ロボットコンストラクション
2017.10.19
パラメトリック・ボイス アンズスタジオ 竹中司/岡部文
岡部 ここ数年で、ロボットコンストラクションの現実味が加速してきている。
例えば、アメリカ、ニューヨークを拠点とする会社Construction Roboticsは、煉瓦
積みロボットSAMを開発し、多くの注目を集めた。
竹中 ヨーロッパでも同様の流れがあるね。ロボット技術の最先端を誇るETHでは、昨年
10月、ロボット製造研究所(Robotic Fabrication Laboratory)を新設し、ロボット
を用いた施工の開発を実物大サイズで行っている。まず目指しているのは、住宅プロ
ジェクトのロボット施工の実現だという。
岡部 では、日本はどうだろうか。
大きな遅れをとっているようにも感じられるけれど、実はこの1、2年で施工現場を
担う組織にも変化が見られる。
竹中 そうだね。先陣を切ったとも言えるのが、清水建設だろう。
今年7月、清水建設は自立型ロボットを用いた次世代型生産システム、
「シミズ スマート サイト」を構築したと発表した。
岡部 目的は、建築工事現場の生産性向上、繰り返し作業の軽減、さらには、検査管理業務
の効率化だというが、いったいどんなロボットが開発されているのだろうか。
竹中 我々アットロボティクス(アンズスタジオからスピンオフしたロボット会社)が開発
協力を担っている、現場施工を行う自立型ロボット「Robo-Buddy」もそのひとつだね。
岡部 具体的には、施工部位の状況を即座に認識しながら、2台のロボットのチームプレイ
で天井吊ボルトのインサートへの挿入、下地材の組み立て、天井ボードの取り付け、
ビス留め、OAフロアの台座・パネルの設置。さらには、作業工程に応じてエンドエ
フェクタを付け換え、様々な能力を発揮することが出来る。
竹中 今後のロボットコンストラクションでは、現在必要不可欠なティーチングの作業も、
オフラインティーチングでさえも必要としない。車やドローンのオートパイロットの
ように自立制御が主流になってくるに違いない。
岡部 高いセンサ技術によって、繊細な環境知覚能力を持ち、自己認識技術による自働作業
を行う。まるで、現状に対する鋭い観察力と、これに合わせて技を使い分ける、かつ
ての職人たちの姿を思い出す。そうなると、我々人間に求められる能力とは、いった
いどのようなものになってくるのか。
竹中 それは、計算世界と物質世界の差異を埋めることだ。物性との対話を繰り返しながら、
多様な要因が引き起こす様々な現象を解析し、それらのバラつきを定量的に解決する
アルゴリズムを開発する。そこに未来のクラフツマンシップの形を見出すことができ
るはずだ。職人ロボットが現場に出てゆく日は、もうすぐそこまで来ている。