BIMと建築計画
2016.09.01
ArchiFuture's Eye 大成建設 猪里孝司
今日は8月31日、世間では夏休み最後の日である。8月30日が締切りの原稿を、1日遅れで書
いている。これが夏休みの宿題なら、先生に怒られてるところだ。小学生のころ、読書感想文
が大の苦手で始業式前日に何とか終わらせていたという記憶が蘇ってきた。計画性の無さは全
く改善されていない。改善どころか、締切りを過ぎているのだから悪化している。中島聡さん
の本でも読んでやりなおそう。
何事においても計画は大事である。BIMもそうである。BIMの計画といえば、BIM実行計画
(BEP:BIM Execution Plan)を思い浮かべる方も沢山いらっしゃるだろうが、BEPはまたの
機会とさせていただき、今回はBIMと建築計画について考えてみたい。東北大学の小野田泰明
先生は「プレ・デザイン」という考えで建築計画にあらたな息吹を与えようとしている。よい
建築を実現するためには、設計を始める前の計画段階「プレ・デザイン」が大変重要であるに
も関わらず、そのプロセスや職能が認知されているとはいえない。2013年に出版された「プ
レ・デザインの思想」は、小野田先生の仕事と考え、想いが詰まっており「プレ・デザイン」
の重要性を思い知らされた。設計に入る前の段階の重要性を異口同音で述べているのが、
JFMAが2015年に発行した「“ブリーフ”による建築意図の伝達」である。「ブリーフ」とは設
計を始める前にまとめられる、要望・条件・課題を示すものであり、アメリカやフランスでは
「プログラム」と呼ばれている文書である。
計画段階の重要性を訴える両書を読んで、BIMが「プレ・デザイン」や「ブリーフ」に貢献で
きると感じた。「プレ・デザイン」の段階で直接的にBIMが使えるわけではない。設計に入り、
BIMで設計案を作成することで「プレ・デザイン」の結果をきちんと反映しているか、「ブ
リーフ」に示されていることが実現しているかの確認、検証に利用できると考えている。専門
家は当然設計図から建築を想起でき、設計案を評価することができるが、その建築を利用する
市民や発注者は必ずしもそうとは限らない。BIMモデルやシミュレーションは、設計案を分か
りやすく表現し、根拠を示すことができる。非専門家が設計案への理解を深める一助となるは
ずである。専門家にとっても、定量的な評価などにBIMモデルが役立つ。また設計、施工と成
長し続けるBIMモデルは「プレ・デザイン」「ブリーフ」を運用段階に伝える器ともいえる。
BIMモデルは単に形状や属性を伝えるだけでなく、計画時の考え、想いを運用段階に伝える可
能性を持っている。BIMがそのような役割を担えるようになった時が「プレ・デザイン」「ブ
リーフ」に貢献し、建築をよくする役割を担えるといえる。