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庭とやわらかなモデリング
2026.08.25
パラメトリック・ボイス 隈研吾建築都市設計事務所 松長知宏
以前のコラムで、山で無数の"ツブ"に包まれる心地よさについて書きました。その流れという
わけでもないのですが、いま私は京都のある山頂のプロジェクトで、造園家の方々と一緒に
「庭」に関わらせてもらっています。そこで最近しみじみ感じているのが、庭は建築以上に複
雑で、動的で、情報量が多く、コンピュータで再現するのが難しいということです。
考えてみれば、もともと建築というのはコンピュータでのモデリングと相性がよいといえそう
です。図面は基本的に直線で描かれますし、柱や梁も基本はまっすぐ、サッシなどの建具も、
たいていは規格に沿った寸法をしています。だからこそ、点と点を結んで線を引き、線を垂直
に立ち上げて面を作るというシンプルなモデリングが成立しています。BIMに至っては様々な
プリセットが効率的なモデリングを実現しています。
ところが庭を構成している石や植物という自然物には、そもそも直線は少なく、二つとして同
じ形はありません。律儀にモデリングするよりも3Dスキャンしたほうが早いでしょうが、植
物にいたっては、時間とともに成長・変化するので、現在の形がそのまま完成形とも限らない
という難しさがあります。造園家はそれらを見越して、庭を設計されているのですが、少なく
ともコンピュータをフル活用してシミュレーションするような必要はなさそうです。そもそも
自然に対して、建築以上に近く寄り添う必要があるため、画面越しに考える以前に現場で直接
そのもの自身に向き合わないと、自然の持つ圧倒的な情報量に太刀打ちできないのかもしれま
せん。
今でこそ生成AIによる画像生成でそれっぽいパースは大量に作れますが、設計が進みデザイン
の精度が上がれば上がるほどAIと設計意図の乖離が大きくなり、怪しげな出力結果に悩まされ
ることが多くなります。それでもなんとかして設計通りにモデリングし正確なイメージを作り
たい、自然らしさを表現したいと思った場合に役立つのが、3DCGソフトに搭載された動的な
「物理シミュレーション」の機能です。
そもそも静止画が完成品の建築パースで動的な物理シミュレーションを使うことは稀です。た
とえばカーテンのヒダヒダを再現したり、ソファのクッションをモデリングしたりするための
布のシミュレーションに使う程度です。どちらかといえば脇役かもしれませんが、実は素材と
しては柔らかくて優しい、一番人に近い部分で使われているとも言えます。
庭に石を積む、といったモデリングの際にも動的な物理シミュレーションが有効です。ひとつ
ひとつ形の違う石が、重力に従ってぶつかり、転がり、落ち着く。単純に置いただけ、並べた
だけとは違うあの"ままならない"挙動は、線を引いて形を作るのではなく、動的なシミュレー
ションとして計算するほうが、よほど自然に扱えます。
自然に近い部分、人に近い部分には動的なモデリング、時間軸のあるモデリングの方が有効と
いうことでしょうか。そうするとなんだか建築だけが静的で硬いものに思えてきます。AIがま
すます発展し、各種のシミュレーションもより高度になっていくなかで、コンピュテーショナ
ルデザインを駆使して、その建築の硬い部分をどうやったら柔らかくできるか。そんなことに
興味を持っています。





























