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日本のBIMに夢と希望はあるか?
2026.07.02
パラメトリック・ボイス
Unique Works 関戸博高
最近AIでビジネス漫画を作ることに凝っている。文章で伝えるよりも、深さは別として全体で
何を伝えようとしているかは、漫画の方が分かりやすい。作る側も読む側も満足度が高い。こ
れは日本の漫画文化のお陰ではないだろうか。
一方で相変わらず自分で「建築資材データベース(SekiDB)」のことを考えている。
新しいシステムを作ろうとすると、建築以外の様々な専門分野の人に関わってもらう必要があ
る。その人たちに、この世に存在しないシステムを分かってもらうために、「夢と希望」も含
めて伝えるのは結構難しい。自分が小説家なら近未来小説を書くところだが、残念ながら能力
的に不可能だ。そんな靴の上から足をかいているような悶々とした気持ちの中で出会ったのが、
AIを使った漫画作りである。
そこで今回のテーマ『日本のBIMに夢と希望はあるのだろうか?』について、漫画を使って話
を進めてみたい。
最初は問題提起編。タイトルは『建設情報は、つながっているようで、本当につながっている
のか?』(図1)。今回のシナリオのコンセプトは、「BIMの情報連携と言われて久しいが、
実際はどうなんだ?」である。 ここで漫画プロデューサーである私が作画の指示をする。登
場人物は3人。役割・風貌・年齢などを決め、ビジネスシーンに合うよう、色もブルー系の
クールな感じにしてある。コマ割りの中身は、コンセプトに沿ってAIと相談しながら決めた。

図1
この漫画で言いたいことは、AIの時代の「建築情報の辞書」作りの必要性である。私の見る限
り、今の日本では、まだそれを「建築情報の辞書」作りとして正面から捉える動きは十分には
見えていない。例えば国交省のBIM推進会議でいう「標準化」は、現時点では、私がここで言
う意味での「辞書」作りそのものとは少し違う。いずれ「辞書」作りにたどり着くか否かは、
今のところ分からない。
ただし、先日掲載された日本設計の吉原和正さんのコラム「パラメータバリューに焦点を当て
た設備の社会実装へ」では、設備BIMの社会実装について、単に3DのBIMオブジェクトを増や
すのではなく、実務に必要な情報値、すなわちパラメータバリューを、正しく、無理なく、継
続的に流通させる仕組みが重要だという趣旨のことが述べられている。これは私の考えている
方向と結構近い。もっとも、吉原さんの射程は設備分野におけるパラメータバリューの流通で
あり、私が考えているSekiDBは、建築資材全体の意味、属性、性能値、出典、BIM、積算、
FMをつなぐ「建築情報の辞書」あるいは知識基盤である。その意味で、方向は近いが、射程
距離は少し違う。
ここで話題の焦点を少しずらして、三つの本を参考に「辞書」作りを支える精神の在りどころ
に触れておきたい。良い辞書は、効率性や経済性を追求することだけからは生まれないと思う
からである。
三浦しをんの『舟を編む』を読むと、辞書作りとは、単に言葉を集める作業ではないことが分
かる。言葉という頼りない舟を編みながら、人と人が少しでも分かり合えるようにする。その
作業に人生をかける人たちがいることに、私は惹かれた。(舟を編む:光文社文庫)
白川静(1910~2006)は、私自身がそれほど読み込んだわけではないが、甲骨文・金文の研
究を通じて、漢字を単なる記号ではなく、東洋文化の精神を宿すものとして捉えた人である。
『字統』『字訓』『字通』という字書三部作は、単なる辞書というより、失われかけた漢字文
化をもう一度取り戻そうとする使命感に裏打ちされた仕事だったように思う。(日経新聞 私
の履歴書:(30)「命長くして——漢字文化願う」 1999年12月31日)
赤瀬川原平『新解さんの謎』: 赤瀬川原平の『新解さんの謎』は、辞書の中に編纂者の人間が
見えてしまう、という面白さを教えてくれる。辞書は無機質な説明書ではなく、作った人間の
ものの見方や、人間観がにじみ出てしまうものなのだ。(新解さんの謎:文藝春秋)
次は提案編。『建設情報は、どうすればつながるのか?〜共通意味体系(Semantics)が情報
連携の鍵になる〜』(図2)。ここで何を言いたいかを文章にすると、余計分からなくなると
思うので、ぜひ漫画をじっと見て内容を理解してもらいたい。これからの建設情報の将来像が
見えてくるかも知れない。

図2
最後に2つ触れておきたい。
一つはISO19650についてである。
芝浦工大の志手教授がArchiFuture Webのコラム「BIMにおける協議と規範」で最近書かれて
いたことに呼応して、今回の漫画で言おうとしていることに寄せて書くとすると、以下のよう
に言えると思う。
ISO19650は、「意味を揃える仕組み」そのものではない。むしろ、意味を揃える仕組みや情
報共有の仕組みを、個人の判断やその場の「空気」ではなく、あらかじめ定められた規範に基
づいて運営するための土台である。
簡単に言えば、日本特有のその場の「空気」で決めれば、 人によって解釈が変わり、情報伝達
がうまくいかない。規範としてのISO19650があれば、その規範に従って、CDEの中でWIP、
Shared、Published、Archiveといった情報の状態が管理される。添付図2の漫画の中の
ISO19650も、その意味で理解してもらいたい。
意味体系(bSDD・将来のSekiDBなど)は情報の意味を統一し、IFCはデータ交換を統一し、
CDEは情報共有を統一する。
もう一つは「日本のBIMに夢と希望はあるか?」である。
世界の技術(BIMもAIも)の進歩は速い。しかし日本の建設業界全体で共通の
意味(Semantics)を共有するには、技術より合意形成の時間がかかる。ChatGPTに問い合
わせたら、SekiDBで考えていることが実現するまでに、このままでは、あと10〜15年かかる
と回答してきた。これは笑い話でもブラックジョークでもない。日本人の誰もが思わず納得し
てしまいそうな「近未来の現実」なのだ。
このままなら、ここに夢と希望があるとは言いにくい。しかし、建設情報の意味を揃え、それ
をBIM、積算、FM、AIにつなぐ「建築情報の辞書」を本気で作るなら、日本のBIMにもまだ
夢と希望はある。私がSekiDBでやろうとしているのは、まさにそのための小さな一歩である。

























