Magazine(マガジン)

コラム

個の特性を見つめ直す

2024.01.25

パラメトリック・ボイス       SUDARE TECHNOLOGIES 丹野貴一郎

昨年末くらいから会社や人材を育てるということを考える機会が多く、正解のない問題に悩ま
されています。
 
以前、本コラムでBIM実務者の働き方について書きましたが、人材が育っていくためには働く
場所や働き方以上に、より個人的な環境が影響すると思います。
例えば、どんな上司や同僚がいるか、どんなプロジェクトでどんな取引先とやり取りをするか、
どんなツールを使って作業をするか、仕事以外の時間でどんなリフレッシュをするか等、コン
トロールできない事も含めて実に多くの要因が影響しています。
元も子もない言い方をすれば、自分でどうにかできる事は少ないので、置かれた環境を受け入
れたうえで、より良くするためにどうするかを考え、できる事を積み重ねていく以外はたまた
まのラッキーを待つしか無いのです。

そのためには自分自身の特性を知ることは大切だと思います。
それほど好きではない事でも実績を積み重ねていく事で理解が深まり、気づいたら周囲から評
価をされる対象となり、いつの間にか好きになっている事もありますので、やりたい事と向い
ていることを天秤にかけながら進んで行った方が良いかもしれません。

あくまで一例ですが、下図のように等辺の立方体モデルがあったときに形としては正確にでき
ているのですが、面が分割されたままだった時にどうしますか?


・実務上問題が無ければそのままにする
・実務上問題が無いとしても下図のように面をマージする


①を選んだ方はより現場に近いところで物理的なモノづくりの方が向いていて②を選んだ方
はより設計に近いところで形状そのものをつくる方が向いている気がします。
簡単なモデルであれば作業量に差はありませんが、膨大な量があった場合作業量に差ができる
ため、少しでも早く次の工程に進むことを優先した場合①となるので、現状不要な作業であれ
ば極力やらないのではないでしょうか。
逆に本来あるべき形状と見た目を合わせ形状認識の齟齬を無くすことを優先した場合②となる
ので、現状不要であっても作業をするのではないでしょうか(②を選ぶ方の方が少しでも作業
量を減らすためにプログラムを活用する傾向がある気がします)。
もちろんこれはどちらが正しいという事ではなく、状況に応じて臨機応変に対応することが良
いのですが、自分自身がどちらの特性が強いかを知っておくと、課題があった時に自分に足り
ない事を理解しやすく、どうすればより良くなるかを考える材料になると思います。
また、自分自身の特性を知ることで周囲へのアピールもわかりやすくなり、周囲からの理解も
得やすくなるのではないでしょうか。
 
ちなみに私自身は②でないと気持ち悪くてダメですが、他の人が作ったモデルで実務上問題が
無ければ①でもスルーできるようになりました。
 
細かい作業にこそ個が出ていると思います。普段の何気ない作業から自分の特性を見つめ直し
てみてはいかがでしょう。

丹野 貴一郎 氏

SUDARE TECHNOLOGIES    代表取締役社長