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コラム

“建築DX”を考える

2021.06.08

パラメトリック・ボイス            安井建築設計事務所 村松弘治

デジタルデザインはどこへ行く?
Covid-19で様な活動が停滞しているがデジタルは留まることなく成長をし続けている
のことは、私たちの生活に深くデジタルが浸透し、健康で豊かな環境づくりに絡んできている
ということが言えるだろう今回は様々なデジタルコンテンツの利用と進化状況を見ながら、
DXを司るデジタルプラットフォームの在り方について触れてみたい。
先ず、この概念は地域・まちというフィールドの中で、暮らし、地域経済、防災、環境情報
(データ)をDXで結びつけ快適な人の生活環境を創り出していこうというスシテ
想を参照すると理解しやすいもちろん実際にこれらと人とを結びつけるには高度な都市OS
が必要であることは既に知られているが、一方で、それぞれの分野では、様々な社会現象や課
題を解決する合理的なアイディアと既定の概念を超越するようなチャレンジを含むロボティッ
クスやシミュレーションといった高度かつ充実したコアなデジタル技術のアウトプットが前提
になってきているとも言える。

私たちの生活に入り込んでいるスーパーシティDX
現在私たちの暮らしには進化した様々なDXが入り込んできている医療福祉ヘルスケア
における予知・予防、キャッシュレス、オンライン手続きなどの生活サービスに加え、スマー
トアグリや空き家活用テイクアウトサビスなどの経済活性化の分野でも拡大している。も
ちろん以前から課題となていた防災や環境領域でもPLATEAUをはじめAIを活用した予測
など、継続して様々な新しいサービスへの試みが進んでいることは広く知られている。これら
は、それぞれが単独で人々の生活に利便性をもたらし、スタイルをも変え始めているが、更な
る効果的デタの蓄積(ビグデタ化)とDXによりこのカオス的な状況から統合的かつ複
合的デタが活用され生活の利便性や経済的効果につなげる・・・これがスーパーシティDX
の考え方でもある。(参考:内閣府国家戦略特区

人の感性を取り入れる新たな建築のDXへのチャレンジ
建築においては、より安全性と快適さが求められ、実現のためには、まちづくりとの関係性強
化、温室効果ガスの削減、使用エネルギーの削減、自然との共存というテーマ設定が考えられ
る。同テーマのデジタル連携がいわゆる“建築DX”と呼べるものだが複合的視点で適切な解
を導き出すためにはBIMプロセスとインフン情報技術シミンによる
評価、そしてそれらを統合する手法が欠かせないことは自明である。さらに、前回のコラム
も触れたが、心地よい環境性能とバランスさせながら、利用する人にフォーカスした生産力と
創造力を高める建築の場や空間について見つめなおすことも必要だろう。そのためには、ZEB
やCASBEEといった既評価はもとより、人の感性評価を加えたWellness空間をめざすことも必
要だろうし、高度なシミュレーション評価も必要になるが積極的な生態系計画や技術を取り入
れることも一つの選択肢として考えてみる時代なのではないだろうか。このように、複眼的視
点で“建築のDX”を進めることで、進化する建築の姿も見えてくる。

基盤となる3Dデジタルインフォメーション
スーパーシティ構想では、“建築のDX”(MaaSやバーチャルホスピタル、地域医療データ統合
管理、予防介護、地域キャッシュレス、オンライン教育環境などの生活サービス、ドローン配
送やデジタルマッチングプラットフォーム、ロボティックス導入スマート農業・漁業などの地
域経済サービスなどの)と“暮らし・経済・防災・環境のDX”が絡み合い、まち・地域という
フィールドの上で交通、物流、医療・福祉、教育、防災、環境などがコントロールされ、安全
で快適なまちづくりが進められつつあるこの時〈図〉に示すように都市OSを中心に、まち
や建築のインフンデタであるPLATEAUやBIMCIMをはじめとする3Dデジタル情
報がコアのデジタル技術をつなぎ合わせるDXプラトフームの重要な役割を担ってきてい
る。改めてBIMが有するポテンシャルを確認し、その価値を高める時だと思う。あらゆるとこ
ろにデジタルインフォメーションが存在し、ますます活気を帯びてくるデジタルデザインと仕
組みに対して、今、私たちは広い視点で“建築のDX”を進めることが肝要なのだろう。

村松 弘治 氏

安井建築設計事務所 取締役 副社長執行役員