「操作」法選択の時代
2018.02.22
パラメトリック・ボイス 清水建設 丹野貴一郎
昨年から社内外を問わずVR・AR・MRについて話す機会が増えました。
一般的には一昨年がVR元年と呼ばれているのですが、○○元年といわれるのはどちらかと言う
と技術者の間の話で、一般の方々に知られるのにはやはり何年かかかり、BIMも元年と言われ
た2009年から数年たってやっと通じるようになりました。
VRはコンシューマー向けのエンターテイメントコンテンツも多いことからTV等でも取り上げ
られ、知れ渡るのが早かったと思います。
その結果興味を持たれた方々が何かに使えるのではないかと考えはじめたのが昨年ではないで
しょうか。
Revit Live、Fuzor等、特別な技術を必要とせずにBIMからVRにできるソフトも増えてきまし
たので、設計者が気軽にVRで確認検証することも可能になりました。
これらのソフトは(偉そうですが)非常に良くできており、汎用的な機能が標準で実装されて
初めての人でも何となく操作ができるようになっています。
ただし、何かしらの機能を追加する場合やAR、MRのコンテンツを作る際にはUnityやUnreal
等のゲームエンジンで開発する必要があります。
これまで、いくつかのVR、AR、MRコンテンツを作成してきましたが、体験型のコンテンツと
いうのは、何を、どのように体験させたいかというストーリーが非常に重要で、これがコンテ
ンツの質を左右するといっても良いくらいです。
今のところ最初は新たなデバイスを使うためにどのようなコンテンツがあり得るかを考えるこ
とがまだ多いですが、本質的には、まずどんな体験をさせたいかというストーリーがあって、
その上でどのデバイスを使うのが最良かを選ぶべきだと思います。
例えばVRの動画を見せたいのであれば、再生をすればよいだけなので、できるだけ多くの人が
手軽に楽しめるスマートホンをはめるタイプのVRゴーグルが第一の選択肢にあがり、前述の
Live、Fuzorの様にBIMを変換して確認するような場合は、作業をしながらその場で確認できる
Oculus Riftが最良かもしれません。
コンテンツの作り方に関しても、誰かが内容を説明するものであれば、アテンドが付きながら
進めさせる方が良く、ゲーム的なものであれば、コンテンツを進める中で自然と操作を覚えら
れるように作るべきかもしれません。
また、操作のためのUI(ユーザーインターフェース)も重要になります。おそらく最良のUIと
は全く操作していることを意識させずにコンテンツ自体に集中できるものだと思います。どう
しても技術者だけで取り組むとこの辺がおろそかになってしまいがちですが、UIデザイナーと
いう専門の仕事があるように、ユーザーとコンテンツを繋ぐ要の部分なので、手を抜かずに検
討をした方が良いと思います。
BIMの普及によりVDC(バーチャルデザイン・アンド・コンストラクション)のような手法が
一般的になってきた場合、初めて見るような人にデジタルデータを見ながら理解をしてもらう
場面も増えてくるでしょう。二次元の図面、CGパースという基本的に操作が不要なものから
インタラクティブに操作をしながら見る3Dになった事で様々な人が「操作」をすることになり
ます。建築の資料は専門化でなければ理解が難しいものが多いですが、このように多くの人に
理解をしてもらう目的の時には、iPhoneのように多くの人が直感的に操作をできることが当然
のように求められるのではないでしょうか。