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建築BIMの時代37 BIMの投資効果
2026.02.10
ArchiFuture's Eye 大成建設 猪里孝司
昨年の大晦日、久しぶりに時刻表を購入した。旅行の計画を立てるためではなく、正月に自宅
でゆっくり読むためである。小学生のころは読書が大嫌いで、唯一読みたいと思った書籍が時
刻表だった。時刻表が読み物かと思われる方もいらっしゃると思うが、宮脇俊三氏が『時刻表
2万キロ』の中で“『時刻表』にも愛読者がいる。時刻表ほんらいの用途からすれば、愛読の対
象となるべき書物ではないが、とにかくいる”とお書きになっているので、時刻表も読み物だ
と思っていただきたい。そんな時刻表が発行されるようになって2025年で100年になるそう
だ。つい先日『時刻表100年誌』という書籍を購入した。読み応えがあって面白いのだが、
新幹線が出来て在来線の特急や急行、特に夜行列車がどんどん減っていったのは寂しい限りで
ある。日頃は仕事や旅行で新幹線にお世話になっているが、時刻表を見るたびに寂しい思いが
蘇る。数年前に購入した1964年9月号(東海道新幹線開業直前)の復刻版を読んでいると、タ
イムスリップしたくなる。
先日、NHKのプロジェクトXで、北陸新幹線の飯山トンネルの工事が取り上げられていた。番
組の中で、この工事を主導した鉄道・運輸機構の方が、難工事の末、金沢まで延伸された北陸
新幹線の利用者が計画の想定を上回ったことが、北海道新幹線や九州新幹線の延伸の実施につ
ながったのではないかというような主旨の発言をされていた。新幹線のように大きな投資を決
断するのは、勇気の要ることである。綿密な計画だけでは十分ではなく、その投資に関わる
個々人の思い、熱量のようなものが社会を動かし、投資が実現するのだと感じた。在来線の特
急は少なくなるだろうが、利用者が増え人やモノの行き来が増えることは投資の効果だと思う。
前置きが長くなってしまったのは投資の話をしたいからである。ご存知のように建物完成後で
のBIM活用が進んでいない。その理由の一つに費用対効果が明らかでないことがある。建物の
オーナーは、BIMにかかった費用を回収することが出来るのかが不安であり、BIMを推進する
側もそれに明確に答えることが出来ていない。先日も日本ファシリティマネジメント
協会(JFMA)のBIM・FM研究部会で、建物完成後の維持管理段階でのBIM活用について話し合っ
ている時に日建設計の光田さんが「BIMは投資と思ってください」と発注者に説明していると
聞き、衝撃を受けた。正にその通りだと思った。BIMを基にした建物のデジタルデータは大き
な資産であるが、その価値がすぐに発現しない場合も多々ある。維持管理の費用削減だけが価
値発現の場ではない。建物利用者の利便性の向上や都市やインフラのデジタル情報との連続性、
連携が新たな価値を生み出すことも十分考えられる。逆に言うと、都市やインフラのデジタル
情報と連携できないと建物そのものの価値が下がることも考えられる。ただ、これらの話は想
像の域を出ない。BIMへの投資が新たな価値を生み出すことを実現させたいと思っている。そ
のような事例、萌芽を心待ちにしている。
前回のコラムで紹介したように、昨年12月23日に『ファシリティマネジメントのためのBIM
要件定義 EIR(発注者情報要件)作成ガイド』の出版記念シンポジウムを開催した。年末のあ
わただしい時期にも関わらず80名以上の方にご参加いただいた。有難いことである。FMでの
BIM活用について関心を持っていただいている方が多数いらっしゃることが分かり、大変心強
い。このような方々の取り組みが、価値創造につながることを信じている。




























