デジタル2050年、月での初夢
2025.01.14
パラメトリック・ボイス ARX建築研究所 松家 克
迎春! 今年も宜しくお願いします!
今年は、2050年春。齢101歳。第1回“Archi Future 2008”から17年間に亘る実行委員長を
辞して25年。その後もコラムは続いている。思い起こせば2024年のイベントは史上最高の参
加者数6,525人で大盛会。今はデジタルと哲学・思想、併せて、アートが社会基盤となり自然
環境再生と食糧不足や不安定な国際社会をデジタルスキルでのコントロールが社会を支えてい
る。光量子コンピューターや核融合、再生可能エネ、小型の発電システムが地域を支え実用
化。生成AIは一般化している。ルールも世界で確立し人類に有益なソフトとして利用されてい
る。生成AIで高齢者の楽しみも増えた。年配者の生活必需のトイであり友達。高齢者の“おも
ちゃ友達”として活用されている。生成AIで90歳を過ぎた方も今ではCG動画を作るのが楽し
みになっているという。これは、まさしく“生成A愛”だ。日本では、生成AIに端を発しシン
ギュラリティの特異点も経験したが、コンピュータースキルは有効なイノベーションに繋がっ
てきた。2025年から日本が担当し運用された「HTV」新型補給機が月と中間拠点へ食糧や物
資を運んでいる。各国から月への実験移住も始まり、火星での試験的移住も計画。居住や執
務、原稿を月の地下の最新コアブースの小スペースでシルバーとして選ばれ快適に過ごしてい
る。原稿送信のタイムラグも月との間に中継点を設置し問題はないようだ。一方、SNSをテコ
にしたフェイク情報が蔓延し他国民の情報操作が行われ諍いが多発した。2020年頃から、ロ
シアや中国のAIによる他国での情報操作が激しくなった。
建築界は、1980年代にCAD化が始まり、2000年前半からBIM化に向かった。人手不足が拍車
を掛け、2024年に生成AI化が顕著になり、今ではコンピュテーショナルデザインで創造的で
安全な建築が施工も含めて常態化している。多用途の現場ロボットが実用化し、月の工作もロ
ボットが主流。創造性は人間の根源的な楽しみであり、モチベーションの根源でもある。重要
度が更に増しデータベースの個性化も進み、個人独自のデータベースが構築されつつある。
PCも創造的にカスタマライズ化されている。
初夢転換。好きな画家の一人、田中一村は、晩年、奄美大島で“あの世とこの世の間”を描いた。
一村は亡くなってから評価された画家であるが、泥染職人をしながらも描く手は止めていな
かったという。2007年に大学の「A&Dイベント」で奄美に行く機会があり、この時に初めて
見た一村の作品が脳裏に染みついている。片や日本人宇宙飛行士2名を含め世界の50家族が
今、奄美ではなく月に移住され地球を見ながら研究を続けながら暮らしている。この月住民の
中に“あの世とこの世の間”を描く画家が生まれているのかもしれない。2009年のヴァン・ク
ライバーン国際ピアノコンクールで日本人として初めて優勝。2010年代くらいから世界的な
ピアニストを歩み始めた辻井伸行氏は、今が最も充実しているのだろう。当時、感激のあまり
に涙することもあった。気が滅入ると彼のピアノ演奏と姿に勇気づけられた。ますます演奏に
独特の世界を築いている。人気を博したニューヨークの野外コンサート会場はどうなっている
のだろうか。併せてライゾマティクスのAIアート、安野貴博氏のAIとSNS、インベスターの
本田圭佑氏、AI裁判、AIステーブ其々の今が気になる。
沈没前の日本列島は2024年頃から温暖化に起因すると考えられる猛暑と熱帯化で気候変動が
激化。世界中でも大災害が激増している。日本や東南アジアでは、海水温上昇に伴い台風が巨
大化。1時間で100㎜を超す豪雨も線状降水帯と共に頻繁に発生。冬季は多量の海面発生水蒸
気によりゲリラ豪雪にも見舞われた。インド洋では大型化したサイクロンがマヨット島に大き
な被害をもたらした。メキシコ湾のハリケーンも大型で強力化。これらから台風等を弱める制
御の研究も進み2050年の今では、若干の制御が可能となったが、人の住むエリアに大きな変
化が見られるようになった。ヨーロッパでは、イタリアの古都ベネチアが冠水での生活とな
り、中国でも大洪水が頻繁化。オランダのアムステルダムも早くから対応を進めていたが、
2mの海面上昇で国土の多くが海となった。南の島々は多くの島民が移住した。日本の博多は
海水位上昇で北九州市も含め広範囲が海となった。羽田空港や関西空港は、今では海面すれ
すれの空港である。東京湾のサンゴも2000年の初頭ぐらいから繁殖が始まり、今は大きなサ
ンゴ礁群で生態系を変化させている。江戸川での沖縄が繁殖地の大ガニや多摩川では元は南
米系の硬い鱗の熱帯魚のマダラロリカリアが繁殖などは越冬が可能な水温上昇が原因だとい
う。他の熱帯魚も生息が2024年頃から顕著になり、生態系が変化しつつあった。日本の対応
も遅れ、国の存在すら危うくなった経験もした。しかし、最新デジタル技術や多くの知恵と
知識、努力で2050年までの間に格段の進歩を遂げた。想定されていた南海トラフ大地震と富
士山噴火があったことも拍車を掛けた。台風の発生数は減っているらしいが、巨大で大型化
している。2022年にその概念が確立された線状降水帯や雷の発生も激しく増え、屋外でのス
ポーツ活動にも暑さと共に影響が出た。冬に30度を超す日も珍しくない。
2024年頃から身体で感じる日本列島の熱帯化だったが、前述のようにスペインや中国、アメ
リカでも大洪水のニュースが世界を駆け巡った。人類が生産や生活で排出する炭酸ガスが温暖
化の要因として1970年頃から深刻な問題として科学者の間で注目されるようになっていたが、
片や地球環境問題は京都議定書やパリ協定書を基本として討議や各国の行動と対応を促してい
た。2024年は記録的な猛暑が長く続き、蝉も秋に鳴きアジサイや桜が秋に咲いた。日本は、
九州や紀伊半島の南紀白浜で鳴いていた南方生息のクマゼミが東京でも鳴き始めていたが、今
年の2050年は、北海道でも鳴き始めている。北海道は、晩秋にも拘らず猛暑日を記録した。
日本は、沈没する前に熱帯化と乾燥化と共に各地で豪雨が発生し生活環境と住み方が根底から
変化した。正に灼熱日本列島となりつつある。今では40度を超える日が殆どで、COVID-19
感染症から30年近くを経過したが、その後も異種の感染症が発生。医学の進歩や行政のコロ
ナ時の経験に基づく対応とWHOの指針で世界的な拡散は押えられた。新たな感染症によるパ
ンディミックは押えられたが、温暖化により命を無くす人も急激に増えている。夜は熱帯夜
が継続中。人命に危険な暑さが続く。2025年当時のアメリカの大統領のトランプは、科学者
の妄想だと言い切っていたが、大きな誤りであった。僅かな人数での他の惑星移住も始まっ
ているが、人口が減った地球人類は、展開や維持も困難になっている。こちらの人口は増え
るばかりだというのに。
私は建築家の一員でデザインと設計監理が主な業務。楽しくもあり緊張と充実感もあった。有
意義な人生だったといえる。美術大学の経験のおかげでもあるが、椎名政夫氏の影響も大きい。
幾つか設計した建築も残っているが、当時の経済とリンクしたスクラップビルドには大きな疑
問があった。これは近代化が促した大きな弊害だと感じていた。この結果で温暖化が進み、人
類の総人口が二分の一となったのも納得出来る。シンギュラリティを経験した人間に代わり、
環境変化に順応したロボット数が人口の10倍を超したという。ロボットがロボットのメンテ
ナンスを行い人類と共存している。2024年に孫正義氏が、10年先のAIは人間の感情を理解す
ることが出来ると語っているが、今では感情を理解し、その先を読むAI搭載のロボットが活躍
している。2022年頃にインフルエンザのアイリスAI医療機器での検査“nodoca”で始まったAI
検査とロボットとの組み合わせによる治療や手術が、今では一般化している。日本独自のAI文
化が世界で認められ、業務や生活で大活躍している。
リニア新幹線は、静岡県地域の工事が大幅に遅延したが順調に営業運行が始まっている。今で
は、世界に冠たる静かで揺れなく速くて安全な世界初の自動運転のNEW・リニアーモーター
幹線として日本の重要な動脈となり、世界の垂涎の的になっている。東名高速、新幹線、リニ
ア新幹線が大災害時の人流と物流機能確保が出来、大震災時にも大役を果たせるだろう。
2008年に始まった今秋の“Archi Future 2050”は、個性的なデータベースも構築され以前より
増して重要なイベントになっている。BIM+生成AIも一般化した。ウクライナの戦後復興では
日本企業が大活躍をした。片や大谷翔平氏の活躍も続き、今では、WBCの侍ジャパンの監督
となっている。
小生のレイテストワークスの一つとして「Ma燦会 / Massan Party」を若いアーティストを
支援するチームとして2025年にスタートさせた。2050年の今では、四美会に承継されNPO
活動が活発化しているようだ。
覚める前の夢だろう、今年の“Archi Future 2050”を楽しみにしている。ここで、日本に生ま
れて本当に良かったと思った時に、月の初夢から目が覚めた。