![]()
次の5年が一番面白くなる
2026.01.29
ArchiFuture's Eye 広島工業大学 杉田 宗
昨年の年末に杉田宗研究室のOBOGが集まり、私の昇格祝いをしてくれた。私は2015年に広工
大に着任し、2016年度に第1期生が卒業していったので、今春卒業する学年は第10期生になる
らしい。初期のOBOGは30代に突入し、結婚や子育てを迎えているとのこと。若手教員のつも
りでいたが、良く考えてみると年齢でも在職年数でも中堅の域に入っていた。大学は、一般的
に思われている以上に流動的な環境で、学生たちはそこで強制ブーストをかけられて、社会に
飛び出していくような場所だなと改めて感じた。
私の人生は5年ごとに新たなフェーズに入る感じで、この10年間も2020年を境に大きく変化し
た。海外から帰国した2010年から振り返ると、2010年に帰国してから2015年までの5年間は、
いわば日本という土壌に根を張るための地盤づくりの期間で、米国や中国で培った知見やスキ
ルを日本の建築業界にどう適応させるかを模索する時期だった。コンピュテーショナルデザイ
ナーとしての実践と並行して、東京大学の小渕研究室/Global30での教育に関わりながら、最
先端のテクノロジーと現実の建築を往復した経験が、後の教育者としての私のバックボーンと
なり、独自の視点を形成する重要な土台となったといえる。
2015年に広工大に着任したことで、活動の軸足は「個の実践」から「次世代の育成」へとシフ
トした。1学年100名を超える大人数に対して、より多くの学生が建築情報(当初は「デジタル
デザイン」と呼んでいた)の基礎を習得することを目指した、体系的な建築情報教育のカリ
キュラムの構築に邁進した。学生たちが楽しみながら自分のスキルや経験値を高めていくには、
どのような教え方が良いのかを非常勤の先生方やTAたちと一緒に考えながら試行錯誤した時期
である。また、研究室の学生たちと様々な研究テーマに向き合い、どういった領域に我々が研
究すべきフィールドがあるのかを模索する時期でもあった。最初は就職先のパイプも少なかっ
たが、次第に研究室で学んだことを仕事に活かせる学生も現れ始めた。
広工大での建築情報教育が軌道に乗り始めた2020年、パンデミックの到来により、そこまで
に築いてきた教え方は一気に機能しなくなる。しかし、それは同時に建築情報教育の真価が問
われる転換点であったともいえる。オンライン授業への対応を機に、映像教材を用意するなど
場所を問わない新しい教育手法を模索し、デジタルネイティブな学生たちに適した形へと授業
をアップデートした。さらに、この時期に設立された建築情報学会での活動を通じ、自身の教
育実践を学内だけに留めず、国内の建築情報教育全体の底上げへと展開する機会を得た。コロ
ナ禍という逆風を、むしろ教育のDXを加速させる好機と捉え、建築情報のコミュニティを横断
的に繋ぐことで、より広い視座から未来の建築の在り方を問い続けた5年間であった。
さて、次の5年はどうしよう?生成系AIの進歩によって、大学教育は大きな課題に向き合って
いると感じるし、少子化の影響により大学の運営自体が難しい時代に突入し、今後は再編・統
合の加速も考えられる。大学の先生って、結構先細りの職業になってきているんです。
最近はそんな状況ばかりが気になっていたが、年末の会でOBOGの姿を見ていると、次の5年も
明るく上を目指して行こうと思った。まず取り組むべきは、広工大全体におけるデジタルファ
ブリケーション教育の整備である。これまでのように学科に留まらず、全学の学生がデジタル
技術を用いた「ものづくり」の醍醐味を享受できる環境を整え、大学全体のクリエイティビ
ティを底上げしつつ、学科を横断した繋がりを強めていきたい。同時に、活動の軸足をグロー
バルな場へと広げ、これまで以上に海外のワークショップやカンファレンスへ積極的に参加し
ていきたいと考えている。学生たちとともに世界の最前線で交わされる議論を肌で感じ、そこ
で得た刺激を日本の建築業界へフィードバックすることが次の大きな目標である。研究・設計
活動においては、デジタルによる設計・施工・維持管理の繋がりを目指して、これまで以上に
実践的な成果に繋げて行きたい。もしかすると、次の5年が一番面白い時期になるかもしれな
い。
今回初めて開催されたOBOG会だったが、最後にポロっと「楽しかったので5年後にまたやり
ましょう」と言ってしまった。私や研究室の活動を近い所で見守ってくれ、そして誰よりも期
待してくれているのが彼らOBOGではないかと思うようになった。そんな出来事のおかげで、
2026年はこれまでにないくらい清々しい年明けだった。

2025年の最後を締めくくる杉田宗研究室OBOG会



























