コンストラクション・テック
2018.04.10
パラメトリック・ボイス アンズスタジオ 竹中司/岡部文
岡部 コンストラクション・テック(Construction-Tech)というキーワードが注目されて
いる。コンストラクション・テックとは、建設業をテクノロジーで変革しようとする
潮流だ。
竹中 ここ数年、米国を発端に、大きな変化を生み出しつつある流れだね。
シリコンバレーの有名ベンチャーキャピタルが、IT技術を活用した新興建設企業に
続々と投資を行っている。
岡部 そのようだね。2010年には50億円だった投資額が、なんと2015年には5倍の
250億円になったという。Auto Tech(自動車におけるITの活用)などと並んで、建
設業が世界経済を動かす大きな流れに足を踏み入れたといえるだろう。
竹中 建築とテクノロジーといっても、設計から施工まで、色々な分野が含まれている。
ドローンやAR/VR技術の活用手法、ロボットの技術を生かした建設技術、マテリアル
の開発技術、データ解析技術から、マネージメント、財務管理技術などが挙げられる。
岡部 現在はプロセス毎に企業が独立している状況だけど、すべての工程がテクノロジーに
よって数値化されれば、これらが連続した流れを作り出すのは時間の問題だろう。
竹中 大きなうねりとなって業界に変化を導いてゆくと考えられるね。
そして注目したいのは、こうした企業の多くに、他分野から参入した者たちが立ち上
げた企業が見られるという点だ。
岡部 例えば、ソフトバンクグループが約940億円もの投資を主導したという新興企業 Katerra(カテラ)や、Built Robotics(ビルト・ロボティクス)もその一例だね。
竹中 電子機器製造業で培ったものづくりシステムを応用したり、車の自動運転の技術を建
設機器のロボット化に活用したり、他分野の高い技術が建設業界に入り込んできてい
る。
岡部 こうした視点が面白いのは、業界の既成概念にとらわれることなく、開発を果敢に進
めてゆく傾向があるからである。従来のやり方に引きずられず、デジタルならではの
全く新しいアプローチで切り込むことが出来るのだ。
竹中 一方、人の「手の仕事」によって支えられている建築特有の世界をどう扱ってゆくか
が要になる。単なる複製や自動化の枠を越えた仕組みを作るには、これまでの常識を
越えた建築技法を再構築する必要があるだろう。コンストラクション・テックの流れ
が、そんな新しい時代を牽引してゆくことを期待している。