CAADRIA 2025 @東京大学
〜国際カンファレンスへの参加〜
2025.04.10
パラメトリック・ボイス GEL 石津優子
2025年3月22日〜29日、東京大学にてCAADRIA2025 TOKYOが開催されました。
CAADRIA(The Association for Computer-Aided Architectural Design Research in Asia)
は、アジアにおけるCAAD(Computer-Aided Architectural Design)の教育と研究を推進す
る国際的な学術団体で、毎年国際会議を開催しています。
1996年に香港で設立されて以来、今回が初めての東京開催。とくに22日〜25日の事前ワーク
ショップは、AIS(建築情報学会)とのコラボレーションとして企画され、CAADRIAとAISの
運営委員が共同で準備を行いました。私も僅かながら運営に関わらせていただき、とても貴重
な経験となりました。
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ジェネラティブデザインとの再会
コロナ以降、国際カンファレンスに参加する機会が減っていた中、学生時代から参加していた
RobArch、AAG、Resonate、Nodeなど、創造性を目的としたジェネラティブデザイン系
ワークショップの空気を久しぶりに感じることができました。
今回は幸いなことに、CAADRIAの10のワークショップのうちの1つとして、「W06: Ceramic
Walls AI 」が採択され、企画と開催を担当させていただきました。
企画は2024年11月頃から KYOTO Design Lab の井上智博さん、堀川淳一郎さんとともに始
め、2025年1月から本格的に準備。ファブリケーション部分では登尾育海さんにもご協力いた
だき、無事4日間のワークショップを実施することができました。
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ワークショップの構成
内容は、大きく3つの柱で構成されていました。
● Houdiniのハンズオン
初学者向けの基礎講習から始まり、Solverを用いた再帰的な枝分かれアルゴリズムや、
Attributeを用いた成長アルゴリズムのカスタマイズなど、コードでデザインする手法
を紹介しました。
● セラミック3Dプリントの体験
デジタル造形から乾燥・焼成までを、実際に手を動かしながら体験できる内容にしま
した。
● 釉薬のシミュレーションとレクチャー
私たちが制作した壁を題材に、釉薬や焼きに関する知識を共有。
釉薬の色変化を絵具の混色と機械学習データで予測するシミュレーターも紹介しま
した。
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世界とのつながりと、交流の大切さ
ワークショップを通して、参加者のみなさんと自然な会話の中で、ジェネラティブデザインに
関する世界的な潮流を共有できたのも印象的でした。
たとえば、MITメディアラボでHoudiniを使って研究されている建築の先生がいらっしゃった
り、イギリスのロンドン大学バートレット校でも授業があるというお話など、各国の最新の
教育現場の話を伺うことができました。
何よりうれしかったのは、参加者の方々から「このワークショップを選んでよかった」という
声が届いたことです。
特に、新しいツールに興味があってもなかなか始められなかった方が、コードによるデザイン
に触れ、「楽しく学べた」と話してくださったのがとても励みになりました。
また、チェコ・中国・イランなど各国の参加者が、それぞれの陶芸文化とコードを融合させた
デザインに興味を持ってくれたこと、釉薬と絵具の混色を使った機械学習シミュレータにも反
応してもらえたことも、とても印象に残りました。
このワークショップは最終的に Workshop Award Runner-up をいただくことができました。
年度末の忙しい時期、ふらふらになりながら準備と実施を続けた日々でしたが、最後までやり
遂げて本当によかったと心から思えました。タイトなスケジュールだったので自分たちのした
ことを伝えるということをする私の体力が残っておらず、私の3分のプレゼンテーションでは
少し悔しさが残っていたので、受賞したことで協力してくださった方々へこれで報告ができる
と涙が出そうになりました。
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子育て世代としての参加と感謝
今回、特に印象的だったのは、CAADRIAで初めて託児所(キッズワークショップ)が設置され
たことです。
東大舘研究室の学生さんたちによるワークショップに加え、保育士の方も在中し、子連れでも
安心して論文発表やセッションに参加できる体制が整っていました。
大人も楽しめるワークショップ内容で、子どもたちが自然に会場に溶け込んでいたこと、そし
て研究と家庭の橋渡しとなるような取り組みがあったことに、深く感動しました。
私自身、なかなか家に帰れず、「ママに会えなくてさみしい」と言っていた娘が、私の制作物
を展示スペースで一緒に見て、誇らしげにしていた姿を見て、
「何をしているのかを“見せる”ことができた」この機会に、本当に感謝しています。
また、同じように子育てをしながら研究を続けている方々と出会い、話せたことで、とても
励まされました。
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これまで、自分で「まだ挑戦できない」と蓋をしていた部分があったけれど、
その蓋を少し開いてくれるような、そんなきっかけをもらえた会でした。
大変だったけれど、「やってよかった」と心から思える新しい経験をさせていただきました。
これからも、自分らしいペースで、少しずつでも前に進んでいきたいと思います。