Magazine(マガジン)

コラム

料理とBIM

2025.02.25

パラメトリック・ボイス       SUDARE TECHNOLOGIES 丹野貴一郎

突然ですが、皆様の中で「佛跳牆」という中国料理を食べたことがある方はいますか?

佛跳牆、もしくは仏跳牆(ぶっちょうしょう、フォーティャオチァン、パッチューチョン)は
乾物を主体とする様々な高級食材を数日かけて調理する福建料理の伝統的な高級スープ。名前
の由来は「あまりの美味しそうな香りに修行僧ですらお寺の塀を飛び越えて来る」という詞に
あるとされる(出展:Wikipedia)。

と言う料理で、日本では1980~1990年代にグルメ漫画が流行るきっかけとなった「美味しん
ぼ」と言う漫画/アニメで取り上げられたことで広く知られることになりました(美味しんぼ
では「ファッチューチョン」と呼ばれている)。
私も「美味しんぼ」で佛跳牆を知ったタイプですが、現在動画配信されているアニメでは諸々
の理由により欠番回となっているため配信では見ることができません。
基本的には主に高級乾物を入れて蒸し上げれば良いのですが、手軽に入らない食材の調達や乾
物の戻しなどに手間がかかるため、多くの場合は数日前以上の予約でしか食べられないと思い
ます。
また、明確な決まりがある料理ではないため、料理人によって食材や調理法が異なり、予約な
しで食べられる店では簡易的な薬膳スープを佛跳牆として提供している店もあると思います。

美味しんぼの話をすると、それだけで終わってしまいますが、このように何となく名前がつい
ているけど、人によってとらえ方や、取り組み内容、結果の水準が異なる事が周りにありませ
んか?

例えばBIMの話。
時々、BIMが普及し始めてから年数が経ちましたが、どのように進歩したかを聞かれることが
あります。
私は、「人によっては新たな取り組みをして進んでいますが、全体としては何も変わっていま
せん」と答えてしまいます。
ツールやサービスの機能は進化し、これらを使う技術者も徐々にではありますが増えつつあり
ます。
BIMを活用したプロジェクトに取り組む場合、どの水準を目指すか、そのためにはどのツール
が活用できるか、ツールを活用するためにどんな技術者が必要か、これらを考え実行に移して
いくのが料理人であり、プロジェクトの管理者の役割となります。
状況として多くの場合は、こんな技術者がいるからこのツールを使うという順番かもしれませ
んが、その場合は目指す水準の見直しが必要になります。

材料も作る技術もなく水準の高い料理を作ることはできないように、ツールやサービス、それ
らを活用できる技術者がいない状態で高水準のBIMプロジェクトはできません。
もちろん新たな取り組みに経験のないツールや人材で挑戦する場合は別ですが、BIMのプロ
ジェクトが中途半端になってしまう多くの場合はこのような原因ではないでしょうか。

ちなみに佛跳牆を食べている最中はこんなことは考えず純粋においしいなと思ていました。

丹野 貴一郎 氏

SUDARE TECHNOLOGIES    代表取締役社長