウォールのモデル作成に関する機能である。
「BIMデータでカーテンウォールをつくる作業には、時間と労力がかかっていました。“ロ
ダー”と呼ばれる機能ではRevitのカーテンウォールとカーテンパネルマリオンの要素で自
動的に配置。連窓がある部分では窓同士の結合も含めてパネルの組み合わせで自動的に作成
されたファミリを用いることで、簡単に入力できます。また、RC造で煩雑になる配筋の3Dモ
デル作成も、選択した柱や梁のパラメータを設定することで自動的に読み取り、Revitでの表
現がたやすくできます」と宮内氏は具体的に語る。

 カーテンウォールローダー機能の画面

 カーテンウォールローダー機能の画面


Revitを操作する画面上で自分がよく使う機能をグルピングしてまとめておくことができる
「マイメニュー」も、大和ハウス工業の設計の現場から生まれたものだ。「コマンドは数百あ
りますが、例えば、意匠で使うツールのセット、構造で使うツールのセットなど好きなコマン
ドをまとめておくことで、意匠や構造、構造や設備といったリボンから探すことなく即座に起
動することができます」と宮内氏は説明する。
このように「D-REX」と「BooT.one」の統合によて新規に追加された機能は200以上もあり
「BooT.one」で全体の機能数は現在500にのぼるという常に現場の声を聞いてそれを反映し
新たな便利機能をどんどん追加しているので常に進化する「BooT.one」は他社のユーザーに
とってもとても使いやすいソリューションと言えるだろう。

統合の具体的メリットと加速するBIMの進捗率
「D-REX」と「BooT.one」の統合のメリットとしては「開発やメンテナンスにかかる費用や
時間を削減でき、合理化されたことが大きい」(宮内氏)。「ファミリでは、メーカーが作成
したもののほか“BooT.one”のユーザー同士で部品を提供しあう参加型のファミリもあります
ファミリを自社だけで作るのではなく、他社ユーザーが作り、増えていく数多くのファミリを
共有化できるのもありがたいですね」と宮内氏は語る。

 大和ハウス工業が作成したファミリの例

 大和ハウス工業が作成したファミリの例


大和ハウス工業と取り引きする協力会社は「BooT.oneをすでに多く使用している協力業
者にとっては「BooT.one」を使いこなすことでグルプ全体として統された枠組みの中で
BIMの依頼を受ける可能性も高まるメリットがあるさらに「BooT.one」に用意されている
「ヘルプデスク」を利用できることのメリットも宮内氏は高く評価している。
「“BooT.one”やBIMに対するさまざまな質問や疑問点について“ヘルプデスク”で回答をして
もらっています。以前は当社で行っていた協力会社からの質問への対応のほとんどを、この
“ヘルプデスク”で対応できていることも大きなメリットです」。
大和ハウス工業の手掛ける全物件に対するBIMの進捗具合は、かなりのスピード感をもって進
められている。BIM化率は、2018年度は意匠・構造・設備で各15%程であたが、2020年度
は意匠95%、構造100%、設備65%となり、2022年度は意匠・構造・設備の各部門で100%
に達する見込みだ。工事部門でも、2022年度にBIMの進捗率100%を目指している。

 大和ハウス工業の一気通貫型建築系BIMプラットフォームの概略

 大和ハウス工業の一気通貫型建築系BIMプラットフォームの概略


 大和ハウス工業のBIM対応進捗度の推移

 大和ハウス工業のBIM対応進捗度の推移


そして、同社では「一気通貫型建築系BIM」として、意匠、構造、設備のBIMを統合する基準
を設け、設計側で作成したデータを連携して見積りや工場での制作、工事との連携を行うこと
を目指す。「今後は、ものづくり側と結びついたBIMデータの活用をしていきたいと考えてい
ます」と宮内氏は先を見据える。
みんなが使えるBIMのデジタル情報を活用していくことで、いよいよ同社のBIMからデジタル
コンストラクションへのデジタルループの実現が見えてきた。

SB C&Sが販売元となっている「BooT.one」の詳しい情報は、こちらのWebサイトで。