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コラム

民主的なVRの活用

2025.04.03

パラメトリック・ボイス         隈研吾建築都市設計事務所 名城俊樹

現在実施設計を進めている新福岡県立美術館について、県民の皆様に新しい美術館のデザイン
を知って頂くようワークショップを開催した基本設計時に既に2回ワークショップを開催し
ており、意見交換や新しい美術館でのプログラム検討等を行ってきたが、今回のワークショッ
プでは会場を飛び出し、建設予定地及び周辺地域を参加者と一緒に回りながら意見交換をする
ことにした。

以前のコラムでも触れたとおり、模型やマテリアルサンプルはプロジェクトのリアリティを感
じさせる点において非常に有効であるが、今回のような屋外で開催するワークショップではな
かなか活用が難しい。そこで今回は会場での模型設置に加えて、持ち運べるデザイン確認ツー
ルとして各参加者のスマートフォンを活用することにした。GPSやQRコードを活用したARな
ども検討したが、一般の参加者が気軽に触れるにはハードルが高く、有効に活用されないこと
が想像されたので、最新の3Dモデルを各所で360°レンダリングし、VRに変換してネットで共
有することとした会場受付時にQRコードを参加者に配布しレンダリングを行った定点で参
加者自身のスマートフォンで読み込むことで新しい美術館が現地にできた際のイメージを見る
ことができ、スマートフォンのジャイロと連動させることで向けた位置に合わせてイメージも
動くようにした。また、参加者のスマートフォンだけでなく、VRゴーグルも数台持参して、
より没入感を感じる状態でもデザインを確認して頂いた。
参加者の多くにとってはこういったVRの体験は初めてであり驚きを持ちつつ活発な意見交
換を行うことができた。

ワークショップ終了後、数組の参加者と意見交換を行ったが、何れも満足度が高く、デザイン
の理解が深まったようであった。こういった形のワークショップは我々としても初めての体験
であり、模型とはまた別の形でのデザイン共有の有効性を強く感じる結果となった。
私の知る範囲では一般参加者にこういった形でVRを使用させる建築のワークショップの開催
例はない。3Dソフトの活用の一般化と深化、スマートフォンの性能の向上によってこういっ
たワークショップの開催が可能になったといえるだろう。
こういった新しい技術を積極的に活用することで、デザインやコンセプトの共有が容易になり、
より民主的なデザインが可能になるのではないかと新しい可能性を感じられたワークショッ
であった。

尚、本プロジェクトの詳細は新福岡県立美術館のWebサイトに掲載されているので、ぜひこち
らもご覧頂きたい。

名城 俊樹 氏

隈研吾建築都市設計事務所 設計室長