BIMによって なくなるもの・うまれるもの
2018.12.13
ArchiFuture's Eye 大成建設 猪里孝司
恒例のBIMの日シンポジウムを2019年2月19日(火)に開催する。今回は「BIMによって
なくなるもの・うまれるもの」というテーマで、BIMおよび建築・都市に関するデジタル技術
の最前線を概観する。今回は不便益(不便のメリット)が生活を豊かにすると唱えている京都
大学の川上先生に討論に加わっていただき、これからのBIMおよびデジタル情報との付き合い
方を考えたい。自動化、便利なこと、合理的なことを目指すのは間違ったことではないが、見
落としていることがあるかもしれない。異なった視点は新たな気づきを与えてくれる。是非、
ご予定いただきたい。
人工知能の別の視点を紹介したい。脳に性差があることをご存じだろうか。私は「女の機嫌の
直し方」(黒川以保子著 集英社 2017)を読んで、つい最近知った。“女性から相談を持ちか
けられたと思って、解決策を提案したら不機嫌になられた”、“どうして女性は過去のことを蒸
し返して、何度も同じことで怒るのだろう”、“休日に家でぼうっとしていると、母親や奥さん
に小言を言われた”といった経験がある方は、この本を一読することをお勧めする。これらは
すべて男性と女性の脳の差によるもので「男女の脳は、回路構成が違い、信号特性が違う」か
ら当然の現象というわけだ。
女性脳は経緯を話しながら、同時に真実を探るという演算を行っているらしい。話の途中で解
決策を提示するのは、話の腰を折ると同時に真実を探る演算を強制終了させるようなものなの
で、不快感がますのだそうだ。共感してもらいながら話し終えると、真実が分かり女性はすっ
きりする。一方、男性脳はいち早く対話の意図を探り出し、問題点を見つけ出し解決策を提示
しようとする。「女性の対話は、プロセス指向共感型」で「男性の対話は、ゴール指向問題解
決型」とのこと。指向性が異なるので、どうしても会話がすれ違ってしまう。
女性脳は体験の記憶と「心の動き」がセットで格納されているらしい。「心の動き」をキーに
して過去の体験記憶を、検索頻度や時間経過に関係なく瞬時に取り出すことができる。この能
力により突発的な出来事に臨機応変に対応できるのだが、「心の動き」と連携した記憶は、そ
の経験を再体験できるという男性にとって厄介な特徴がある。遠い過去の怒りを、瞬時に思い
出し再体験できるのだ。男性からすると過去のことを蒸し返して怒っているように見えるが、
女性にとっては現在の怒りということだ。これも女性脳の特性として、受け入れるしかない。
男性脳は「個別に領域で活性化させて使う傾向」が高く、女性脳は「異なる領域を連携させて
使う、複雑系認知傾向」があるそうだ。男性脳は「合理系」、女性脳は「複雑系」といえる。
「複雑系」の脳は複雑なものを好むので、花柄やヒョウ柄、フリルやキラキラしたもの、非対
称なものが女性に好まれるのも脳の特性によるらしい。男性脳は、脳をフル回転させている時、
右脳と左脳の連携がほぼなくなり、感覚器官からの情報が左脳に伝わらない。外からみると
「ぼうっと」しているように見える。この「ぼうっと」している状態は「無我の境地」と同じ
だそうだ。座禅やマインドフルネスは男性脳にとっては非常に効果があるということだ。「ぼ
うっと」していることは、男性脳にとって無駄なことではなくとても大事なことなのだ。
右脳と左脳をつなぐ脳梁の太さは、男性に比べて女性の方が太いそうだ。「複雑系」の女性脳
は右脳と左脳の間での情報交換が活発に行われているが、「合理系」の男性脳はそれほどでも
ない。この左右脳の連携の強さが脳の性差を生んでいるらしい。脳生理学者よりも先に、人工
知能開発者が脳の性差に気づいたかもしれないという説も面白いと感じた。人工知能のシステ
ムを開発する中で、男女の脳の指向性が異なるという仮説をたて、予想通りの出力が得られた
ので、この仮説は回路的には間違っていない。後年になって女性脳の右脳左脳の連携の高さが
測定されたということだ。人工知能の研究が、リアルな脳の解明につながったということが大
変面白いと思った。